頭痛薬が頭痛の原因?? | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

はじめに


 信じられないかもしれませんが、皆さんは、頭痛の際に服用される”頭痛薬”が頭痛の原因となることをご存じでしょうか。 


 これまで、痛みがあれば、まず市販の鎮痛薬を、これでダメなら病院での鎮痛薬NSAIDs、これで効かなければエルゴタミン製剤を、これでも効かなければトリプタン製剤が勧められてきました。このように段階的に、”鎮痛薬”の服用が推奨されてきました。
 そして、最後の”砦”とされるトリプタン製剤は片頭痛の”特効薬”とされてきました。
 このように頭痛治療の場面では、各種の諸々の薬剤によって、ただ単に”頭痛という痛み”さえとれば、これで解決したと安易に考えられてきました。
 

 しかし、頭痛の際に服用される頭痛薬が頭痛の原因となることから、病院で処方される”おくすり”だからといって決して安心してはなりません。
 この点が、慢性頭痛を「セルフケア」していく上で重要なことになってきます。


 そのため、まず、市販の鎮痛薬を日常的に服用しておればどのようになるかを知っておくことが大切になってきます。


市販の鎮痛薬の問題点


 ある頭痛専門医の方は、市販の鎮痛薬の服用の問題点を以下のように説明されます。


 片頭痛の起こったときに、一般的には市販の頭痛薬を使う人が多いと思います。
 市販の頭痛薬や痛み止めの大部分は”みかけの痛み”のみを取り払い、水面下で起こっている脳の神経細胞の興奮症状を置き去りにしています。
 当然、毎回の片頭痛発作のたびに起きている脳の血管周囲の炎症に関しても放置されたままになっています。
 この興奮状態の放置により、片頭痛の回数や程度がだんだんとひどくなってきて、市販の頭痛薬の用法や用量の規定範囲を超えるようになってきたり、飲む回数が増えてきたりします。
 すぐに、頭痛専門の医師に相談するのが一番いいと申されます。このような患者さんに対して、頭痛専門の外来ではトリプタン製剤と呼ばれる片頭痛治療薬が処方されます。
 まず、トリプタン製剤の説明をしておきましょう。この薬剤は市販の鎮痛薬とは異なり、片頭痛発作の際に脳の血管周囲に張り巡らされた三叉神経から、炎症蛋白が放出されるのをブロックすると同時に、膨れあがった脳の血管を元の大きさに戻す作用を持ち合わせる、いわば根本から片頭痛を断ち切る薬であるといえます。
 水道の蛇口にたとえるとわかりやすいでしょう。
 片頭痛とは、脳の血管の周りに、水道の蛇口からジャージャーと炎症物質を含んだ水がばらまかれている状態です。たいていの市販の頭痛薬(アスピリン=アセチルサリチル酸:製品名バッファリンAをのぞく)は、このように水が出っぱなしになっているにもかかわらず、その下で水を拭き取る雑巾のようなものです。いくら、早くきれいに拭き取ろうとしても、大元の水道の蛇口からは水が出っぱなしの状態であり、頭痛薬である雑巾は何枚も必要になります。そして、やがて雑巾もボロボロになって拭けなくなってしまうのです。
 これは、市販の鎮痛薬を規定範囲を超えて何度も飲んでいる間にだんだん効かなくなり、そのうち飲む日数が徐々に増えていき、しまいには毎日頭痛薬を飲むような状況に陥ってしまうのと同じです。
 これに対してトリプタン製剤は、炎症の水が出っぱなしになっている水道の蛇口を閉めてしまうことにより、片頭痛の痛みを根本から断ち切るー・・そう考えていただければ、理解しやすいでしょう。
 ここで大切なことは、この蛇口を閉めるのに時間がかかってはいけない、ということです。水浸しになってから蛇口を閉めても、炎症の水が時間とともに乾くのを待たなければ、痛みは取れないからです。
 したがってこのトリプタン製剤を飲むタイミングは、何となく痛くなってきてから30分以内だと非常に効きがよく、患者さん自身がベストタイミングを習得する必要があります。 しかし、心配はいりません。片頭痛持ちの女性は聡明で頭がいいため、何となく片頭痛が起こりそうな肩こりがしたり、生あくびが出たり、また何となく異様な空腹感が出てくる片頭痛の前段階の予兆期を、十分に学習することも可能です。
 トリプタン製剤をタイミングよく飲むことが出来れば、大元から炎症を起こす蛋白がばらまかれるのを防いでくれ、片頭痛との付き合いを快適にしてくれます。
 また、トリプタン製剤は、不必要に脳の血管が炎症で損傷することも防いでくれるため、結果として、将来、脳梗塞に陥ることをある程度防いでくれることも明らかになっています。

