こんばんは。
台風が来るらしい前夜、いかがおすごしでしょうか?


えっと、まず初めに、タイトル変えました←
とりとめもない妄想垂れ流し記事だったのですが、なんだか続きが浮かんでしまい、そしたらタイトルも別の曲(あ、利伸センセのね!)がフィットする気がしちゃって、なんだかすいません。

でもって、コメント欄でチラホラ、「続き……」ってお声が聞こえた気がして……あれ、気のせいでしょうか……恥。

そして、こんなことしてんならあっちのサイトの続き早く書きなさいよってお声が聞こえて来そうですが……涙。


これが本当のユチョロスってやつでしょうね!!!
妄想のアカン加減に拍車がかかっておりますよ!!!
ってか、こんなこっぱずかしい脳内晒してお前は一体!!!
って自分にツッコミ入れてますよ!!!

……ですが、やはり妄想は無限です。


皆様に、この二年間のエナジードリンクに少しでもなるべく、吐露しちまいたいと思います。
朴先生(あれ、漢字表記になってる!)との駆け引き……じぇひお楽しみくださいませ。



あー、恥ずかし。←









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 【来年から、海外に赴任するかもしれない】

 学生の時からつきあっている恋人にそう言われたら、私と似たような年齢や境遇の女性たちは、どういう判断を下すんだろう。
 夏休みとは言え社会人はそうそう休んでばかりでもない。それでも久しぶりに、平日で彼の休日と私の休日が重なる日があったから、気になっていた映画を見て食事をした。彼が会社の人と行って良かったというカジュアルなイタリアンで、お腹が七分目くらいに満たされた頃、彼は唐突にそう、話を切り出した。

 北米かアジア、どちらかで打診されていて、たぶん受けることになると思う。
 商社に勤めている彼に海外赴任がある可能性は以前からわかっていたことで、だけどそれについてはお互い詳しく言及することもなく、学生の頃の気分をうっすらとひきづったまま関係は続いていた。

 「うん、そっか」

 自分の口から、そんな言葉しか出てこなかったことに、逆に驚いたくらいだった。

 その日はどちらかの家に泊まることもなく、なぜか駅で別れてそのまま帰ってきた。特に気まずかったわけじゃないけど、抱かれる気にはならなくて、彼もそういう気分じゃなかったのかもしれない。
 バスタブの中で、他人事みたいに考えた。仕事を辞めて彼についていくのか、仕事をしながら彼の帰りを待つのか、とりあえず籍を入れるのか、あるいは離れるのか……。
 私に何も質問もしないで、ただ事実だけを伝えた彼の心情は慮りかねたけど、きっとあれを言うのに朝からソワソワしていたに違いなかった彼の異変に気付かず生ハムを頬張っていた私は、彼に対する視力が落ちてしまったのだろうか。


 「せんせー……あたし、今日超ダルいんですけど、100メートルおまけしてくんない?」
 「ダメよ、私が体育教官の先生に怒られちゃうじゃない」
 「でもさ、女子が水泳休む理由について、先生はわかるでしょ!?共感できるでしょ!?」
 「わかるけどさぁ……じゃ、あと50一本だけ頑張って、ね?」
 「さっすが!話わかるなぁー!」

 ここは私立の進学校。十分な資金力をもって、屋内の50mプールが完備されている。そして、進学校にも関わらずなぜか体育の時間すら情け容赦ない。学期中に水泳の時間を休むと、夏休み中に出てきて自主補講して修了印をもらわないと単位が取れないことになっている。プールにも体育館にも、デカデカと《文武両道》と書かれた横断幕が張られている。

 「へぇ、先生優しいんだ」

 水泳の自主補講には、当番で体育教官以外の教員も借り出される。生徒たちがダルいダルいと言いながら500mを完泳するのを見届け、ハンコをポンする係だ。あれ以来なんとなく顔を合わせたくなかったのに、今日の当番は私と、

 「朴先生。内緒にしてくださいね、でないと私が」
 「わかってますよぉ。俺、先生には優しくしてるつもりなんすけどねー^^」

 日中は、全国レベルの実力を持つ水泳部がプールを占領するため、自主補講は夕刻。
 窓から差し込むオレンジの光が、ベンチで隣に腰掛けた彼の、長い睫毛の先を掠めて。

 「今日、起きたら遅刻しそうな時間だったし、クソ暑いからサポっちゃおって思ったけど」
 「ちょっと、生徒以下なこと言わないでくださいよ」
 「当番誰とだっけーって思って、先生とだからちゃんと来たのにー」

