対光反応 | きくな湯田眼科-院長のブログ

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横浜市港北区菊名にある『きくな湯田眼科』

光が網膜に当たると縮瞳しますが、これを対光反応と言います。


その経路は図のようになっています。



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網膜の視細胞である錐体と杆体で光は捕らえられ、光の情報はここで電気信号に変換され、双極細胞などの中間神経を経て網膜の神経節細胞へ伝えられます。神経節細胞の軸索が視神経となりますが、その数はおよそ120万と言われています。



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この軸索中を電気信号に変換された視覚情報は伝えられることになりますが、鼻側網膜よりの神経は視交叉で交叉し反対側に向かいます。耳側網膜よりの神経は交叉しません。このように半分の神経が交叉するので、これを半交叉と言います。(実際はヒトでは交叉線維の方が非交叉線維よりやや多く、53:47の比率とされています。)



視交叉の存在はすでにガレノスの時代に分かっていましたが、大半の哺乳動物で網膜神経が部分交叉することが組織学的に証明されたのは19世紀の終わり頃になります。スペインの著名な神経解剖学者Santiago Ramón y Cajal(サンチャゴ・ラモン・イ・カハール 1852 - 1934)は視交叉で神経が交叉することで、眼球の光学的な特性により生じた倒像を、反転することにより修正していることを指摘しました。



両眼で1本の矢を見るとき、左の図のように交叉していないと視覚野では矢先が矢尻につながって見えることになり矛盾を生じます。右の図のように交叉することにより矛盾がなくなります。



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大半の動物は視交叉で完全交叉になっていますが、類人猿、ネコなど眼球が正面にあり、両眼視を得る動物は半交叉になります。下の図はいろいろな動物での交叉の様子を示しています。



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ほ乳類でもウサギのように目が横にあり両眼視の部分が殆どない動物では、視交叉は全交叉となっています。



網膜神経節細胞軸索である神経繊維は視神経乳頭に集まり、ここで90°屈曲し篩板で強膜を貫き眼球より出て、視神経となります。網膜内では神経線維は髄鞘を被っていませんが、視神経になった所で髄鞘を被り有髄神経となり、太さが約倍になります。これは神経伝達速度を上げるためと考えられます。



黄斑部網膜よりの神経線維を乳頭黄斑線維と呼びますが、視力、色覚に関係する主として錐体からの情報を伝える線維で、数が多く視神経のほぼ1/3を占めています。その走行は乳頭部では耳側にありますが、視交叉付近になると視神経の中央に位置するようになります。



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また、網膜の耳側、鼻側よりの神経線維の走行は視神経内で分離されており、図のようになっています。(この走行の仕方は、様々な視神経疾患での視野異常を説明するものとなり重要です。)



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こうして色や形、明暗や動きなどの大半の視覚情報を伝える視神経線維は外側膝状体でシナプスを持ちます。外側膝状体より出た2次神経は視放線となり、側脳室の部分で屈曲し(Meyer's temporal loop)、後頭葉の視覚中枢へ投射します。



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対光反応に利用される光情報はやはり視神経を伝わりますが、神経線維は外側膝状体を経ずに、上丘腕をへて中脳視蓋前核に至ります。ここからの神経線維は半分ずつ同側と反対側(交叉して)のE-W核に至ります。



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E-W核からの神経は副交感神経で動眼神経の一部となり、最終的に瞳孔括約筋に至るのは、以前記載したとおりです。こうして左右どちらかの目に届いた光は、両眼の瞳孔を閉じることになります。



完全交叉のウサギでは下図のように、対光反応は片眼にのみ現れます。また、ネコでは交叉線維が多いため、反応に左右差を生じます。




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