映画『チェンジリング』アンジー/アカデミー確当!!! | vivienne sato

映画『チェンジリング』感想


今やアカデミー賞の常連中の常連。アメリカの代弁者。もしくは同時代の代弁者であるクリント・イーストウッド御大。今年はアンジェリーナ・ジョリー主演の『チェンジリング』で参戦。『許されざる者』から映画監督として出発し、「年老いたガンマンの終わり」「西部劇の終わり」「映画芸術の終わり」を見事に顕わし、そこから本当の意味でイーストウッド劇場の「始まり」を世界に示した。 甘ったるいメロドラマ・マジソン群を終わりの位置から、上流階級のハバナ生活をひとつのスキャンダラスな証言から、ミスティック・リバーで過去の悲劇から更なる悲劇を、また硫黄島の戦争を一枚の写真と手紙から、、、、いまそこにあるモノ自身ではなく、そこにあるモノから・また人々の心に折り畳まれた増幅された感情ににって引き起こすモノ・埋もれた事実を丁寧に発掘する、、、、、そんな手法を取ってきた。

1928年、アメリカで実際にあった事件を元にしている。ある日母子家庭の母親が勤務中家を留守にしている間に小学生の子どもが忽然と姿を消す。数ヶ月後、警察の懸命な捜査により子どもは異なる州で見つけられる。そしてマスコミを呼んでの盛大な親子対面が行われるが、その戻って来た子どもは全くの別人だった。その場では警察の面子を取り繕うため演技をした母親だったが、警察に異議を唱え始めると彼女に悲劇が、、、。


アンジェリーナ・ジョリーは今回アカデミー賞主演女優賞にノミネートされている。アカデミー賞は必至だろう。撮影や音楽、演出は全てイーストウッドファミリーで特に冒頭とエンドロールはこれ以上ないくらい精緻な作りとなっている。物語と言っても、実際にあった話で映画が終わった現在もその話は終わっておらず、自由の国アメリカであろうとその闘いは地続きの問題であることが伺える。 色調は控えられ、かといって変に象徴的でもない。とても大人らしい映像。エンドロールでは見通しの良い交差点。そしてパースペクティブが利く通り。たくさんの車と歩行者は速度も方向もばらばら。無名のフレームアウトした人々にさえ人生があり、独自の物語がある。アメリカの良心。現代の良心を見た。


アンジーの手の演技、特に袖と手袋に挟まれたほんの少し見える手首に戦闘ヒーローモノとは異なる女性の強さを感じる。。