第一列島線および第二列島線は、1982年に鄧小平の意向を受けて腹心の劉華清提督打ち出したもので,85年の中央軍事委員会で決議された中国の防衛戦略です。
これらの防衛ラインは,日本列島の一部が含まれることから,当時問題となりました.

中国の海軍は、沿岸防備を行う程度の沿岸海軍でしたが、冷戦が終結してソ連が崩壊し、ロシアが中国との関係改善に動き国境問題が解決した結果、中国人民解放軍の課題は台湾問題となり,膨大な石油資源が存在する尖閣諸島と日中の排他的経済水域問題へと変化しました.このため,日本や台湾を支援する米国に対抗する海軍力を保有する必要性が出てきました.
ちなみに中国は、1992年に、尖閣諸島、西沙諸島、南沙諸島を中国の領土であると規定した「領海法」を施行しています.

当時の劉華清副主席が掲げた海軍建設のタイムスケジュールと現在までの進捗状況は以下の通りです.
「再建期」 1982-2000年 中国沿岸海域の完全な防備態勢を整備 →ほぼ達成済み
「躍進前期」 2000-2010年 第一列島線内部(近海)の制海確保。→2015年にずれ込む見込み
「躍進後期」 2010-2020年 第二列島線内部の制海確保。空母建造
「完成期」 2020-2040年 米海軍による太平洋、インド洋の独占的支配を阻止
2040年 米海軍と対等な海軍建設

第一列島線と第二列島線
図,第一列島線(左の赤線)と第二列島線(右側の赤線)の位置(クリックで拡大)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%AC%E4%B8%80%E5%88%97%E5%B3%B6%E7%B7%9A


第一列島線は、千島列島を起点に、北海道、本州、九州、沖縄、台湾(中華民国)、フィリピン、スラウェシ島、ジャワ島、スマトラ島にいたるラインを指します(図参照)。
この第一列島線の内側に,台湾や日本の尖閣諸島が位置し,これらの地域への侵攻を目標としていることが伺えます.

第二列島線は、伊豆諸島を起点に、小笠原諸島、グアム・サイパン、パプアニューギニア、オーストラリア西海岸に至るラインです(図参照)。
最近,中国が沖ノ鳥島周辺で海洋調査を行ったのは、この第二列島線が念頭にあったためと考えられます。

なぜ,中国の鄧小平が一党独裁体制崩壊のリスクを伴う改革開放政策を行ったのか?その答えとして第一列島線,第二列島線を完成させるためと考えると,とても合理的に解釈することができます.

個人的には,日本のミサイル防衛とF22Aラプターの導入に注目しています.日本のミサイル防衛が完成し,F22Aラプターが日本に配備されれば,中国側に対抗できる戦闘機は存在せず,2015年までの第一列島線の制海確保はまず困難になるでしょう.ミサイル防衛の開発と配備は,順調のようですが,F-22Aラプターの導入は,去年米民主党が否決したことからしばらくは困難と見られています.

また,現在,日本重視を打ち出している米共和党政権下での台湾や尖閣諸島への侵攻も考えにくいとみられます.しかし,米民主党政権は,前クリントン政権時代に駐日大使が,尖閣諸島は日米安保の対象外と明言していることから,石油資源の確保の観点から,中国が尖閣諸島へ侵攻する可能性はあるとみられます.よって,第一列島線の完成は,アメリカの政局も大きな要素となるでしょう.

現時点では,米国と対等な海軍力の保有は荒唐無稽なように思えますが,大手金融会社ゴールドマンサックスの長期経済予測によれば,2040年以降,米中のGDPは中国が上回ると考えられており,現在の軍事費の対GDP比率は,実質的に中国が上回っていることから,その可能性は十分にあると考えられます.

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http://ameblo.jp/yukikaze99j/entry-10063104162.html

参考サイト
第一列島線
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%AC%E4%B8%80%E5%88%97%E5%B3%B6%E7%B7%9A

中国の海洋戦略
http://www.worldtimes.co.jp/special2/china5/040816.html