映画『おくりびと』 | vivienne sato
ヴィヴィアン佐藤オフィシャルブログ-090123_1253~0001.jpg

★映画『おくりびと』感想  超オススメ!!!現代の日本人の死生観(→豊かな生き方)。


本日、モッくん主演の『おくりびと』がアカデミー賞(2/22発表)外国語部門に見事ノミネートされた!今年に入ってから劇場で見た作品。前評判通り素晴ら しい出来で、脚本・演技・演出とどれも目を見張り、等身大の喜怒哀楽全てが込められていたわ。劇中、笑いあり涙あり、また笑いあり、、、そして涙あり。そして哀愁。この「喜怒哀楽」の繰り返しこそが人生そのもの。それらを人間が作って来た「都市」と「経済」と「習慣」とを「現代の生と死」を通して描き切っているわ!決して重苦しくもなく軽過ぎずもなく、日常の等身大の生活ではどれも当たり前の様に存在している。堅苦しいだけでは息が詰まり、時にはガス抜きとして冗談も交えそのリズムは絶妙。最後には何度も泣かされ笑わされて、クタクタになって爽やかな気も師で劇場を後にしたわ。


映画はオーケストラ団員の東京時代と納棺師を始める鶴岡時代。うだつの上がらない主人公は長年の夢でもあったチェロ奏者にはなるも、オーケストラは解散。残っているのは莫大な借金と失業。広末涼子演じる妻はどこまでも温かく見守ってくれる。。。 貰った来たタコは台所でも生きており、それを可哀想だと近くの河口に放流するがすでに死んでいる。東京ではタコの死や失業、借金、夢の敗北などくらい色彩が漂う。そして音の出ないチェロはそれ自体音楽の死体。もしくは鶴岡篇に稼ぐ仕事道具となる棺桶を示唆。


そして全てを引き払い夫婦で鶴岡へ。妻には内緒で納棺師の仕事を始める。最初は辛い、世の中では明るみには出ない仕事だと思っている主人公も、次第に社長(山崎努)の仕事ぶり・生き様に心魅かれてくる。納棺師という仕事に誇りを感じてくるが、そのとき妻は、、、。

庄内地方の自然と城下町の風景は美しい。佐々木(山崎努)の会社のテーブル上に見事に咲き誇るサボテンや北国とは思えない観葉植物の数々。そして劇中出てくるふぐの白子や比内鶏は生物が生きるため命を頂く行為を見事に現している。脚本が小山薫堂さんが手掛けているだけに、「食」から「生」を描くことで「死」を余りにも豊かに描いている。見事!庄内平野を流れる赤川は現在一時的に不景気な鶴岡シャッター商店街を映してはいるが、豊かな生命力に溢れ(タコが死ぬ東京の河と対比)、主人公の再生する生き様に見事に重なる。

主人公の死者に対して尊厳を与える事はそこから尊厳を与えられること。慣習は作法でもあり、納棺の儀式は茶道や華道の文化と重なる。

音楽はジブリ宮崎映画で有名な久石譲。『カルテット』という彼が監督したレアな作品を思い出す。

今回は『たそがれ清兵衛』以来のアカデミー賞ノミネートだけれどもどちらも山形県鶴岡というところが面白い。