 このような神経の炎症物質がばらまかれ、脳が片頭痛のたびに異常な興奮を繰り返すことを放置していると、脳の血管損傷の他にも、将来、よからぬことが起こるのです。
 それは、歳を取って片頭痛の痛みを忘れた頃に、突如襲ってくる、しつこいめまいや耳鳴り、さらには性格の変化です。


 片頭痛の発作のたびに脳が異常な興奮を繰り返していると、歳を取ってからは脳がちょっとした刺激で簡単に興奮するようになり、さらには常時、興奮状態が続くような状態に陥ってしまいます。このために、めまいや耳鳴りなどの症状が出るようになるのです。
 めまいは片頭痛のように吐き気を伴い、しかし長くとも3日は続かず、また体を動かすと強くなるなど、頭痛がしない以外は片頭痛と同じような症状を呈します。
 さらに、脳が常時興奮するような状態になると、耳鳴りが止まらなくなります。この耳鳴りは、耳に異常があって起こるのではなく、大脳にある側頭葉という、聴覚の中枢のある部分が興奮することによって起こる症状で、正確な医学用語では「頭鳴」といいます。
 このような状態になってからでも、脳の興奮症状を抑えるような抗てんかん薬を服用することで、ある程度は治療可能です。しかし、長年の間にこびりついた”お焦げ”をはがすには、相当時間がかかりますし、完全に取り払うことは不可能なことも多いです。
 このような結果に至らなくするためには、頭痛は単に痛みを抑えればよい、もしくは頭痛は我慢すべき病だという間違った考えを捨てるべきです。


 このように頭痛専門医の一部の方々は、片頭痛に対して市販の鎮痛薬で対処するのは”不適切”であり、トリプタン製剤を使うべきとされます。こうした論点は、トリプタン製薬メーカーの薬を売らんがための考え方であることを如実に示しています。
 もっと念頭におくべきことがあるはずです。
 少なくとも、市販の鎮痛薬そのものの弊害について述べることはありません。

 

 順序がちょっと逆になりましたが、専門家は、以上のように片頭痛の場合は、トリプタン製剤を必ず服用すべきであり、市販の鎮痛薬でごまかすべきではないとされます。
 それでは、専門家が片頭痛の特効薬とされるトリプタン製剤とはどんなくすりでしょうか。この点を説明しておくことにします。


トリプタン製剤はなぜ効くのか


 トリプタン製剤が片頭痛に効果があるのは、頭痛が起きる仕組みの根幹部分に作用しているためです。片頭痛にはセロトニンという物質が大きくかかわっています。セロトニンは神経伝達物質のひとつで、感情のバランスを安定させる役割を持ち、血管を収縮させます。ストレスなど何らかの理由でセロトニンが分泌され、収縮した血管は、役割を果たして減少するにつれて今度は拡張します。
血管が拡張することによって血管に絡みついた三叉神経が刺激され、頭痛が起きる、というのが一つ。
 さらに、三叉神経が刺激されると、サブスタンスPやCGRPなど炎症を起こす物質が分泌され、血管を刺激して痛みが出てくる、というのが一つ。
 この二つが片頭痛が起きるメカニズムです。
 このように血管の収縮と拡張に大きく影響しているセロトニンですが、トリプタンという薬は、セロトニンと同じような作用を持っています。そのためセロトニンの代わりに血管を収縮させ、拡張によって三叉神経が刺激されるのを防ぎます。
 さらにセロトニンは三叉神経に取りついて、痛み物質のサブスタンスPなどが分泌されるのを抑制する役割がありますが、ここでもセロトニンの代わりにトリプタンが三叉神経に取りつき、サブスタンスPなどの分泌を抑制して痛みが出るのを防ぎます。
 このようにトリプタンは脳の中でセロトニンとして働き、血管を収縮させ、サブスタンスPなどの分泌を抑制する、という2つの役割を果たすことにより、片頭痛の起きる原因そのものを排除します。つまりトリプタンは、片頭痛という病気のより本質に近いところに作用して痛みを取るため、効果が高いというわけです。
 このように血管の収縮と拡張に大きく影響しているセロトニンですが、最初の引き金となる「セロトニン」は”生理活性物質”としての作用です。片頭痛発作時には、「脳内セロトニン」が不足した状態にあります。トリプタンという薬は、脳内セロトニンと同じよりに、血管には1Bという鍵穴があり、トリプタンはこの鍵穴に作用して、血管を収縮させ、拡張によって三叉神経が刺激されるのを防ぎます。
 さらに血管の周囲から「痛み物質」が、シャワーのように血管に降り注いで、血管の拡張と炎症が起こっており、シャワーには1Dという鍵穴があって、トリプタンはこの鍵穴に作用して、「痛み物質」の放出をとめます。ここでもセロトニンの代わりにトリプタンが三叉神経に取りつき、サブスタンスPなどの分泌を抑制して痛みが出るのを防ぎます。


