シューが膨らむ条件 9月の製菓基礎講座にて | 塚本有紀のおいしいもの大好き!

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フランス料理とお菓子の教室を開いています。おいしいものにまつわる話し、教室での出来事など、たくさんお届けします。
 

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9月の製菓基礎講座にて

今月はシューが主題です。
シューはある意味、科学のお菓子。押さえるところさえきちんと押さえれば必ずうまくいきます。

一番大切なことは、小麦粉の澱粉を糊化(α化)させること。お米に水を加えて炊いたら、「ご飯になる」というのと同じ状態です。
そのために牛乳、水、小麦粉、バター、塩、砂糖を混ぜて、火を通します。きちんと糊化していないと、膨らみません。

生地には油脂(バター)が入っているため、グルテンの形成が抑制されます。グルテンがでないということは、パンのキメやスポンジの内層のような小さい気泡ではなくて、ぼこぼこと大きな空洞ができる、ということです(たとえばあまり捏ねずグルテンをだしすぎなようにして生地を作るリュスティックは、細かい気泡ではなくて、ぼこぼこと大きな気泡が入ります)。
ここに卵を入れて絞って焼くと、ボンと膨らむことになります。卵が多いとシューが大きく膨らみます。

といってもむやみやたらに大きいのは私には困ります。
なぜならシューは、皮とクリーム両方がおいしくあるべきだから。
もしあまりに大きいシューが焼けてしまうと、クリームの比率が大きくなり、口に入れた時のバランスが崩れてしまうのです。
大きいシューには大きいシューなりの軽めのクリームを入れる必要があるでしょうし、逆に小さいなら、しっかりと重ためでもおいしく食べられます。

むくむくっとシュー(キャベツ)の形に焼き上げるには・・・
「絞りが命!」
です。そのためには生地の固さは当然のこと、生地温にも注意が必要です。冷たすぎる生地は固めになるので、きれいに絞れません。

もっとも「絞り、命!」なのは、なんといってもエクレア。
稲妻という意味を持つエクレアは、すっとシャープに伸びていなければならないのです。
もこもこと大らかに膨らんでは困ります。

そのためには卵の量を調節します。油脂もしかり。油脂は伸展性をよくするため、多いとすっと伸びます。

生地ができたら、とにかくまっすぐ絞ります。
ちょっと曲がって絞ると、大きく曲がって焼き上がってきてしまいます。とにかくまっすぐ!
そのためには寝不足は大敵です。しゃべりながらはできません。考え事も不可。息を詰め、すっと!
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そして絞った生地の表面が濡れていることも大事です。乾いていたらすぐに表面が焼き固まり、すっと伸びられません。かつ後半になって、破裂したようにもこもこと破れるように膨らみます。



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オーヴンの最初の温度も大切。
手前2本は、不本意に低い温度で焼けてしまったエクレア。奥2本が適正な温度です。
低いと、表面が焼き固まるのに時間がかかりすぎ、内側からもこもこと大らかに膨らんでしまう結果を引き起こします。温度が高すぎると? もちろん焦げます。
それと、表面にフォークで線を引いてすっと伸ばす手助けをしますが、そのラインを深く入れすぎると、同じく手前2本のように焼けます。
フランスパンのクープと同じ。もこっと大きく開く結果を招きます。できる限り浅く線を引く必要があるのです。これではきれいにフォンダンがのりません。

今年は例年の小麦粉と違って、「エクリチュール(日清製粉)」で焼いてみました。
通常よりガシッとした感じが少なく、柔らかめ。色味も少し違うような気もします。
小麦粉の選択はまったく個人の好みの話しです。
細かく説明し始めると本当はまだまだまだまだ・・・ありますが、このあたりで。


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