お塩、あれこれ | 塚本有紀のおいしいもの大好き!

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フランス料理とお菓子の教室を開いています。おいしいものにまつわる話し、教室での出来事など、たくさんお届けします。
 

最近はいろいろな塩が売られています。

 

私が基本的に持っている塩は日常の味付け用のイタリアの海塩と、飾り塩としてのゲランドの塩です。

 

他にもお土産でいただいたカマルグの塩や、形が面白くて買ったイギリスマルドンの塩ーこれはものすごく低い確率ながらピラミッド形の結晶がでてきておもしろい!ーやら、いろいろあります。

 

でも常備している基本はあくまでも2つ。基本の2つのうち海塩はパキッとした塩味がつきます。ゲランドはいわずとしれたことですが、ミネラル分が多く、丸みのあるおいしい塩です。しかし、料理研究家のくせに、手持ちの塩が2つって少ない!と思われるかもしれません。

 

いっとき、なんでもゲランドで味付けをしていたときがありました。影響された生徒さんも、みなさんが美味しい塩に夢中でした。でも。

あるとき生徒さんが「自宅でポテを作ったけど、なんだか薄く仕上がりました・・」とおっしゃったことがあり、いろいろ答えを探りましたが、ハカリがくるっていたのでないとしたら、ミネラル分が多い塩が原因なのかもしれないと思いました。ミネラルの多い塩で漬けると本来の塩分濃度は下がることになるからです。

 

ほかの生徒さんは、「ゲランドでおすましの味を調えていたのですが、なんだかどうにもよくわからず、入れているうちに、気づくととても濃くなっていた」と言うのです。はっとしました。なるほど、そうかもしれません。

丸い塩は、丸い故に料理の基本の味付けに使うには、少しぼんやりしがちで、落としどころが分かりにくいのです。

 

というわけで、料理の基本の味つけにははっきりと塩味がはいるものを使うことにしました。そのほうが最少で的確に塩が入れられるはず。精製塩でもいいくらいです。

そして最後の仕上げに料理に直接ふりかけるようなときのみゲランドを使うことにしました。視覚的な要素も半分。

以上、基本の塩を2つしか持たない理由です。

 

そもそも塩の使いわけについて、あまりに複雑すぎる必要はないと私は思っています。たとえばトマトにダイレクトに塩をして口に運ぶ場合、精製塩とゲランドではあきらかに味が違いますが、煮込み料理の味つけにゲランドやそのほかおいしい塩を使ったところで、分かるほどの違いがでてくるものなのか? 甚だ疑問に思っています。

というのは煮込み料理には素材由来のミネラル分がほかにいっぱいあるわけですから、料理と一体化したとき、塩分がゲランドによるものか精製塩によるものか、分かるとは思えないからです。

 

ただもう1つのポイントは、人は頭で食べる部分があるので、お店で

「これはどこそこ産のおいしい塩です」

と言われると、やっぱりおいしいと思ってしまうこと。(もちろん私もそうです)

あ、でもこれもやはり使われ方としては、(基本の味付けではなくて)最後の飾り塩的ですから、やはり道理にかなっていると思います。