↑ 室生寺の十一面観音菩薩さま
真言宗では
聖（しょう）観音
千手観音
馬頭観音
十一面観音
准胝（じゅんてい）観音
如意輪観音
を六観音とする。
六観音は
六道輪廻（ろくどうりんね）＝６種の世界に
魂は生まれ変わりを繰り返す
とする思想に基づき、
六種の観音が六道に迷う衆生（私たち）を救う
という考えから生まれたもので、
地獄道＝聖観音
餓鬼道＝千手観音
畜生道＝馬頭観音
修羅道＝十一面観音
（まさにこの世は奪い合い争い合う、修羅道）
人道＝准胝観音
（この世は人道とは言えぬ）
天道＝如意輪観音
という組み合わせになっている。
地蔵菩薩や十一面観音菩薩は
一切のかよわき命
総てを救うまでは
この身、菩薩界に戻らじ
という誓願を立て、人間界へ下りた菩薩。
十一面観音菩薩の垂迹（すいじゃく）は
九頭龍
垂迹とは、神仏習合思想の一つで、
日本の八百万の神々は、
実は様々な仏（菩薩や天部なども含む）が
化身として日本の地に現れた
権現（ごんげん）であるとする考えである。
怒りの姿の化身が
不動明王
という説がある。
『地蔵十王経』が生み出されたことにより
閻魔大王の本地（本当の姿）が地蔵菩薩であるといわれ
閻魔と地蔵とを同一の尊格と考える説が派生した。
そして閻魔大王のみならず十王信仰も普及するようになった。
十王信仰の流れで、
不動明王の本地が十一面観音菩薩という思想がある。
十一面観音菩薩の脇侍として、
不動明王と
毘沙門天
を置くことも多い。
（写真は、平将門の胴塚がある延命院の毘沙門天像）
脇侍（わきじ・きょうじ）とは、
中尊（中央に位置し、信仰の中心となるほとけ）の
左右に控える菩薩や明王、天などをいう。
脇立（わきだち）ともいう。
中尊の教えを補佐、強化する役割といわれる。
十一面観音菩薩の
十一の顔の意味は
東西南北（四方八方）
天と地
すべての方向へ顔を向け
救済をするというもの。
それぞれに意味があるらしい・・・
（↑ 奈良の長谷寺の十一面観音さま）
おでこの上の立像は
化仏と呼ばれ
阿弥陀如来といわれている。
頭上の一面は
無明煩悩を断ち、
仏果、悟り、を得た表情といわれる。
前の三面は
慈悲菩薩面（じひぼさつめん）
正しく仏道をゆく者を助け、癒し、応援する表情。
向かって右三面は
瞋怒面（しんぬめん）
仏道を信じずに誹謗する者を戒め
仏道（正道）へと導く表情。
向かって左三面は
白牙上出面（ばくげじょうしゅつめん）
仏道にも人道にも背く外道を戒め
善行を薦める表情。
後ろの一面は
暴悪大笑相（ぼうばくだいしょうめん）
信心深いふりをしてる者や
上辺と内心が違う者を見抜き
笑い飛ばしている表情。
要するに、十一面観音菩薩は
ただ優しいだけじゃなくて
叱咤して人々を正道へと導く菩薩。
以前、奈良の長谷寺の十一面観音菩薩の
御足の部屋へ入った時
壁に、菩薩の３３の化身の姿が描かれていた。
様々な姿になって人々のそばへ行き
助けたり
癒したり
笑わせたり
諭したり
戒めたり
ギャフンといわせたりして
気づきへと導き
人々を救済しているというもの。
左手に蓮の花を挿した水瓶を持つ姿が有名だが
この水瓶は、
インドの僧が携行する水筒のようなもので
如意瓶ともいい、
人々のための功徳水が入っているという。
ワタシの考えでは
その水瓶は
与えることもできるし
汲むこともできる
満タンになることもなく
空になることもない
水瓶の中は宇宙のようなのだ・・・
宇宙の真理からなる知恵の花
十一面観音菩薩の真言
おん・まか・きゃろにきゃ・そわか
毎日１０８回お唱えすると、
以下のご利益があるとされる・・・
十種の勝利
病気にかからない
一切の如来に受け入れられる
金銀財宝や食物などに不自由しない
一切の怨敵から害を受けない
国王や王子が王宮で慰労してくれる
毒薬や虫の毒に当たらず、
悪寒や発熱等の病状がひどく出ない
一切の凶器によって害を受けない
溺死しない
焼死しない
不慮の事故で死なない
四種の果報
臨終の際に如来とまみえる
悪趣、すなわち地獄・餓鬼・畜生に生まれ変わらない
早死にしない
今生のあとに極楽浄土に生まれ変わる
というものだが・・・
これは、人間が考える
『欲』の象徴
でしかないでしょう（笑）
ご利益とは
いったい何ぞ？？？
真の幸福とは
いったい何ぞ？？？
早死が不幸ではない。
長生きが生き地獄な人もいる。
様々な経験を
逃げることなく積んで
仏の心に近づくために
人々を応援する
菩薩なのだ
