映画『ローン・サバイバー』☆深く考えさせられる作品 | 『鍵のかかってない0号室』へようこそ!

『鍵のかかってない0号室』へようこそ!

アート、音楽・映画・舞台・ドラマ、アクセサリー、フィギュア等々、ありとあらゆるジャンルにわたり、自分の「好き」について、思うがまま綴ってまいります。 時には自作の詩や物語、イラストなどもアップします。

私は「強いアメリカ」を押し出したハリウッドの「戦争を美化した」映画が好きではありません。そのため、あまり戦争映画を見ることはないのですが、今回

マーク・ウォールバーグ主演

 『ローン・サバイバー』

の鑑賞会に参加する機会がありました。

image.jpeg


この映画は、最強の戦闘能力を持つアメリカ海軍の特殊部隊ネイビーシールズ史上最悪の悲劇と呼ばれる「レッドウィング作戦」を、唯一の生存者となったラトレル氏のノンフィクションをもとに映画化した作品です。


  〈ストーリー〉

2005年6月、アフガニスタンの山岳地帯で、タリバン撲滅のための特殊任務に就いた4人のネイビーシールズ。
判断ミスにより、無線が通じない過酷な状況下で200人を超えるタリバン兵の総攻撃を浴びてしまう。
絶体絶命のまさに絶望的な状況の中、ラトレル氏だけが奇跡的に生還出来た理由とは…


とにかく何もかもがリアルです。
どんなに殴られても、撃たれても死なない「ダイ・ハード」なアクション映画とは違い、画面全体から「恐怖」「緊張」「激痛」「絶望」といったネガティブな思いが伝わる実にリアルな戦争映画です。

当然のことですが、どんなに屈強な戦士であっても、死に対する恐怖は持ち合わせていますよね。幸せな未来を描いているし、失いたくない物もたくさんある。
任務遂行のためなら、敵に銃口を向け迷うことなく引き金をひく彼らが、逆に徐々に追いつめられて深手を負い、恐怖と絶望、そして怒りに駆られた末にこと切れていく姿は、スクリーンのこちら側にいる私たちをも絶望的な気持ちにさせます。

この映画で特筆すべきは「音の使い方」でしょう。
アクション大作にありがちな「大音量の派手な音楽」を極力排し「静寂」を生かすことで、リアルさを際立たせています。
「静寂」は「無音」とは違います。「気配の音」とでも言うのでしょうか、空気の動くかすかな気配、緑の中に潜むとても小さな生物の気配…この映画からはそういったものがちゃんと感じられるのです。

自然の「静寂」の中、重い装備を背負って険しい山道を行く4人のたてる音と苦しげな息づかい。過酷な進軍であることが伝わって来ます。

敵に追われ、見つからないように身を隠している時の、肩を大きく上下させながらの少し震えるような息づかいからは、言いようのない緊張と恐怖が感じられます。

そして、崖から転落したり、銃撃を受けて負傷した時の喘ぐような息づかいからは、激しい痛みと絶望が。

もはや立ち上がることさえ出来ないような致命的な傷を負い、必死で呼吸している時の「ひゅうひゅう」と空気が漏れるような音からは「痛み」ではなく「死を悟ったあとの虚無な心」が感じ取れました。

目を閉じてこうした呼吸音をきいているだけでも、それぞれがどのような状態にあるのかがわかるのです。この演出はすごい…


映画の最初は簡単な人物紹介を兼ね、海軍の厳しさや、その中で育まれた4人の関係がさらりと描かれます。
4人がアフガニスタンに赴いてからしばらくは、彼らが作戦を遂行するべく険しい山道を移動し、敵陣を偵察する様子などが実に淡々と描かれていきます。実際に山の中にいるような「静寂」の中で展開される序盤のシーンは、油断すると眠気を催すくらい実に静かです。

それが一変するのは敵に発見された直後から。ここからはとにかく激烈で残酷な銃撃戦がこれでもかと続きます。

痛い、痛い、痛い… 
ほぼ直視出来ないくらい痛いシーンが続きます。
私は戦場を知りません。でも、きっとこういうことなのでしょう。人が殺し合うということは…。
画面から感じられることは、戦争とはただただ愚かで恐ろしいだけの行為であるということだけです。

私は、重症を負いながらもラトレル二等兵曹が生還出来た理由に感動し、涙が止まりませんでした。どの国にも、高潔な魂を持った人々はいるものなのですね。
そして、「情けは人のためならず」という諺の通り、ラトレル氏が最初に「人として譲れないもの」を守り通したことが、巡り巡って彼の元に戻って来たのに違いない…と感じました。

変に戦争を美化したり、大げさな感動を押し付けるような映画ではなく、実際に起こった事実を丁寧に描いた戦争映画です。

ちょうど昨日のブログに戦場カメラマンの渡部陽一さんのことを書きましたが、奇しくも彼がこの映画の応援団長に就任し、昨日DVD発売記念記者会見に登壇したようです。
…知らなかった
なんかすごいシンクロだ~

多くの戦場に赴いた経験のある渡部さんも、この映画のリアルさには驚いたと語ったそうです。

エンドロールではデビッド・ボウイの曲にのせて、実際にこの闘いに臨んだ4人の隊員達の写真が紹介されるのですが、もうそこで涙腺決壊です


唯一生還したラトレル氏が、生まれた子どもにつけた名前を見てまたまた涙…

これが現実…これが戦争というもの…

戦争ってなんでしょう?
人はなぜ争うのでしょう?
「正義のため」と口で言うのは容易いけれど、その人の正義は相手から見れば正義ではない。

ただ1つだけ言えることは、
戦争は何も生み出さない。生み出すとすれば、それは憎しみの連鎖と悲劇だけ。

だから絶対に、戦争をしてはならないんです


早く渡部さんが「学校カメラマン」になる日が来るといいなと思います。

今宵のBGMは  

 
 デビッド・ボウイ の 『Heroes』


おやすみなさい





ローン・サバイバー [Blu-ray]/マーク・ウォールバーグ,テイラー・キッチュ,エミール・ハーシュ
¥5,076
Amazon.co.jp
ローン・サバイバー [DVD]/マーク・ウォールバーグ,テイラー・キッチュ,エミール・ハーシュ
¥4,104
Amazon.co.jp