予防策の提案 | やればなんとかな~る

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口蓋裂という「おみやげ」をもって生まれて早23年。
医学生として勉学に励む傍ら、患者の苦悩を身をもって体験中。
患者としての苦しみ・痛み・辛さは優しいお医者さんになるためのワンステップ。
そう信じて、自分が自分で生まれた意味を日々探究しています。

今まで書いた記事の中で最も反響が大きかったであろうテーマ、

「口唇口蓋裂の予防」

http://ameblo.jp/yukoyuki/theme-10006440403.html について、

実際にはどんな内容だったのかとの問い合わせが結構あったので、

今日はそれについて書こうと思います。

(※医学生とは言え素人ですので、間違いがありましたら

ビシバシご指摘の方よろしくお願いします。

なお、この記事を通して自分の親を含め、

特別な予防策をとられなかった親御さん達を

責めるつもり等々は全くありません!!)



もともと口腔外科の授業で出た話題だったので、

まずは参考にすべく授業ノートを振り返ると…


「口唇口蓋裂の予防



あたしはやらん!!!」



…はい、誠に恥ずかしながら、この授業では医学生の自分よりも

患者の自分が前面に出てしまっていた様で、

肝心のノートには「あ・た・し・は・や・ら・ん」と、

ただそう、デカデカと書いてあったのでした。

実際、今でも予防には抵抗ありますから…。

まったく成長してないな~、と自分でも呆れております。


そこで、身近な資料を調べてみました。

口唇口蓋裂の成因に関しては以前も触れた

(http://ameblo.jp/yukoyuki/theme3-10006440403.html )

と思うのですが、おさらいがてらまた書きます。


口唇口蓋裂は特にこれといった絶対的な因子によって

引き起こされる疾患ではなく、様々な要因が複合的に

作用しあって発生するものです。


その要因とは、大きく分けて遺伝的なものと、環境的なもの。


ア) 遺伝に関して・・・

口唇口蓋裂に特異的な遺伝子が発見されている訳ではないのですが、

口唇口蓋裂を抱えていない両親の、子供の1人が口唇口蓋裂で

生まれた場合、次の子供が口唇口蓋裂で産まれる確率は

8.0%だと言われています。これは一般人口における

口唇口蓋裂の発生率(=0.2%)よりも高く、何らかの遺伝要因が

関係していると考えられます。

しかしその傍ら、遺伝情報が同一であろう一卵性双生児において、

片方の子供にだけ口唇口蓋裂が発生したケースもあるらしく、

遺伝以外の要素が強くからんでいることも示唆されます。

なお、口唇裂や唇顎口蓋裂と口蓋裂とは、遺伝様式が異なる

可能性もあるそうです。


イ) 環境に関して・・・

大きく分けて年齢、精神状態、栄養不足、嗜好品、感染症、薬、放射線

などが挙げられます。


具体的には、

①母胎環境・・・高齢、糖尿病など

②精神状態・・・過度の疲労、ストレス

③栄養不足・・・ビタミン、糖、葉酸など。貧血にも注意

④嗜好品・・・喫煙、飲酒

⑤感染症・・・インフルエンザ、水痘、トキソプラズマ、風疹、ムンプス等

⑥薬剤・・・避妊薬、サリドマイド、ステロイド、抗癌剤、抗てんかん薬等

⑦放射線・・・レントゲン


これらの要因が関係するのは何も母親だけではありません。

父親もです。恐らく精子に傷がつくためだと思われます。

また、これらのいずれも決して絶対的な要因ではなく、

いずれか1つに該当するからといって口唇口蓋裂の子供が

生まれる訳ではありませんし、複数の要因が重なっていたって、

必ずしも口唇口蓋裂の子供が生まれるとは限りません。

もしかしたらどの要因に関しても全く心当たりのない親御さんも

いらっしゃったかもしれません…。



ウ) 要因が一通り出揃ったところで、本題の予防についてですが、

要因がある程度分かっている以上、それを防ぐことが予防に

つながると考えられます。


どの因子も努力次第で防げそうなものですが、

ここで問題点がひとつ。それは口唇口蓋裂の発生時期です。


つんつるてんの受精卵が赤ちゃんの形になるまでには、

パーツごとに少しずつ形成されていくのですが、

口唇口蓋裂は顔の形成がうまくいかないために起きます。

ちなみに、顔が形成されるのは妊娠8-12週(2-3か月)。


私自身は妊娠の経験がないので分からないのですが、

この時期というのはお母さんが、

「生理が遅いわね…。もしかしたら…∑(゚Д゚)」と

勘ぐり始める時期だそうです(若干遅い?)。


それって言い換えてみれば、お母さんが最も無防備な時期。

この時期に上述した因子に十分注意するためには、

計画的な妊娠を心がけるのが一番だそうです。


でも、誰もが計画通りに妊娠できる訳じゃない…。

から、子供が欲しいと思った時点から上記の因子に

気をつけることが一番大切なのかもしれませんね。

そして無計画、意図しない妊娠を避けること、でしょうか…。


発生要因の予防策としては

①高齢出産をできるだけ避ける。

②飲酒、喫煙などの嗜好品は自粛!

③感染症には注意。可能であれば妊娠する前にワクチン接種。

④何かの治療に薬剤服用が必要な場合、

妊娠希望の意思はしっかり医師に伝える。

⑤妊娠初期のストレスや疲労は避ける。

⑥家系内の口唇口蓋裂発生状況を把握し、必要であれば遺伝相談へ

などが考えられます。

もっとも、遺伝要因に関しては現時点では防ぎようがありませんが…。

事前に把握しておくことにより、ある程度心の準備はできるのかも。


また、本によれば5月と9月は統計的に異常児出産が少ないので、

その月の出産を目指すのも一つの手だとありましたが、

私は5月生まれです。

・・・シーン・・・(^_^;)


ちなみに私がこういう身体で生まれてきた原因に関して、

母は妊娠初期の精神状態だと考えているようです。

両親とも飲酒喫煙はやってませんでしたし…。

また、家系内で口唇口蓋裂は私だけです。

私は下に兄弟が2人いますが、2人とも口唇口蓋裂ではありません。

2人をつくる時に(!)、両親が特に気をつけたこともないと思います。

だから、口唇口蓋裂のお子さんを抱えている親御さんも、

次のお子さんに関して過度の心配はしないでください!!


予防と言っても、決して絶対的なものではなく、

長文を費やした割には、期待外れな内容だったかもしれませんが、

少しでも参考にして頂ければ嬉しいです。


以下は今回この記事を書くにあたって参照した文献です

①口唇裂・口蓋裂治療の手引 

   昭和大学口唇裂・口蓋裂診療班 金原出版発行

②口腔外科学

   宮崎正 医師薬出版発行

③標準口腔外科学

   野間弘康 医学書院発行


  

①はお持ちの方も多いかと思います。

口唇口蓋裂の子供をもつ親御さん向けの本で、

私が自分の病気を知って初めて買った本でもあります。

一般書なので大変読みやすいです。お勧めです。

あと、繰り返しになりますが、医学生と言えど私も素人です。

この記事も決して専門家寄りの立場からなどではなく、

皆さんと同じ患者の立場から気になったことを自分で調べて

文章にしただけですので、私が書いた内容によって、

皆様の不安をあおるようなことは絶対にあってほしくありません…。

本当に気になることがあれば、一度担当の先生にご相談

なさってみてくださいね。