 トリプタン製剤が出る前に使用されていた鎮痛剤や市販の鎮痛薬は、本質的な痛みの部分に作用しているのではなく、痛みの伝達を途中でブロックして感じなくしているだけです。
 そのため、痛みが強いと効果がなかったり、薬を飲んだときには少し良くなっても、しばらくして薬の効果が薄れてくるとまたすぐに痛くなったり(痛みはずっと続いているため)することがあります。


 基本的に、片頭痛発作時には、脳内セロトニンと呼ばれる神経伝達物質が減少あるいは機能が低下しており、片頭痛発作の時に、脳内セロトニン様作用をもつトリプタンを投与することによって、機能低下状態に陥っている脳内セロトニンをバックアップしているだけです。

 

 「脳内セロトニンと呼ばれる神経伝達物質が減少あるいは機能が低下」は、あくまでもミトコンドリアの機能低下によって引き起こされた結果に過ぎません。トリプタン製剤で痛みを無くしても、「ミトコンドリアの機能低下」は厳然として存在しています。
 要するに、トリプタン製剤は謂わば”鎮痛薬”に過ぎないということです。


 そして、片頭痛発症の根幹には「酸化ストレス・炎症体質」というものが存在し、このために、活性酸素や遊離脂肪酸が過剰に産生されやすく、このため血小板凝集が引き起こされ、これが引き金となって血小板から”生理活性物質”であるセロトニンが放出されることによって、片頭痛発作につながっていきます。
 現在では、このように、神経伝達物質である「脳内セロトニン」の低下を補填するためにのみ片頭痛治療の主眼が置かれ、トリプタン製剤が第一選択薬とされています。
 しかし、トリプタン製剤によって痛みだけを抑制していますと、根幹にある「酸化ストレス・炎症体質」はさらに増悪してくることになり、慢性化に繋がってきます。


 本来、片頭痛治療の焦点は、「脳内セロトニン」をいかにして増やすか、さらに、「酸化ストレス・炎症体質」をどのようにして改善させるかに置かなくてはなりません。


 現在のトリプタン製剤は患者のわずかに50~60%だけしか効果が見られず、心疾患のある患者や脳梗塞の既往のある患者では使うことができません。しかも、それらは根本的な治療薬ではない(片頭痛を根治させる薬剤ではない)ため多くの場合頭痛は24時間以内に頭痛が再発する傾向があります。このため、服用回数が増えてくることになります。


 問題は、このような片頭痛に対して、市販の鎮痛薬を服用することでの問題点とは、別の重大な問題があります。それは・・


 日常的に感じる極く軽度の頭痛に対して、市販の鎮痛薬を繰り返して服用することによって、ミトコンドリアの機能を低下させ、さらに脳内セロトニンを低下させることによって薬剤乱用頭痛を併発させてくることになります。市販の鎮痛薬という”薬剤”が原因となった「後天性ミトコンドリア病」を作る典型例を示していることになります。
 ここにミトコンドリアの活性低下という”遺伝素因”があれば、当然のこととして片頭痛を発症してくるということです。