 そんなことを言って屈託無く笑う顔は、こないだ傘の中で見たあの顔とはまるで違って見えた。二重人格かなにかなんじゃないかと、本気で心配してしまうほど。

 「せんせーっ!終わりましたー!」
 「お、ホントか?じゃあがってこーい!ハンコ押してやるから」

 あの子は真面目に泳いでたな。自主補講は圧倒的に女子の比率が高くて、でもってサボりたがる子が多いのに、なんかみんな、今日は真面目だ。顎の先から光る水滴を落としながら、彼に修了印をもらいにくる。息が上がってるのは、単に疲れたからだけではない気もして。

 「朴先生、もう帰るの?」
 「ちょっと掃除して、プール締めて帰るから、まだだけど」
 「えー、一緒に帰ろうと思ったのに。だって住んでる方一緒だったよね?」
 「今日は他の仕事もあるから、まだかかるし先に帰って、ね?」
 「なーんだ、残念」


 誰もいなくなったプールサイドで、デッキブラシをかける。ふと彼の方を見やると、なんだか楽しそうに鼻歌を歌いながらシャカシャカしている。

 「そろそろ、終わりにしましょうかー?」
 「そうっすねー!」

 ブラシを用具入れにしまうと、うーんと伸びをした彼の額や首筋には、玉のような汗。

 「ここ、めっちゃ暑くないすか」
 「ほんと、そうですよね」
 「あいつらはプール入ってるからいいけど、俺ら見てるだけだもん」
 「ほんとほんと」
 「ズルいっすよねー」

 「じゃ、電気消しますよ?」

 防犯上の理由だとかでつけっぱなしにする水中の壁面灯を残して、天井灯を消したら、朴先生が大きな声で、待って!と言った。

 「先生、そのしたって水着着てる?」
 「ハ!?いきなり何訊くんですか?」
 「着てるよね?」
 「一応……何かあって入らなきゃいけないときもあるから」

 ジム用の水着に、Tシャツとラン用ショートパンツを重ねてるけど、それが何か……?

 「じゃ、いいじゃんっ」
 「え、いいって何が」

 朴先生は、いたずらに微笑んでからタタタっと走ると、スイムハーフパンツにTシャツのままで、
プールにザブンと音を立てて飛び込んだ。

 「ちょっと!朴先生!」
 「……ッハァ~っ、気持ちいーっ!!先生も早く早くぅ!!」

 頭をフルフルっと横に振って水滴を飛ばして、満面の笑顔で私においでおいでする。ちょっと、嘘でしょこの人……

 「いい加減にしてくださいっ!バレたらめちゃくちゃ怒られますよ!」
 「先生が言わなきゃ絶対バレねーもんっ」

 おそるおそる傍まで近づくと、プールの中からにゅっとこちらに手を伸ばしてきた。

 「ほら」

 この手を掴んだら、何か取り返しのつかないものに巻き込まれるかもしれない……。
 きちんと危機察知したはずなのに、予期せず現れた脳内の隠れプログラムみたいなものが私の右手を差し出させた。ハッと息を飲んだ瞬間にはもう遅くて、私はすとんと水の中に、落ちた。

 「……ッ……ハァ!」
 「ね?めっちゃ気持ちいいでしょ!?」
 「……確か、に……」
 「ほら!」
 「でも」
 「でもって言わないの!ね、泳いじゃお泳いじゃお」

 彼は私の手を引いたまま、歩くのと泳ぐのの間みたいにして水面をどんどん進んでいく。私は、服を着たままのせいで抵抗を感じる体をなんとか進ませながら、ついていく。悔しいけど、ふわふわして冷たくて、気持ちいい。

 「あ」
 「え、なに?」
 「オシッコしそう」
 「え、ちょ、やめてよっ!」
 「って、言う奴ぜったいクラスに一人はいなかった?(笑)」
 「ナ!……うん、いた(笑)」
 「あれ、すっげーバカだったよね」
 「うん、アホすぎる」
 「俺がすると思ったの?」
 「したら学校中言いふらすから」
 「そしたら、先生と俺がこんなことしてんのバレちゃうよ?(笑)」
 「あ、ホントだ(笑)」

 先生、俺といて初めて笑ったんじゃない?なんてからかうから、こんなしょーもないこと言う人他にいませんからって返しておいた。

 「ね、先生って泳げんの?」
 「私?まぁ、一応。去年まではちゃんと、休みの日はジムも、通ってたし」
 「じゃさ、先生1コースね。俺2コース。勝負しよっ」
 「え、なんでいきなり」
 「負けたらビール一杯おごることー」

