「400万人目の来館者」が使った政務調査費 | ゆきわり日記 司法書士・成田澄夫の事件簿


1-1 古来のことわざ


●「天網恢々
(てんもうかいかい)(そ)にして漏らさず」

という言葉をご存じだろうか。


「恢々」とは”広くてゆったりしている”こと。
天が張りめぐらせている網の目は、粗いようにみえるが、
その実、どんなに小さな悪事でも決して見逃すようなことはない
、という意味。
悪事の報いを逃れることはできない、というたとえ。



昨日の朝、報道番組を見ていて、この言葉を思い出し、
「本当に”天の網”はあるのではなかろうか」
と、痛快ではありましたが、半面、何やら薄ら寒くすらなったのです。



1-2 昨日の報道番組

TV報道の内容は次のとおりです。

例の「号泣県議」
、野々村竜太郎氏は県議会議員を辞職しましたが、
(兵庫県議会では)彼以外にも、不正や疑惑が次々に浮上している。

その内の1人、
加茂忍県議、今年3月、夫婦同伴で熊本、長崎両県を3泊4日で視察旅行した。
ところが、「視察先」の一つ
天草キリシタン館熊本県天草市)で、400万人目の来館者として妻とともに記念品を贈呈され、同館のホームページに載った。市政だよりには「良い思い出になった」とのコメントも掲載された。
この際、職業を尋ねられた加茂県議は「不動産業」と答えていたという。



中央が加茂忍ご夫妻。天草市長、市幹部、
ゆるキャラ達と一緒に記念写真に収まる)



加茂忍県議といえば、兵庫県議会議長まで経験した自民党の大物議員。
例の野々村元議員の不正に関するTV取材に対して、

「他に疑惑がある県議はいない。」

と、余裕タップリの笑顔で答えた御仁。

熊本・長崎両県視察の旅行費用は、温泉旅館での夫婦の宿泊代、タクシー代、入館料を含め、県議会の「政務調査費」から支出された。

加茂氏は新聞の取材に対し、
「趣味や教養を深める行為は議員活動との境が難しい」
「自分には心臓疾患があり、妻の同行は容体急変に対応するため必要だった」
として適正な支出だと主張。
ただ、夫婦で宿泊したホテルのツインルームの費用については「シングルルームとの差額分は返還も考える」とした。

(兵庫県議会議場)



1-3 天が仕掛けた「網」

これは、ほとんどの国民の目から見て、ただの「夫婦旅行」です。


趣味や教養を深める行為は、
議員活動ではなく、個人レベルの活動です。当然、公費支給の対象にしてはいけません。
「心臓疾患」が不安な状態であれば、
それをおしてまで旅行する緊急性が今回の熊本・長崎旅行にあったとは思えません。

それにも関わらず、上記の弁明をするのは、
加茂議員にとって、夫婦同伴の観光旅行を「視察」と称して公費をもらうことは、(別に、不適切支出ではなく)当然のことなのでしょう。

それ位に、感覚が麻痺し、国民・県民の健全な良識から乖離してしまっているのです。
でも、そのことについては、これ以上は触れません。



私が申し上げたかったのは、次のことなんです。

・「400万人目の入館者」が、誰あろう加茂忍県議で、
その当時は、兵庫県議会の政務調査費をめぐる事件が世間を賑わそうとは、(当の加茂県議自身)思いも掛けず、
だからこそ、(式典を辞退もせず)天真爛漫に夫婦で記念撮影に収まり、
そのことがキリシタン館のHPに公表されて、世間の注目をあびることになろうとは、・・・・。

このような偶然の重なりを目の前にすると、
(加茂忍県議は、)天が仕掛けた網に、まんまと絡め取られてしまったように(私には)みえるのです。
本当に、
「天網恢々疎にして漏らさず」です。


ひるがえって、

「もって他山の石とする」ということわざもあります。

例え、他の者の誤った(下らない)言動でも、自分の知徳を磨いたり反省の材料とすることができる、といった意味です。

加茂忍県議の行動を「他山の石」として、
自らの行動を戒めながら、日々生活することにしましょうか。