市販の鎮痛薬とは


 ところで、市販されている頭痛薬は解熱鎮痛薬だけです。市販または薬局で購入できる解熱鎮痛薬は、厚生労働省が認可した以下の薬剤を組み合わせたものです。
 代表的なものは、アスピリンやアセトアミノフェンですが、イブプロフェン、イソプロピルアンチピリン、エテンザミドという薬剤もよく使われます。
 また、少し眠くなる作用を併せ持つ解熱鎮痛薬(催眠鎮静薬)も市販が認可されています。この範疇に入る薬剤には、ブロムワレリル尿素、アリルイソプロピルアセチル尿素が挙げられます。これらの成分は病院でも用いられるものですが、成分自体は変わりありません。こういった薬剤が合剤となっています。
 合剤とは、異なる薬を混ぜて、ひとつの薬にしたものです。風邪薬のカプセルにはいくつかの色の薬が混ざっていますが、このような違う成分のものを一つにまとめたものが合剤と呼ばれます。
 例えば、バファリンはアセチルサリチル酸と胃酸を中和する成分の合剤ですし、ノーシンやセデスはアセトアミノフェン、エテンザミド、カフェインの合剤です。また、ナロンはイブプロフェン、エテンザミド、ブロムワレリル尿素、カフェインの合剤です。ナロンエースも実は内容は同じものです。
 つまり、市販の解熱鎮痛薬は認可された薬剤の数種類を製薬メーカーによって、さまざまな割合で調合し、合剤化しただけです。また、これらの薬剤と他の咳止め、去痰剤、鼻水やくしゃみを止めるための抗ヒスタミン薬などをあわせたものが風邪薬として販売されています。
 催眠鎮静剤や抗ヒスタミン薬は眠気を誘います。ですから、それらの成分が入っている鎮痛薬や風邪薬などを内服すると眠くなります。「運転には注意してください」と薬剤師さんが注意を促したり、薬の注意書きに記載されています。
 また、「5日以上の内服は控え、症状が改善しないときには医師に相談」とも記されています。これは、薬物乱用頭痛を防ぐための重要な記載ですが、読み飛ばされることがほとんどです。何年も痛み止めのお世話になっている方がどんなに多いことでしょう!
  市販薬は安全性を考慮して、医療用医薬品よりも有効成分の含有量が少なくされていることが多いのですが(半分~3分の1程度の量)、用量や使用方法を誤るとリスクもあります。
 添付文書をよく読み、「この薬を使用してはいけない人」に該当しないかを確認し、決められた用量・用法を守って服用しなくてはなりません。
 「医療用医薬品よりも有効成分の含有量が少なくされている」ということは、効きめに問題があるということで、これが飲み過ぎに繋がるということです。
  ここにジレンマがあることを認識しておかなくてはなりません。


 このような市販の鎮痛薬ですが、これらの鎮痛薬には、大半のものはアセトアミノフェン、とカフェインが含まれています。皆さんがよくご存じのカロナールが代表的なものです。このカロナールは、現在では発売中止となったセデスGの後釜です。
 

 セデスGは私の片頭痛時代にはいつも愛用していた程、麻薬並みの鎮痛効果がありました。セデスG中止後は、これに代わって”SG配合顆粒”となりましたが、これは以前のセデスGと比較すれば、何も効かないというのが私の感想です。これに類似したものがカロナールです。

 これも同様で、大して変わりはないようです。これは”十分な薬効量が含まれていない”ためです。こうしたことから、平成27年2月からアセトアミノフェンを1錠中500mgが含まれるものが発売されるようになりました。私も片頭痛の患者さんに試して頂きましたが、従来のものよりは格段に効果があるとのことでした。こうしてみますと、”1錠中500mg”が鍵を握っているようです。しかし、皆さんが購入されるものには、このような有効量は含まれず、大半は、この半分以下しか含まれておりません。こうしたことから、服用しても服用しても効果がないため、つい錠数が増えてくることになります。これらにはカフェインが同時に含まれますので、カフェイン中毒になるため、薬剤乱用頭痛を作ってしまうことになります。
 

 市販の鎮痛薬の大半は、カフェインが含まれています


 そして「市販の鎮痛薬」の大半のものにはアセトアミノフェン、とカフェインが含まれています。しかし、皆さんが購入されるものには、頭痛を完全に治すだけの有効量は含まれず、大半は、この半分以下しか含まれておりません。こうしたことから、服用しても服用しても効果がないため、つい錠数が増えてくることになります。これらにはカフェインが同時に含まれますので、カフェインの摂取量が過剰になってきます。