 一体なんでって言いながら、なんだかこの人には出会ってから負けっぱなしなような気がして、元々無駄に競争心の高い私を煽るのには十分で、スタート位置にスタンバイする。

 「一応男だし、俺背泳で行くから。先生はもちろん自由形でいいっすよ」
 「なんか悔しいけど、まぁ、いいですそのハンデで」
 「じゃ、位置についてー、よーいっ、スタート!」

 ひさしぶりに感じた水は、その中で動かした手脚は、思うよりずっと心地よくて。回した手の指先が水面に刺さるたび、うねる流れが後ろへ過ぎて行くのを太腿で感じるたび、何かから解き放たれていくような感じがした。
 そして50メートルに残り5メートルのラインを越えてそろそろ壁にタッチすると思った時、突然。

 「ギャぁっ!!」
 「ンハッ、びっくりした?」
 「な、何するの!?」

 まるで小学生みたいなイタズラっ子の顔をしてニヒヒと笑った、朴先生は先にゴールして壁際に待ち伏せしていて、タッチしようとしたあたしの手を掴んだのだ。

 「……ゲホッ」
 「ちょ、ごめんって」
 「びっくりしすぎてちょっと水飲んだし」
 「マジごめん」
 「ってか、速い。水泳そんな速いなら先に言ってよ」
 「高校んとき関東大会で入賞した、くらいかな?」
 「え、ズルい。しかも1コースって不利だし!」
 「だからハンデあげたっしょ?ちゃんとビールおごってねー♡」

 まだ少し咳き込んでいたら、向こう側の扉が急に開いた。マズい、守衛さんだ!

 「まだ誰か、いるんですかー?」

 見つかる!と思った瞬間、彼は私の両手を掴んでぐいと下に引っ張った。二人同時に、水中に沈み込んだ。
 
 「……ッ!?」

 目を開けると、人差し指を口に当てて《シー!》って、しばらく沈んでようって言ってるみたい。
 でもあたしは、さっき水飲んで咳き込んだせいと、突然準備もなく息も吸わずに潜ったせいで、肺の中の空気はわずか。すでにめちゃくちゃ苦しい……!なのに、しんとしたプールの中にもまだ聞こえるくらい、守衛さんが何か叫んでいる。
 もうダメ、上がらないと死んじゃうって、もがきながら首を横に振って上がろうとしたその時。
 彼は、私の両肩を掴んで、口移しに自分の肺の中の空気を、私の口の中に押し込んだ。 
 触れた唇の端から、ぷくぷくと小さく昇っていく泡。送られた空気はしっかり肺に届いたのか、不思議と苦しさが凪いでいく。もうその手を解いて上がれるくらいに緩い力しか掛けられてないのに、彼と繋がった唇から力が抜けてしまったように、抗うことはできなくて。

 やがてしばらくして、扉が閉まる鈍い音が微かに聞こえて。
 私たちは水面に、そっと静かに顔を出した。

 「……平気?」
 「あ、うん……」
 「よかった」
 「あの、私……」
 「苦しかった?ごめん」
 「ううん、助かった。苦しく、なくなったから」

 どんな顔していいのかわからなくて俯いてたけどふと見上げれば、彼はなんて切ない眼差しで私を捉えていて。濡れて張り付いてしまったTシャツは肩と鎖骨のラインを妖しく浮かばせて、前髪の先から滴った雫が、まるで涙みたいに彼の頬を流れた。
 どうしてだか、咄嗟にそれを拭おうとしてその頬に指を伸ばしたら、まるでスローモーションみたいに長い睫毛が伏せられて、首の後ろを掬うように回された手、近づく距離。
 もう一度、唇が重なった。水を含んだその感触はさっきよりずっとリアルで、甘い味が広がっていく、長く永い時間。

 「……どう、して?」
 「どうしてって」
 「こんなこと」
 「キス、したくなったから」

 まるで幻の世界の中にいるみたいなのに、急にバカみたいに現実的なことがフラッシュする。そうだ、私には恋人がいて、こんなことをあなたとしてはいけなくて、これは。

 「私、いけない。こんなの、だって」
 「そんなの、関係ないって」

 まるで私が言いかけたことがわかったように、続きを制した。
 そうか、さっき言われた、《言わなきゃ絶対バレない》って。いや違う、そういうことじゃなくて……?

 「だって、したくなったんだから、しょうがないでしょ?」
 「……え」
 「そんな格好見たら、誰だって。でも」

 彼と同じく、素肌にしっとりと張り付いて透けたシャツに、ほどけた髪はまるで自分じゃないみたいで。

 「でも?」
 「その、唇。それ、狡い」
 「私が……?」
 
 「キスしたくなる、それ。持ってんのが、悪いよ」

 私たちはまた、目を閉じた。もう何も、聞こえなくて。
 降り止まないキスの雨が、水の中に二人を溶かしてしまった。