彼女達の独白② 柳SS | 肝っ玉かあちゃんのひとり言

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妄想の世界に逝っちゃってるヤツの戯言

ネクタイを緩める仕草。

ジャケットを羽織る瞬間。

重い荷物を持った時に浮かび上がる腕の血管。


何気ない仕草に、ギュッと胸がしまって、ジンと子宮が疼く瞬間がある。

それはたぶん女にしかわからない感覚。


だけどそれとは逆に、男にも女にははわからない感覚があるようだ。

男を興奮させるものが、胸や脚や裸だけなんて単純に考えてはいけないらしい。

いったいそれのどこが?と思うような事に反応するらしい。



この話は、それらを身を持って経験した彼女達の独白である。




柳蓮ニの彼女の場合




前々から「もしかして・・・?」っていうのはあったんです。

彼も人間ですから、そういったフェチがあってもおかしくないと思いますしね。

でもそれを強要する事もなかったですし、1度本人に聞いた所「そんな性的嗜好はない。」とはっきり言っていたので、私の思い違いだったのかな・・・?と、思っていました―――――





昔から近くの物が見えにくく、本を読んだりパソコンを使う時は眼鏡を掛けている。

眼鏡を掛けるとスイッチが入るというか、集中力が増すようで周りの事が意識にないってこない。

逆を言えば眼鏡を外すと一気に気が緩む。

蓮ニの視線に気づくのが、眼鏡を外そうとする時ばかりなのは、そのせいだとばかり思っていた。


ふぅと息をつきながら眼鏡を外した後、必ず蓮ニと目が合うのだ。

授業が終わった後や図書館で本を読み終えた時などにふと感じる視線。


不思議に思って聞いてみた事がある。



「もしかして蓮ニって眼鏡フェチなの?」

「俺にそんな性的嗜好はない。」




確かに眼鏡姿が好きだといわれた事もないし、時々眼鏡を外し忘れる事があるけど、その時に視線を感じる事はない。

目が合うのは『たまたま』が続いただけで、私の気のせいだったのかもしれない。


だけどその『たまたま』が付き合うきっかけとなったのだから、それはそれでよかったと思うことにした。


それからしばらくして私達は学校を卒業し、社外人となった。

付き合いは変わらず続いていたけれど、蓮ニの前でメガネを掛ける事はなくなり、いつしか蓮ニと眼鏡の事も忘れてしまっていた。



その日、天気がよければ鎌倉にでも行こうと約束していたのだが、生憎の雨になってしまった。

窓の中から見ても窓を開けて見ても、空の様子は変わらない。

せっかくお洒落もしたのに・・・・一気にやる気がなくなってしまった。


「今日はもうゴロゴロする~!」と、ベッドの上に転がる私に、やれやれとでも言うように肩をすくめた蓮ニが、

「ではこれでも読んだらどうだ?」と1冊の本を差し出してきた。


それは私の好きな作家の文庫本。


そう言えば深夜の色々なランキングを紹介する番組でTOP3に入っていて、読んでみたいと言った覚えがある。

あれを覚えていて買ってきてくれたのだろうか・・・?




「最近ゆっくりと本を読む時間もないと言っていただろう?」

「時間の使い方が下手なもんで。」

「それは否定はしないが・・・。たまにはこういう休日もいいだろう。」




蓮ニも私も読書が好きで、学生時代はよく一緒に本を読んだ。

社会人になってからは会える時間が減った為、一緒にいるのに読書なんて時間がもったいなく思えてそういう事もなくなってしまった。


本を受け取ると蓮ニはもう1冊違う本を本棚から取り出した。

たぶん自分が読むための本だろう。


ベッドからもぞもぞと這い出して蓮ニの隣に座る。

学生時代を思い出し、懐かしさに頬が緩んで少し嬉しくなった。




「たしかに、たまにはこういう休日もいいね。」




ニコリと微笑めば蓮ニも唇に笑みを乗せ私の頭を優しく撫でてくれた。


それからの時間はあっという間だった。

本の世界に入り込めば周りの事は一切遮断される。

時々蓮ニの咳払いが聞こえたけど、文字を負う目が反れる事はなかった。


本を全て読み終えて時計を見上げると、すでに3時間が過ぎていた。

机の上には蓮ニが最初に読んでいた本が置いてある。

私が1冊を読む間にもう2冊目を読んでいるという事だ。


横目でチラッと見たけれど、かなり集中しているようで私の視線に気づく様子はない。

蓮ニの邪魔にならぬよう小さく伸びをした後、眼鏡を少しずらして瞼の上から眼球をそっと押さえた。


久しぶりに眼鏡を掛けたせいか目が重い。軽く抑えるだけじゃ治らないようだ。

これはマッサージした方がいいかもしれない。


瞼を押さえていた手を眼鏡のフレームに掛け、眼鏡をゆっくりと外した。


その時ふと視線を感じた。

昔何度も感じたあの視線を。


ハッと隣を見れば、こっちを見ていた蓮ニと目が合った。




「やっぱり蓮ニって眼鏡フェチなんじゃないの?」

「眼鏡フェチではない。」

「じゃぁなに?私の気のせいじゃないよね?いつも見てるよね?」




眼鏡フェチくらい今どき珍しいものでもないし、隠す必要もないように思うが、蓮ニは頑なに拒否をする。

それじゃぁ一体なぜ見ているのだと、長年の疑問を解決すべく蓮ニに詰め寄った。




「ねぇ。どうして見てたの?」

「その問いに答える前に俺も聞きたい事がある。」

「なに?」




眼鏡フェチと聞いて引かないか?なんて聞かれたらどうしよう?

もしそんなことを気にしているんだとしたら可愛すぎる!!なんて思っていたのだけど、蓮ニの『聞きたい事』は私の予想し得ない質問だった。




「眼鏡を外す時の表情はわざとなのか?」

「へ?眼鏡を外す時の表情?」

「いつも誘われているのかと勘違いしそうになる。」

「・・・・・・・はぁ!?」




「どうなんだ?」と聞かれ私は目をぱちくりさせるばかり。

すっかり立場は逆転し、逆に詰め寄られるハメになってしまったのだった。




眼鏡フェチだったわけじゃなくて、眼鏡を外す時の私の表情が、その・・・・いやらしく見えたそうで・・・・。

まさかそれで見られていたなんて思いもしませんでした。

もちろん私はそんなつもり全然ないですよ?

だけど蓮ニには誘っているように見えたそうなんですよね。


私が眼鏡を外すたび湧き起こる欲望を抑えるのが大変だったと聞かされて、恥ずかしいやら嬉しいやら・・・・。


え?どうして嬉しいかって?

だって、いつも冷静沈着の蓮ニが、あのポーカーフェイスの下で欲望に燃えてたなんて・・・ちょっと嬉しいじゃないですか。


でもそれを聞いてから他人の前で眼鏡を外せなくなりました。

その時の表情がどんな物か私にはわかりませんけど、蓮ニが気に入ってくれてるなら、彼にだけ見せたいですからね。


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第2弾は蓮ニでした。


眼鏡を外す時の表情がエロイ人ってたまにいますよね?

1度瞑った目を開く時、スーッと流し目になるっていうか・・・・。

あれ?ないっすか?ww