 カフェインには鉄分や亜鉛などミネラルの吸収を阻害する性質があります。

 
 カフェインは鉄分の吸収を阻害しますので、貧血気味の女性、貧血の人は、せっかく他で鉄分を補ってもカフェインのせいで鉄分吸収がうまく行われないことがあります。
 その他にも体から亜鉛、カリウム、カルシウムなどのミネラル、ビタミンCやB群を奪うことが知られており、このためエネルギー代謝を始め、多くの代謝に支障がでます。
 またカフェインの過剰摂取(1日300mg以上)はホルモンバランスを崩しますので、こちらも様々な影響を及ぼします。
 コーラ類や紅茶にはインスタント・コーヒーと同じくらいカフェインが含まれていますし、緑茶、ココア、チョコレートなどにも含まれます。市販薬に多量のカフェインが含まれている場合もあります。
 このために知らず知らずのうちに、自分が思っている以上にカフェインを摂ってしまう状況があります。カフェインは有効な部分ももちろんあるのですが、摂りすぎには注意した方がいい成分、ということです。
 そのいい例が、カフェインは頭痛を抑える働きがあるのですが、飲みすぎると逆に頭痛を引き起こす、という作用です。
 鎮痛薬にはかなり大量のカフェインが入っていますので、急激に血管が収縮する代わりに効き目が切れたときには急激に拡張し、その反動でまた痛くなります。痛くなれば薬を飲む、一瞬は良くなっても、また反動で痛くなる、また飲む、と、これも悪循環です。
 うまく摂り入ればいいのですが、過剰になると毒となります。注意したいものです。
 このように知らず知らずのうちに「カフェインの過剰摂取」になっています。
 このため、カフェインの過剰服用は、以下のような機序で「ミトコンドリアの機能を悪化」させ、「脳内セロトニン合成の低下」を引き起こすことになります。


 とくに、片頭痛は若い女性に多いのが特徴です。
 

 女性は月経の出血により鉄分が少しずつ失われていくことで鉄欠乏性貧血になる人が多く、20代、30代、40代と年齢が高くなるにつれて貧血の人が増える傾向にあります。40代になると女性の約3割が貧血になっています。
 体内で鉄が減少すると、貯蔵鉄であるフェリチンが使われ減っていきます。フェリチンが不足すると血液中の鉄分も徐々に不足し、最後にヘモグロビンが減少し貧血が起こります。
 貯蔵鉄のフェリチンの理想値は100~300 で、男性の99.9%はフェリチン100以上です。 50歳以上の女性の80%はフェリチン100以上です。
 しかし、15~50歳女性の80%はフェリチン30以下の鉄不足で、40%はフェリチン10以下の深刻な鉄不足です。

 
 鉄不足ですと電子伝達系の機能が低下し、十分なATPが産生できません。
 このように、鉄不足はTCAサイクルや電子伝達系での反応が進みにくいため、エネルギー不足で疲れやすい、強い冷え症などの症状が発現し、また脂肪が燃えにくくなります。
 鉄は、ヘモグロビンの材料になるだけではなく、各細胞のミトコンドリアにおけるエネルギー代謝の触媒のような働きをします。
 このように、カフェインの過剰摂取は、女性の場合、「ミトコンドリアの機能」に影響を及ぼす可能性が高くなります。男性の場合にはそうでもないかも知れませんが・・


 さらに、亜鉛が減少すれば・・
 

 亜鉛は必須ミネラルのひとつであり、細胞の生まれ変わりを手助けする重要な成分で、アミノ酸と結合することでたんぱく質構造を安定的に保ちます。また体内の多くの酵素や免疫など、重要な働きに関わっているため、欠乏すると健康上さまざまな不都合が生じます。また、コラーゲン合成に関わるため、髪や肌を美しく保つのにも欠かせない成分です。 現代人には不足しがちですが、健康維持には欠かせない栄養素だといえます。
 亜鉛は脳内セロトニン合成の過程において必要不可欠のものとなっています。
 「脳内セロトニンを増やす」ためには、ナイアシンたっぷりの食事をとり、あとは補酵素として使われるビタミン類やマグネシウム、亜鉛、鉄などもしっかりとるように心がけなければなりません。


