皆様どうも、おこんばんはです。
いやいやどうも、急に涼しくなりましたね。って、時候の挨拶とかしてる場合じゃないっすね。


見ましたか?
え、見ましたか?
私は、見ちゃいましたよ、ええ。そうです。


「ケリョンデの奇跡」!!!!!


リアルユンジェって……ハンパねぇっすね><
こちとら準備できてなかったもんですから、乾ききった体にちょっと刺激が強すぎて。
想像してたのを軽く凌駕してきましたね!!!天晴れ!!!
事務所関係者わんさかいたらしいじゃないですか?
でもあそこまで、ねぇ、やっちゃうのって、ねぇ?

今までも定期的に会ってただろうがてめーらこのやろうめ!!!



ってなわけで、表向き腐ってないこちらのブログでは←
触発されて、初めての(ここ重要)初めての!!!


ユノ話、始め〼。




(ちなみにここの管理人、ユチョンに骨抜きにされたせいでユノは大好きなんだけど男としてはどうしても堕ちられない残念な仕様ですので、どんな仕上がりになるのかは未知数です……しかしまた、これを機にユノ堕ちする可能性も秘めています……)


みゅーさーん!
見てますかー!?
ついに始めますよー!
ユノたん出てきますよーっ!



ちなみにこの話、ユノシェプ話になっちゃったんですが
私、安定のユノドラマ(注文するやつ)未視聴です……あしからず土下座です。












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 それは、びっくりするような大雨の夜のことで。


 御堂筋はちょっと臭うくらい濡れて、これが秋の銀杏の時期じゃなくて良かったってのは少し後になってから知ったこと。その大通りから一本入ったところで、前から思い切りくらった突風のせいで心もとないビニール傘が、ブンと音を立ててお猪口みたいに裏返って……ぶっ壊れた。

 「……ウソでしょマジで」

 とりあえず立ち止まって体を引っ込めた軒先、水滴を払おうとした手の先、定休日の店の前に貼られた紙は《スタッフ急募》。見上げれば、今まさに雨宿っているホロに書かれた《bistro》の文字。パティシエが欲しいって中身に目が釘付けになった。
 明日にでも襟を正して出直そうと思った時、閉まってたシャッターの片側だけ裾がチラッと開いて明かりが漏れた。定休日に店に来てるシェフの店なら間違いない、あたしの嗅覚が勝手にそう判断して胸が高鳴る。長身でベースボールキャップを被った、男の人が現れた。

 「あー、お、ん、すみません。今日は、定休日だからぁ」

 端正な白狐みたいな人。涼しく黒い瞳が、あたしを捉えた。

 「あ、いえ、違うんですあたし」
 「?」
 「ここで、働きたくて」
 「……あぁ、なんだ。見習いは取らないし、間に合ってるから」
 
 白キツネの人は、急にタメ語になって顎を上げて見下すような視線を浴びせて、まるでお前なんか腹のたしにもならんっていう狼みたいな冷たさに変わってまた、店の中に引っ込もうとする。

 「ちょっと待ってください!」
 「だから、間に合ってるって」
 「これ!」

 私は、パティシエ募集の紙を強く指差した。

 「え、もしかして……君」
 「パティシエが、必要なんですよね?」
 「経歴は?」
 「東京の製菓学校を出て少し働いてから、パリで3年修行して3ヶ月前に戻ってきました」

 それを聞いた途端、今度はまるで、カブトムシの幼虫を発掘した少年みたくニマぁ~っと笑顔になって、ダーーーっ!!!と叫びながら、ものすごい力で私をハグした。

 「なっ、ちょっと!!」

 次の瞬間、私の体はふわんと持ち上がって。
 彼は、私をかついだまま歩道に出て、クルクル回り始めた。

 「やったやったやったーっ♪」
 「ちょ、何するんですかちょっと!」
 「ナハハーっ♪って……ごめんごめん!」
 「……あの、びっしょびしょなんですけど」
 「あー、僕も、びしょびしょだねー!」
 「びしょびしょだねーじゃないですよ!」
 
 混乱するあたしをよそに、彼は堪えきれなくなって吹き出して、白く整列した歯をキラキラ覗かせながら大笑いしはじめたから、あたしもなんだか、つられて大笑いしてしまって。
 
 「あの、あなたが、ここの?」
 「うん、僕はここの、シェフでー」
 「名前、聞いても?」

 「ユノ。僕はー、ユノっていいますよ^^」
  



 「わぁ……」

 とりあえず中に入ってと、店に一歩足を踏み入れて見渡すと、そこはカウンターと壁沿いのソファにテーブル3つだけの小さなビストロ。白壁にボルドーで塗られた木の設えが素敵な、パリを思い出す雰囲気たっぷりの店内で。

 「素敵!」
 「それは良かった」
 「あの、本当に私ここで?」
 「まずはお互いの腕と相性を見て、うん。長く働けそうなら、いいね」
 「ハイ、頑張ります!!」

 詳しいこと聞きたいからと、カウンターの一席に掛けるよう言われて。バックヤードからちょっと取ってくるからと言われて待たされること数分……なんだろ、ちょっと遅くない?座っているとどんどん濡れた体が冷えてきて、私は大きなくしゃみを三連発した。

