6日目の1作目は、「海炭市叙景」を観ました
ストーリーは、
その冬、海炭市では、造船所が縮小し、解雇されたふたりの兄妹が、なけなしの小銭を握りしめ、初日の出を見るために山に昇ったのです…。プラネタリウムで働く男は妻の裏切りに傷つき、燃料店の若社長は苛立ちを抑えきれず、父と折り合いの悪い息子は帰郷しても父と会おうとせず、立退きを迫られた老婆の猫はある日姿を消したのです…。どれも小さな、そして、どこにでもあるような出来事です。そんな人々の間を路面電車は走り、その上に雪が降り積もります。誰もが、失ってしまったものの大きさを感じながら、後悔したり、涙したり、それでも生きていかなければならないのです。
というお話です。
この原作は、18作の短編からなるもので、その内の5作を選んで、映像にしたそうです。
日常の自然な人々の営みを、丁寧に映像に収めたような映画です。格話の主要人物以外は、函館の普通の人々に出ていただいたそうです。だって、なんだか、言ったら申し訳ないかもしれないけど、あまりにもブーちゃんみたいなホステスさんとかが出ていて、どう観ても俳優じゃないよなぁって感じなんですもん。あまりの凄い顔のアップに、噴出しそうになってしまいました。マジメな映画なので、大笑いしちゃダメだと思って、ガマンしました。でも、そういうところが、とっても身近というか、日常なんですよ。その顔を観ているだけで、なんとなく懐かしいような、温かいような、そんな気持ちが沸いてくる映像です。
谷村さんの演じていた兄弟の話は、仕事も無くなりそうだし先が見えないけど、でも2人で頑張ろうと初日の出を見に行くんだけど・・・という話で、現在の景気の悪さでたくさんの人が苦しんでいるというのを感じました。企業の上の方の人は良いけど、底辺の人間は、もう息が出来ないほど首を絞められているのだと訴えているようでした。
加瀬くんのエピソードも、自営業の2代目なのですが、仕事もだんだん上手く行かず、先代社長の父親からは文句を言われ、妻も協力的でなく・・・という辛い立場で、ここでも息苦しい生活を訴えていました。小林さんと南さんの話は、先の二つとはちょっと違い、夫婦問題を描いていました。
街中のボロ屋に住むお婆さんは、街が開発でどんどん新しくなっていく中で、一人、立ち退きを拒み、ネコと一緒に暮らしています。自分が死ぬまでは、ここに住みたいと話していて、とっても気持ちが伝わってきました。年を取った方に、いまさらどこかに移って新しい生活をしろなんて、無理ですよ。周りが目まぐるしく変わっても、そのスピードに付いて行けないんです。とても可愛そうでした。
最後の父親と折り合いの悪い息子の話は、この映画を総括するような話で、田舎の港町では暮らしていけないということを表していました。船で町を離れるのですが、港に立つ造船所のクレーンは、工場の廃止で撤去される予定だし、田舎の町は先が見えないというような感じが、うす曇の中の町の姿を映したカットでとても伝わってきました。
寒くて、どんどん荒廃していく田舎町でも、頑張って温かく暮らしていこうという人達の日常を描いていて、寂しいのと悲しいのと、ちょっと温かいのと、色々な思いを盛り込んだ作品です。
私はお奨めしたい映画ですが、日常を描いている作品なので、ハリウッドタイプの映画が好きな方には、お奨め出来ません。まったく種類が違います。この映画を観て、帰りに温かいラーメンでも食べて帰ろうという雰囲気の映画です。もうすぐ公開なので、ぜひ、楽しんでください。