 このように市販の鎮痛薬を飲み過ぎはカフェインの過剰摂取に繋がり、「ミトコンドリアの機能」を悪くさせ、「脳内セロトニンの低下」を引き起こすことになります。

 
 また、市販の鎮痛薬のなかには、最近は少なくなったようですが、アスピリンを含むものがあります。アスピリン(アセチルサルチル酸)は、肝臓で代謝されてサルチル酸という強い酸に分解されます。サルチル酸は、ミトコンドリアが代謝物を取り入れる小さな穴を破壊します。その結果、ミトコンドリアはエネルギー代謝ができなくなり、最終的に死滅してしまいます。頭痛薬や風邪薬の安易な服薬は、ミトコンドリアの働きをさらに悪くさせます。こういったことから、緊張型頭痛の状態で、アスピリンを含んだ鎮痛薬を頻繁に服用していますと、片頭痛への移行を早めることになります。片頭痛の段階での服用は、その鎮痛効果を悪くさせ、結果的に効かなくなります。


 このような市販の鎮痛薬でなく、人によっては風邪薬を常用される場合もあります。この理由は、”咳止め”を目的としたリン酸コデインが風邪薬に配合されており、オピオイドという麻薬のような成分が含まれるため、”オピオイド乱用頭痛”となってきます。


病院で処方される”頭痛薬”


 病院で処方される非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)があります。最近では、市販薬としても販売されています(ロキソニン)。必須脂肪酸のオメガ3とオメガ6の摂取バランスに問題があれば、その効き目を十分に引き出すことができず、つい服用回数が増えることになって薬剤乱用頭痛を作ることになります。


 現在のトリプタン製剤が販売される以前は、エルゴタミン製剤が片頭痛治療薬の主流でした。エルゴタミン製剤は前兆のある片頭痛の場合、制吐剤をうまく併用することによって抜群の効果を発揮していましたが、問題は前兆のない片頭痛の場合、服用のタイミングが極めて難しく、患者さんはつい”先手””先手”で服用せざるを得なくなって、知らぬ間に過剰服用となって薬剤乱用頭痛を引き起こしていました。
 現在では、エルゴタミン製剤はクリアミンとして残っておりますが、クリアミンの効能書きには、”頭痛治療薬”と銘打たれ、緊張型頭痛にも片頭痛にも保険適応となっていることから、一般開業医は頭痛診断がどうであれ、安易に処方され、極端な場合は1日3回毎食後、延々と処方され、薬剤乱用頭痛を量産させていることも忘れてはなりません。


 そして、現在のトリプタン製剤ですが、片頭痛の場合、効くひとには麻薬なみの絶大な効果を発揮するため、つい飲み過ぎにつながってきます。トリプタン製剤は、大半は有効時間が短いため、片頭痛発作の持続時間が長いと、1回の服用で頭痛を抑制できずに、服用回数が増えざるを得ないという宿命にある薬剤で、市販の鎮痛薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、エルゴタミン製剤より以上に ”薬剤乱用頭痛を引き起こしやすい薬剤”とされていますので注意が必要です。

 


 痛みとは、そもそも、体が、異常を私たちに知らせるために発するものです。


 もし、人間に痛みというものが無ければ、発病にはなかなか気づかず、気がついたときには、もう手遅れということばかりになってしまうでしょう。
 痛みは、大事なサインであり、警報なのです。痛みの根本原因を突き止められず、元々の原因の是正もせず、痛みだけを和らげる頭痛診療は、警報の電源だけ切って、それでよし、とするものです。警報が知らせる深刻な事態は、そのまま放っておくのですから、ますます悪化してしまい、結局のところ「薬剤乱用頭痛」に至ってしまいます。
 たとえば、火災が起きたときの火災警報が、痛みに当たります。火災警報だけを止めてどうするのかということです。頭痛の大半を占める筋肉が原因の緊張型頭痛では、筋肉がもうこれ以上、無理できないというので頭痛という警報を出しているのです。この警報だけを止めると、筋肉にはさらに無理な力が加わって、治すことがますます困難になります。

 近年は、ペインクリニックという、痛みをとることを専門にした診療科もあります。また、一般の病院ではブロック注射がよく行われています。
 適切な治療をすれば治るはずの病気に、ブロック注射を施すと、それ以上無理が出来ず働けなくなった筋肉に痛みがなくなるために、さらに無理をかけて、筋肉の状態はより重症となり、治しにくくなります。
(緊張型頭痛は中には、筋肉が原因でない精神的な要因が関与しているものが存在しますが、これは脳内セロトニンの低下によって起きてくるものです)


  それでは、片頭痛の場合は、何のための危険信号なのでしょうか?
 

