Brexit考察、内部留保議論に日本の本質問題を垣間見る | 蓮華 with にゃんこ達

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専ら、マーケットや国内外の政治経済ネタが多くなってしまいました。
母と愛しい我が子達を護りつつ日々闘う中で思う事をアップしていきます。

ショッキングな出来事が相次ぎ、それこそオーランド銃撃の話とか、あれ程の惨劇にも関わらず、忘れてしまっている位ですね。

いつも日本人犠牲者の有無で事件の重さを測るのは如何なものか、とは思っていますが、やはりバングラデシュの事件は、非常に辛く悔しい限りですね。

根本的な姿勢として絶対に悪を許してはならない、徹底して糾弾し、正しい事を言い切る、そこに一切の妥協をしてはいけないはずです。

その上で、池内恵氏が指摘されるように、各地で分散型の非集権的な小組織(或は個人)が、イスラム国やアルカイダなどのグローバルなジハード運動に動員される現象が、今後も続いてしまう。我々全てが、そんな世界で生きていかざるを得ない事を、改めて認識させられます。

犠牲になられた方々、そして御家族に対し、心より哀悼の意を表します。

話を切り替えまして・・

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周知の通り、Brexitサプライズ後に荒れたマーケットですが、バリュー的には、良い仕込み所となりましたし、経済への影響も英国以外には殆ど無かろう、と冷静さを取り戻した感があります。
日本株は月末時点ではマイナス1%でしたが、取引2日間でそれ以上、十分に超えて取り戻してますね。

さて、英国以外、と言いましたが、英国にとって実際の所どうなのか?

今回の結果を、英国在住の小野昌弘医師は、日本でステレオタイプに言われているような
『エリートに無視された民衆・労働者階級の反乱』、
或は、愚かな国民が、
『右派ポピュリストの宣伝による反移民感情を煽った大衆扇動の結果』
などの見方は一面的に過ぎ、実情を表していないと書かれています。

実際の所で、上述の池内氏が指摘する通り、移民・難民問題も、過去10年で東欧から大挙して入ってきた移民とは、殆ど文化的な摩擦は起きておらず、遥かに数が多い南アジアや中東やアフリカなど旧植民地・英連邦諸国からの移民と一部摩擦が起きている、
これは言うまでも無くEUのせいなどではない訳です。それこそ嫌なら英国の法律を変えればいいだけの話。

自分達の植民地主義支配、これこそ離脱派が復活を主張する『大英帝国時代』のツケであり、間違ってもグローバリズムがもたらした歪みなどでは無く、硬直的で細々とした利権などは、EU固有の問題です。
英国も、それに縛られてきた害はあるにせよ、利益の方が遥かに大きい事は言わずもがなで、そこで得てきた好条件は取り上げられてしまいそう、という事です。

そして今回の結果で一番苦しむのが誰かと言えば、まさに『エリートに無視された民衆・労働者階級』、低所得者層への影響が大きいだろうという事ですね。

短期的に影響が大きいのはポンド安でしょう。
この1カ月で、対ドルで2割も急落していますが、食料など汎用品の殆どを輸入に依存する貿易赤字国で、低所得者層が最も大きい打撃を受けるコストプッシュ・インフレです。
勿論、これは日本にも言える、円高大いに結構という事ですよね。しかも、英国は、EUを離脱すれば関税も再開される訳です。

今後の英国は、まずEUとの離脱条件交渉が待っており、既にEUからかなり牽制されています。

しかしもっと大変なのは、それが済んだ後、EU各国、さらには域外、勿論アメリカや日本とも個別に、あらゆる分野の通商交渉をしなければなりません。いわば「国替え」ですから、全部やり直しになるのは当然です。

まあ、次々に敵前逃亡が出るのは当たり前ですね。トップになったら棘の道が目に見えてます。貧乏くじなど誰も引きたくない(笑)

特に日立の鉄道事業が取り沙汰されていますが、それこそ部品一つ一つの関税など不透明なままで事業を継続出来るのか、医薬品の承認など域内であればOKだったものも、離脱すれば通用しなくなります。

投資やファイナンスの世界に於けるリスクとは『予想する事の出来ない不確実性』です。例えネガティブ要因でも、ある程度確実性があれば対処出来ますが、企業は『不透明、不確実』を最も嫌います。

ライアンエアーのように、英国が加盟国だったから本社を置いていた外国企業だけでなく、ボーダフォンなど英国の企業も、英国外に拠点を設ける方針を次々に発表していますが、移民に雇用を奪われずとも、雇用自体がゴッソリと減れば、影響を最も受けるのは低所得者層でしょう。

