昨年も同じ道を走っていた。去年の空はもっと明るく「梅雨晴間」という語がぴったりとおさまった。上州の山々が去年は見えていたのに…今年は垂れ込めた雲に遠景が見えない。ただ関東の平野部の広がりだけが見えたに過ぎない。
ふと詩が思い出された。
…まだ上州の山は見えずや…
朔太郎の詩だ。
上州の人にとって、この詩は思い入れのある詩だと思う。「帰郷」詩碑があちこちにある。
そのくだりは確かこうである。
わが故郷に帰れる日
汽車は烈風の中を突き行けり
ひとり車窓に目醒むれば
汽笛は闇に吠え叫び
火焔(ほのお)は平野を明るくせり
まだ上州の山は見えずや
これから訪れる上州榛名の天候は…?
皆は無事に着けるだろうか?
待ち合わせの高崎駅に向かい車のアクセルを踏んだ。