 片頭痛は、何らかの引き金により、最初に脳の一部に小さな興奮が起こり、徐々に周囲に拡大します(閃煇暗点など)。そのままでは脳に障害が起こります。そこで、脳周囲の血管が拡張し血流が増加します。脳に酸素と栄養を供給している血管が、脳への架け橋のグリア細胞を介し脳を守ると考えられます。脳の血管拡張は強い痛みを起こしますが、脳の障害を必死に守り、また危険信号を発しているとも考えられます。
 先程も述べましたように、片頭痛の場合、一般の鎮痛薬で痛みを抑えていると、一部の脳の活性が高まり、そこにつながる血管が異常拡張して、痛みが生じ、血管の異常拡張がさらに脳の活性をもたらし、それが再び血管の異常拡張へとつながり、つまり、悪循環が終わらなくなると宣われ、それによって常に片頭痛がある状態になり、血管の拡張が繰り返されると、血管自体に炎症やむくみが残って、さらに頭痛を起こしやすくなるとされます。


 こういった馬鹿な見解を一部の先生方は述べられ、極めて軽い片頭痛発作でも「トリプタン製剤」を使用すべきと勧めておられます。(薬剤乱用頭痛の根源になってきます。)
 しかし、このような見解は、”何らかの引き金”によって、頭蓋内で起きた現象を抑える目的で、痛み止めの代わりにトリプタン製剤が使われただけに過ぎません。


 「片頭痛体質(酸化ストレス・炎症体質)」を基盤として、”ちょっとしたこと”で(ストレスなど何らかの理由で)「活性酸素」や「遊離脂肪酸」が過剰に発生することによって(これが何らかの引き金の本態です)、血小板が凝集することによって、血小板から血管外へセロトニン(生理活性物質としてのセロトニンです)が放出され、血管を収縮させます。 その後、役割を果たしたセロトニンは減少しやがては枯渇し、今度は逆に血管を拡張させます。
 その作用機序そのものは、”鎮痛薬と大差はなく、多少効果のある薬剤”でしかなく、結局は”対症療法”に過ぎません。何か、基本的に欠如した部分が存在しています。


 このように、多くの頭痛診療が、痛みを一時的にとることしか考えていないのは、その原因をよく”理解”していないからです。頭痛の専門家がこのようなことに気がつけば、頭痛医療は、飛躍的に実効性のある診療が行えるずです。けれど、残念なことに、多くの頭痛の専門家はそのことに気づかず、旧態依然の診察と鎮痛薬・トリプタン製剤の処方を繰り返すだけです。

 ここに、薬剤乱用頭痛を醸し出す要因があります。


 片頭痛と緊張型頭痛は、明確に区別できるものではありません。その境界に、どちらの特徴を持っていて、どちらとも区別できない頭痛がほとんどです。


 片頭痛とは”未病”の段階にあり、緊張型頭痛を起点として、さまざまな生活習慣の問題点が重なることによって、「いろいろな段階の片頭痛」へと進行し、最終的に「慢性片頭痛」という難治な段階に至ることになりますので、常に自分の生活習慣に気を配り、何か問題があれば、その都度改善に努める必要があります。このように進行性疾患です。
 

 このように慢性頭痛とくに片頭痛は生活習慣病、そのものということです。
 このため、片頭痛に至るまでに生活習慣の問題点が、それぞれどのように関与しているかを具体的に知ることが重要になってきます。そして、このような生活習慣の問題点を改善・是正しないことには片頭痛を治すことはできないということです。
  このように、片頭痛・緊張型頭痛ともに同じ病態によって発症してきます。
 