 「大丈夫!?」
 「あ、すいません、ちょっと寒くて……」
 「そうだよね、濡れちゃったもんね」

 見つからないから先にこれーと言ってタオルを持ってきたユノさんは、おもむろに……あたしの髪をゴシゴシワシャワシャ拭き始めた。

 「な、ちょっ、何するんですか!」
 「え?」
 「自分でできますっ」
 「え、あ、そっか。だよねぇ」
 「です……///」
 「なんかその、髪……かな」
 「髪?」
 「クルクルしてて」
 「あたしの、ですか?」
 「昔、うちの犬拾った時のこと、思い出したみたい」

 今度は口を小さな《V》の字みたいに少し微笑んでから、またバックヤードに消えてった。それにしたって、ほぼ初対面の、曲がりなりにも女の髪を素で触るって、結構……すごくないですか?
 そしてまた数分、ガサゴソ音はするものの、出てくる気配がない。あたしは思い切って、そのドアを開けてみることにした。

 「あの……ユノさん?」
 「あ!ナ!まだ入っちゃダ……」
 「なにこれ!?」

 そこは、表の店内とはまるで違う世界にきたんじゃないかってくらい、ダンボールやらワイン箱やらなにやらがうずだかく積まれていて、え、ここって調理場兼パントリーのはずじゃ?倉庫なの??つまり相当散らかっていた。

 「あー、見られちゃった、ねぇ」
 「これは……」
 「いや、パティシエ雇うなら使うだろうと思って片付けようと、思ってたんだよ!?思ってたんだけどね!?そう、今日やろう今日やろうって、思ってたんだけどね!?」
 「もしかして、その……」
 「うん。ちょっとー、苦手かなぁ……ハハハ」

 今度はまた、少年に戻ってしまったみたい。

 「探すの、手伝いますよ。何ですか?」
 「えっと、採用に必要な契約関係の書類とか一応……個人経営の店だけど、オーナーがちゃんとしてて確かその上の箱か、いやあっちだったかなぁ」
 「じゃ、私こっち見ますから、ユノさんはそっちの続き探してください。どんなのに入ってます?」
 「確か、青っぽいファイル、だったっけなぁ」
 「確か確かって……まぁ、いいです」

 手前にあった脚立に上がって、棚の上の箱に手を伸ばした瞬間、絶妙なバランスで積まれていたその箱たちが崩れるのと同時に、自分の視界もぐらんとなって……次の瞬間、箱たちと共にあたしは床にドサリと落ちた。

 「ごめん!大丈夫……?」
 「……」
 「意識は!?しっかりしてー!!」
 「……いえ、あの……」
 「あぁ、片付けとけば良かった……おぅっ、どうしよ、ごめん!」
 「実は朝から、何も食べてなくて……」
 「ハ!?」
 「たぶんそれでちょっと、グラっと……」

 「アホかっ!!!」

 すごい剣幕で怒られた。人に作って出す側の人間が、食べないでぶっ倒れてどうすんだって言って、カバンでも持つみたいに軽々と私を担ぎ上げた。

 「ほらっ、行くぞ」




 ソファに投げ出されて、朦朧とした意識のまま、漂ってくる香りに嗅覚だけが刺激される。なんていい匂いなんだろ……あぁ、バターと、野菜の……んぅ……

 「ほら、これ、食べて」

 目の前のテーブルに出されたのは、キラキラツヤツヤと輝くような。

 「わぁ……っ!!」
 「蕪のポタージュ、プレーンオムレツ、栗とキノコとジャンボンのバゲットサンド」
 「これ……あたし……食べていいんですか?」
 「もちろん^^」
 「泣きそう」
 「食べたら、もっと泣いちゃう、かもしれないよ?^^」
 「……TT」
 「冗談。残りものでサッと作ったからそんなに、上等じゃないけどね」

 ポタージュは蕪の甘みとほんのりとした苦味がそのまま感じられて、プレーンオムレツはナイフを入れればトロリと溶け出す絶妙の火加減とバターの香り、バゲットサンドは栗とキノコとハムって意外性のある具材をスパイスの効いたクリーミーなソースとオーブンで少し焦げたチーズが完全にまとめあげてて、バゲットが昨日のものってことをまるで感じさせない仕上がりだった。

 「いい顔して、食べるね」
 「だって、完璧に美味しいから」
 「そんなに褒めたって、すぐ採用かはわからないぞ?」
 「そんなつもりじゃなくてほんとに」
 「いつから来れる?まずはいくつか基本的なものと、試作を見せてもらって……」
 
 それでもし断られても、あたしは何度でもこの店の門を叩こう。このお店で、働きたい。
 あたしの熱視線に気づいた彼が、ふと顔を上げた。

 「……ん?どしたの?」
 「いえ、なんでもないです」
 「食べてないとか、ダメだぞっ」
 「……はい。」
 「頑張れない、でしょ?」
 「頑張ります、あたし」
 
 というより、子供みたいなのか怖いオジさんみたいなのかわからないこの、目の前で微笑んでいるこの人と、働きたいと思ったのかもしれない。