水沢に向かう途中、ちょっと素敵な景色を見つけたので、車を停めて写真を撮った。
見事な花菖蒲が農家の脇の畑に植わっている。濃い紫のもの、白いもの色とりどりのものが梅雨空の下に咲き誇っていた。
そんな寄り道ばかりをしていたので、水沢に着いた頃には、正午10分前。どのうどん屋も観光バスが入ったりで店内は満員状態だった。30分後に予約をして、先に水沢観音を訪れることにしたのだが、駐車場に着いてみると、ぽつりぽつりと大粒の雨が降り出した。
―これじゃ傘がいるわね?
それぞれ折り畳み傘を開いては境内の中に消えて行った。
こちらの五徳山水澤寺は、坂東三十三番札所中、第十六番目にあたる。推古天皇の頃に創建された千三百年もの歴史のある寺だ。そして水沢うどんとは、この寺の参拝客に振る舞ったのがそもそもの起源と言われている。
ちょうど正午ごろ誰かが鐘を撞いた。
けぶ
正午打つ鐘や六月雨煙る 悠人
鐘の辺りで休憩したり、輪廻六道を歩いたりして雨の止むのを待った。
雨に煙りつつも榛名山が見えた。山の天気は変わりやすい。雨が落ち着いたので、近くにある万葉歌碑を見に行った。今回はどうも句碑・歌碑に縁があるらしい。
いで
伊香保ろのやさかの堰堤に立つ
虹の顕ろまでもさ寝をさ寝てば
*巌秀(いかほ)の八坂の堰堤にあざやかな朝虹が立つ
その虹のように二人の仲が知れてしまってもかまわない
それまでも共寝をしたならばどんなにかよかろう
さあ寝よう 寝ましょう
という意味だそうだ。
万葉歌というのは、恋を歌ったものが多い。昔の人々は素朴な愛情を歌に託した。それは今も変わってないのではないか?人は恋をし愛を育むから新たな生命も宿るのである。そう思うと恋愛はやはり人の性(さが)の原点と言えるだろう。
あおばずく
万葉に恋歌多し青葉木挽 翠
ちょうどいい時間になったので、水澤亭へと向かった。