 結局のところ、慢性頭痛とは、私達の生体の生活のリズムの歪み(乱れ)すなわちホメオスターシスの乱れから起きてくる頭痛と考えなくてはなりません。
 しかし、専門家には、片頭痛は、「神秘的な、不思議な病気(頭痛)」との認識しかありません。
 緊張型頭痛では、デスクワーク、特にパソコンを使って仕事をすることにより、うつむき姿勢を長時間とると、首の後ろ側の頭半棘筋が緊張し、その筋肉を貫くように走っている「大後頭神経」が圧迫され頭痛が起こり、緊張型頭痛は明らかに首疲労からもたらされる病気で、首疲労を治療することによって、痛みがきれいに消えてしまいます。
 これまで緊張型頭痛は「仕事の精神的ストレスが原因」とされ、痛むたびに鎮痛薬でごまかすしか手がありませんでした。きっと、このタイプの頭痛は我慢するしかないとあきらめていた人もかなりの数にのぼるのではないでしょうか。それが、首の筋肉疲労が原因であることがわかり、はじめて根本的に治す道が開けてきました。
 ところが、明らかに片頭痛と考えられる予兆や前兆を持っていて、片頭痛に有効なイミグランなどのトリプタン製剤を飲んだら、頭痛がぴたりと止まることから、典型的な片頭痛と他院で診断された患者さんに対して、頸筋の異常を治療したら、片頭痛が起きなくなるものが、片頭痛の一部に存在します。こうなると、片頭痛と緊張型頭痛という分類自体が怪しくなってきます。
 頭半棘筋にこりが出ると、それが大後頭神経を刺激し、その刺激が三叉神経に伝わります。大後頭神経は、頭痛をもたらす神経です。大後頭神経と三叉神経は脳のなかで繋がっていますので、大後頭神経の刺激は、三叉神経にも伝わります。
 大後頭神経と三叉神経が同時に痛くなる現象は、よく知られています。いわゆる「大後頭神経三叉神経症候群」です。これが、片頭痛を誘発・増悪・慢性化に関連していると考えなくてはなりません。
 要するに、緊張型頭痛も片頭痛も一連の連続したものであるということです。


 こういったことから、緊張型頭痛→片頭痛→慢性片頭痛(トリプタン乱用による薬剤乱用頭痛)→群発頭痛様の睡眠時頭痛(目覚まし時計頭痛)へと移行してくることを意味し、トリプタン乱用による薬剤乱用頭痛は片頭痛の謂わば”終着駅”にあたるものです。
 このため”未病”に相当する片頭痛に対して、トリプタン製剤を安易に繰り返し服用することは、もはやどうにも対処できない薬剤乱用頭痛に至ってしまい、頭痛地獄をみることになり、”ご愁傷様”となってきます。


 このようなことから、最初に頭痛が起きた場合、安易に「市販の鎮痛薬」を服用することなく、頭痛を緩和させる”スベ”を会得することが大切になります。


 その上で先程の慢性頭痛を引き起こす原因が、あなたの生活習慣のなかに存在しないかどうかを点検しなくてはなりません。このように根本的に改善させておくことが重要になってきます。こうした要因はすべて、あなたの生活習慣のなかにあります。
 これを突き止めるためには、これまでのあなたの「生活習慣」を振り返ってみることによって、問題点を見つけ出すことが重要になってきます。このような自分の生活習慣を振り返ってみることができるのはあなたしかいません。このため、あなた自身で振り返ってみて、その問題点を見出すことで、自分で改善しなくてはなりません。するのは医師でなくあなた自身です。これができなければ、慢性頭痛の改善はできないことになります。


それでは、どうすればよいのでしょうか?


 皆さんは、頭痛が心配になれば心情として脳神経外科を受診されます。しかし、脳神経外科本来の役割を考えなくてはなりません。

 ここで、脳のなかに異常がないとCTもしくはMRIといった画像検査で診断された場合は、ここで脳神経外科の役割は終わっています。脳神経外科は、こうした脳の中に異常のない”慢性頭痛”を診る専門家ではありません。引き続いて、脳の中に異常のない”慢性頭痛”を診る専門家に相談しなくてはいけません。いつまでも専門でもない診療科で診てもらえば結局、一生くすりを飲まされ続けるか、最悪の場合、極めて難治なトリプタンによる薬剤乱用頭痛に至ってしまうということです。
 こういったことから、「頭痛は脳神経外科」といった迷信を払拭しなくてはなりません。
 ということは、慢性頭痛がどのような発症様式をしているのかを知れば、あとは簡単なはずです。 


 こういったことを念頭に置いた上で、頭痛を最初に自覚した時点で、自分で、何をどうすべきかを考えた上で、自分なりに対策を講ずるべきです。ということは、最初の時点で、安易に市販の鎮痛薬に手を出さないことが肝要ということです。そうしなければ、次々に、作用の強い鎮痛薬に変えざるを得なくなり、挙げ句の果ては、トリプタン製剤にまで行き着いてしまうということを意味しています。
 このようなことは、専門家の方々は一切、指導されることもなく、放任されたままです。 

 その結果が、どうなるかは言うまでもないことです。