拍手用SS (謙也SS) | 肝っ玉かあちゃんのひとり言

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妄想の世界に逝っちゃってるヤツの戯言


1学期最後の終業式。


本当ならさっさと帰っている時間やけど、こういう日に限って日直。


最後の仕事の日誌を書いていると、窓の向こうのグラウンドから部活中の声が聞こえた。

空には太陽がぎらぎらと光っていて、想像するだけで暑くなる。


教室の中は程よく冷房がきいていて、こういう時、「私立でよかったな・・・・」なんて思う。


公立に行っている地元の友達は扇風機しかないって言ってたし・・・・。

この暑さの中で扇風機だけなんて、とてもじゃないけど勉強してられへんやろう。


そんな事を思いながらボーっと窓の外を見つめていると、

「ぼーっとしてんとはよ書けや!」と、額にペンの背が突き刺さった。


額でカチカチと音を立てるペンを払いのける。




「もう!痕つくやん!」

「もうついてるけどな。」




ケラケラと笑う謙也を睨みながら額をさすっていると、

謙也の視線がピタリと額にある私の手に止まった。




「な、何?」

「お前・・・手首から先は細いよな。」

「アンタ・・・・・・喧嘩売ってんの?」




まじまじと手を見ているから何事かと思えば、手首から先は細いやと!?

それって手首から先以外は細くないって事か!?


さっきの仕返しもかねてペンで額を突いてやろうとすると、

「お前それ逆やろ!芯の方向けんなや!」とあほみたいに慌てだす・・・・。


その必死な顔に少し気持ちがスッキリして、してやったりと笑って見せると

ホッとしたのか溜息をついた。



「信じられへんわ・・・・。デコに穴開くとこやった・・・。」

「アンタが無神経な事言うからやろ!」

「ちゃうやん!そういう意味やなくて・・・・」

「どういう意味よ!!」

「なんつーか・・・・女の手?」

「はぁ?」

「指とかめっちゃ細長いし・・・・・・綺麗やろ?」




綺麗!?


指が長くて綺麗やと今までも何度か言われた事があるけど、

まさか謙也の口からそんな言葉を聞くとは・・・・・!!


普段あほみたいにふざけ合う謙也にそんな事を言われて、なんとなく照れくさい。


けどここで、「ありがとう」なんて素直に言えるはずもなく、

恥かしさを誤魔化すように、可愛げのない言葉を口にする。




「き、綺麗かどうかはしらんけど・・・・・」

「?」

「料理できなさそうとか、なんもしてへん手やとか言われるし・・・。」




「言われるし・・・・」なんやねん!?


自分で自分にツッコんでしまう。

でもその先の言葉が続けられない・・・。


私なんでこんなに動揺してるんやろか?

謙也に「綺麗」と言われただけで何でこんなに胸がドキドキするんやろう・・・?


自分でもわからん胸の高鳴りに、顔が赤くなっていく。


それを見られないように「冷房下げてくる!」と腰を上げかけた。




「でも俺は・・・・」

「え?」

「お前の手・・・・・・好きやで?」

「・・・・・・は?」




中途半端に腰をあげた体勢のまま固まる私。


だって・・・・・今・・・なんて?

私の聞き間違いやろか?



『綺麗』に続いて『好き』?



呆然とした表情で謙也を見つめていると、自分が言った言葉の意味を理解したのか、

瞬時に顔が真っ赤になった。




「か、勘違いすんなや!す、好きって、手の事やで!!」
「わ、わかってるし!」

「ほんならなんでそんな顔赤いねん!!」

「それはアンタやろ!!」

「お、俺は赤ないわ!」




お互い赤い顔でギャーギャーと言い合う私達は、傍から見たらさぞおかしな光景やろう。


なんとも言えない雰囲気に、どちらからともなく顔を背けた。



「なんや汗出てきたわ・・・」と、そわそわと立ち上がり、

私が行こうとしていた冷房を下げに行く謙也をこっそり視線で追いながら、

息を吐き出し、そっと胸に手を当てる。



ドキドキと早い鼓動と、少し上昇した体温。

リモコンを弄る謙也の姿に、また少しだけ鼓動が早まった・・・。



涼しいはずの教室で、汗が吹き出そうなほどの暑さと、

謙也への微妙な気持ちの変化を感じた、夏の上午―――――――







 この暑さは夏のせい?

                (俺・・・・暑さで頭おかしくなったんやろか・・・?)

                     (そんなんいつもやろ?)

          (・・・・やっぱり勘違いやよな・・・・。お前相手にドキッとするなんて・・・・・

                          (えぇ!?)

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最初蔵で書いてたんですけど、包帯ネタで使っちゃったんで謙也で・・・。ww


謙也には似合わんセリフやとは思いましたが、そこは青臭さでカバー!

カバーできてんのかは不明ですが・・・・(苦笑)


先日私の手の写真をUPした時にたくさんの方に褒めてもらって

若かりし日の頃を思い出しました・・・。←


昔から手だけはよく褒めてもらったな・・・。ww