但し、ロンドンの金融街シティは影響が少ない、言い換えれば、「民衆・労働者階級」が怒りの矛先をぶつけたいエリートにとっては、痛くもかゆくも無い、とも言えます。

以前パナマ文書について書いた記事の中で、ロンドンのシティこそが世界最大のタックスヘイブン、と書きましたが、むしろその点ではEUから離れた方が、域内の規制のかかる銀行グループの取り扱いなども有利になります。

『よりパナマ化する』とも言われますが、EUにしろTPPにしろ、多国間で統一されたルールを作り遵守させると言う意義から放たれれば、自国にとって利己的な方向に進みやすいのは自明でしょう。

現実的に、金融機関は免許を再度取り直すことにもなりますし、バックオフィスに繋がるインフラや、各種周辺業務などのアクセスやコストを考えれば、移転の選択肢は取り辛いでしょう。
製造業の物流機能や生産管理体制などよりも、構築には何百倍も時間もコストもかかります。参入障壁が高いんですよ。

ただ一方で、自国内にはロクな産業も育たず、製造業もGDPの10%程度の英国で、ポンド安がプラスに効く分野としては、石油の輸出、そして観光があります。後者は既に恩恵を受けている、との記事も出ていますね。

他国への影響も含めて過度な悲観論は不要ですが、少なくとも意図とは正反対の結果を生む、低所得者層への影響が大きいにも関わらず、民主主義の勝利的な言い方は、私には無責任としか思えない、という事です。

意図とは正反対の結果・・という事では、最近Twitterでやり取りが多かった内部留保の問題、これも会計の基本さえ分かっていれば、350兆円などという金額はリアルに存在するはずが無く、

ましてや内部留保課税など、全くの逆効果、経済を縮小させ、結果として労働者への配分を益々減らすだけになる事は、火を見るより明らかです。

にも関わらず、『経営者=搾取する主体』と言う短絡的でステレオタイプな、誤った思い込みが自らの首を絞める、結果としてコッソリほくそ笑むのは、怒りの矛先をぶつけたいはずの株主優位主義者でしかありませんよね。

マスコミがこんな何の意味も無い数字を、知識も無く正義面して発表し続けるのが悪いんですけどね。

会計やファイナンスの基本が分かれば、大半の経営者が『利益』などという実体のない抽象概念をベースに経営するはずが無い事は直ぐに分かります。

そして『ゴーイングコンサーン(継続企業の原則)』がある以上、ステークホルダーの一つである従業員を搾取しても、企業価値が毀損されるだけだという事位、曲がりなりにも経営者を名乗る人達にとっては、基本のキだという事も理解出来るでしょう。

実際、労働分配率についても、労働所得÷GDPで見たグラフは明確な右肩下がりですが、法人統計ベースで、人件費÷付加価値で見ると、約40年間ほぼ横這い、むしろリーマンショック前からは、やや右肩上がりになっています。



これはどういう事か?要するに日本企業の稼ぐ力が落ちているという事ですよ。

そして、日本が稼げない国になっているのは、別にトップや高所得者や大企業だけが利権を享受しているせいではありませんよ。あらゆる階層に網の目のように非効率な仕組みを温存するインセンティブが働いているせいです。

国民が変化を拒否する姿勢が根強い事が元凶、『社会として安上がりにモノを済ませる能力が無い』=効率性を徹底的に軽んじるからです。

社会構造をより効率的で低コストに変化させていく事で、新たな産業も生まれ、企業や人も参入してきます。

社会活動の全ては複利で価値を創出し続けるモノで、影響は恒常的であり、一時的なものに終わるはずがないんです。いつまでパイの奪い合いみたいなチンケな話に終始してるんだって事。

ともかく、半沢直樹も言っていたでしょう。『経営を舐めるな』そして『株主の存在価値を見誤るな』という事です。

亡くなられた堀場製作所の創業者、堀場雅夫氏が、
『最初から財務を気にし過ぎる人間は起業家に向かないが、ある時期からは財務を意識しないと会社を発展させられない。覚醒が絶対に必要』と仰ってましたが、

まさに、企業の初期である導入期には、まず投資が先行しますから、投資CFはマイナス、さらには、まだ投資が価値創造に結び付けられていない段階ですから、営業CFもマイナスですよね。

はい、『Aurea 人生と投資の会』プログラム会員の皆さん、ここ復習ですよ。大丈夫ですね?(笑)

ここを恐れずに前のめりになれる人で無ければ、ベンチャーなど到底出来ません。でも、経営者は覚悟を決め、腹を括って、ステークホルダー全てに報いていく価値創造を実現すべく、緊張感を持ってやってるんです。舐めたら絶対に許しませんよ、マジで。

ああ、本当は斜陽産業で需要を創り出しているカッコイイ地方企業を紹介しようと思ったのに、長くなり過ぎですね。そこはまた次回。