たしかにね。お見舞いになにが欲しいかって聞かれたから、
「果物がいい」ってメールしたよ？
でもさ・・・・普通に考えて、咳が酷いって言ってるのにさ、
コレは買ってこないでしょう････？
「なんでみかんなの？」
「柳先輩が風邪にはビタミンって言ってたんスよ！ビタミンといえばみかんっしょ！？」
そうか･･･。
赤也の脳内では、そういう構図ができてんのね。
ニコニコと俺すごいでしょ？とでも言いたそうに微笑む赤也に
文句なんて言えるわけもなく、「うん、そうだね。ありがとう。」と、笑顔を返す。
「俺剥いてあげますよ！」
「え？い、今は･･いいよ･･･。」
「遠慮しなくていいって！」
「いや・・・・遠慮じゃなくて････。」
どうしよう。みかんなんて食べたら確実に咳が止まらなくなる。
もともと器官がそんなに強くない私は、普段でもみかんなんてそんなに食べない。
本当にどうしよう･･･。
「赤也。今はみかん食べたい気分じゃなくて･･･。」
「え～！？せっかく俺が買って来たんすから食べてくださいよ！」
そ、そうだね。せっかく買って来てくれたんだもんね。
でもな・・・。
どうしたものかと頭を悩ませていたけれど、
考える時間も与えない速さでみかんの皮をむき終わった赤也が
白いスジがいっぱい付いたみかんを1房差し出してきた。
「この白いのに栄養あるらしいッスよ！」
「よく知ってるね。それも柳から？」
「違うッスよ！！それくらい俺でも知ってるんスから・・・・。」
しまった。機嫌を損ねてしまったか！？
拗ねたように口を尖らす赤也に、
「そ、そっか。私は知らなかったのに赤也すごいね！！」
なんて慌てて持ち上げる様な事を言ってみれば
単純な赤也は「へへっ。そうでもないッス。」と、嬉しそうに笑った。
こんな時、単純なヤツでよかったとつくづく思う。
だけどこれでみかんの刑から逃れられたわけじゃない。
ではあらためて････と仕切りなおすように姿勢を正した赤也が
「あーん」と口元にみかんを持ってきた。
ぐふ・・・。ここはもう覚悟を決めるしかない。
開いた口の中へ放り込まれた小さな粒。
ひと噛みすれば、果汁が溢れ出し、酸味と甘味が・・・・・甘味････？
「ゲホッ！ゴホッ・・・。ゴホゴホッ・・・・」
「だ、大丈夫ッスか！？」
「コホッ・・・す・・・・すっぱーい！！！」
ある程度の予測を立て、咽ないように慎重に食べたつもりだったけど
あまりのすっぱさに喉が刺激されまくりで咽返ってしまった。
驚いた赤也が私の体を起こし背中を擦ってくれたけど、
そんなもんじゃ咳は止まらない！！
「ゲホッ･･･なにこのすっぱさ･･･。」
「すっぱい方がビタミンが多いのかと思って1番すっぱそうなヤツ選んでもらったんすけど？」
「誰に！？」と怒鳴ろうと思ったけど、咳に邪魔され声にならない。
苦しさで目に浮かんできた涙を拭こうと、棚に置いてあるティッシュを取る為手を伸ばしかけた時、
ふと、みかんが入った袋が目に入った。
袋には私の家とは駅を挟んで反対方向にある果物屋の名前。
赤也はこのみかんを買う為にわざわざあの果物屋まで足を運んでくれたって事？
近所にスーパーがあるのに････。
やっと咳も治まってきて赤也を見上げると、心配そうな瞳で私を見ている。
そんな目で見られたらもう何も言えないじゃない･･･。
苦しい思いはしたけれど、赤也の優しさに胸が熱くなってきた。
「大丈夫････ッスか？」
「うん。もう大丈夫。ありがとう･･･赤也。」
きっと赤也には、何の「ありがとう」なのかは伝わってないだろうけど
それでも嬉しそうに笑うから・・・・・。
今度は赤也にも伝わるように、「赤也・・・大好きだよ」と囁いた。
お見舞いのみかん
（今度から、咳の人に柑橘類のお見舞いはやめた方がいいよ。）
（かんきつるいってなんスか？）
（帰って辞書を引け！）
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風邪引きシリーズ第3弾。
段々甘さがなくなってきてしまってます・・・よね？ｗｗ
おかしいな・・・。
赤也！！おい！！どうした！？（お前がどうした！？）
みかんは風邪の予防にはすごくいいらしいですが
咳の時にみかんダメ！！って私は言われて育ったんですよ。
みなさんはどうですか？
けっこう「そんなの知らない」って人が多かったんで
もしかして我が家だけ！？なんて。思ってしまいました。
次は甘くなるよう頑張るぞ！！