前回は、糖質の摂りすぎ、空腹時血糖と食後血糖の差が大きい「ブドウ糖スパイク」は、健康生活を送る上、とくにガンを予防する上で、でよくないと述べました。
それでは、「糖質の制限」はどのようにすべきなのでしょうか?
「糖質制限」って何???
一大ブームを巻き起こした”ダイエット”を目的とした糖質オフ・制限です。
また、肥満や糖尿病などさまざまな生活習慣病が予防・改善を目的として行われ、片頭痛の改善効果もあるとされています。
これは、京都・高雄病院の江部康二先生の提唱されるものです。
この「糖質制限」とは、私たちが毎日当たり前のように食べている米飯やパン、これらの「主食」を控えることをさしています。
現代人が毎日摂っている食べ物は、人類本来の食生活とはかけ離れたものになっていて、その事実こそが、さまざまな生活習慣病がこれだけ増えたことの根本要因とされています。 いまの食生活を、人類本来の食生活である糖質制限食に変えることで、私たちは簡単に健康を手に入れることができ、実は、栄養士や医師が推奨するカロリー制限食(糖質60%、脂質20%、タンパク質20%)は、人類本来の食生活からみると最悪のバランスであると、江部康二先生は訴えておられます。
それでは、高雄病院で推奨している「人類にとって最高のバランスの糖質制限食」とは、いったいどのような食事療法なのでしょうか?
「糖質制限食」は どんな食事療法なのでしょうか?
現在、糖尿病専門医の間では、食後高血糖が大きな問題として注目されています。
従来は空腹時血糖をコントロールしてきたのですが、それだけでは不充分で、食後血糖をできるだけ低くおさえることが大切だというのです。その理由は、食後高血糖が心筋梗塞や脳梗塞などの合併症を引き起こす危険因子として確立されたからです。
ところが、日本で常識とされている糖尿病の食事療法は、こうした実態に応えられるものになっていません。カロリー制限を重視した炭水化物(糖質)中心の糖尿病食というのは、血糖値をおさえるどころか、むしろ上昇させてしまうからです。
食べ物が消化・吸収されたあと、脂質とタンパク質は血糖に変わりませんが、糖質は100%血糖に変わります。また糖質は、摂取直後から血糖値を急上昇させて、2時間以内にほとんどすべてが体内に吸収されてしまいます。これらは食べ物に含まれるカロリーとは無関係の生理学的な特質です。
このように、糖質・脂質・タンパク質の3大栄養素のうち、血糖値を上げるのは糖質だけなのです。
糖質を摂ると、血液中のブドウ糖(血糖)をエネルギーに変えようとして、インスリンが大量に追加分泌されます。インスリンは生きていくのに欠かせない大切なものですが、別名「肥満ホルモン」とも呼ばれるように、多く出すぎると体に悪い影響を与えてしまいます。
そして実は、正常な人においても、この糖質の摂取がもたらす食後血糖上昇とインスリン大量追加分泌のくり返しが、糖尿病・肥満・メタボ、さらにはさまざまな生活習慣病の根本要因になっています。
糖質制限食の基本的な考え方は、このような生理学的な特質をもとに、できるだけ糖質の摂取を抑えて、食後血糖上昇とインスリンの過剰分泌を防ぐというものです。
簡単にいえば、主食を抜いておかずばかり食べるというイメージになります。抜く必要がある主食とは、米飯・パン・めん類などの米・麦製品や、ジャガイモ・サツマイモ・里イモなどのイモ類など、糖質が主成分のものです。もちろん糖質制限ですから、甘いお菓子やジュースもNGです。
それさえ注意すれば、肉や魚はお腹いっぱい食べられます。
それでは、なぜ食後血糖上昇とインスリンの過剰分泌がさまざまな病気や症状を引き起こすのでしょうか?
インスリンはすい臓のランゲルハンス島という部分にあるβ細胞でつくられている物質で、血液中のブドウ糖の量(血糖値)を調整するのが主な役割です。体内で唯一、血糖値を下げる働きをしています。インスリンには24時間継続して少量出続けている「基礎分泌」と、糖質を摂って一時的に血糖値が上がったときに出る「追加分泌」の2種類があります。
これでわかるのは、何も食べていないときでも、人体には少量のインスリンが必要ということです。このインスリンの基礎分泌がなくなると、人体のほとんどの組織ではエネルギー代謝がまともに行えなくなってしまいます。
そして、食事などで糖質を摂ると、血液中のブドウ糖の量が増えるので、インスリンも増やさなければなりません。そのためにインスリンを余計に分泌することを追加分泌と呼びます。追加分泌されたインスリンは、血液中のブドウ糖を骨格筋や心筋などの細胞内に取り込み、エネルギー源として使えるようにします。またインスリンは、血液中の余分なブドウ糖を体脂肪に変える働きもしています。一方でブドウ糖を燃やし、他方でブドウ糖を体脂肪に変えることで、インスリンは血液中のブドウ糖の量を減らすのです。
このようにインスリンは、生きていくために欠かせないホルモンで、その分泌を担っているのがすい臓のβ細胞なのです。糖尿病というのは、このインスリンの作用不足によって血糖値が高くなる病気です。
前回も述べましたように、空腹時血糖と食後血糖の差が大きいことを「ブドウ糖スパイク」と言います。世界中の糖尿病専門医の間で定着している言葉ですが、この差が大きいほど体内の血管内皮はリアルタイムで傷つけられ、将来の動脈硬化や心筋梗塞のリスクとなります。
ここで重要なのは、1日に何回も糖質を摂ると、そのたびにミニスパイクが起きるということです。そして、ミニスパイクのたびにインスリンが大量に追加分泌されて、代謝が乱れます。基礎分泌の数倍から30倍ものインスリンが追加分泌されますから、人体にとっては救急車の出動に等しい緊急事態といえるでしょう。血糖値が180を超えるとリアルタイムで血管内皮が傷つけられるので、すい臓のβ細胞はこの緊急事態を何とかおさめようと一生懸命にインスリンを分泌するわけです。
酸化ストレスが慢性病の元凶
最近、酸化ストレスが生活習慣病の元凶として、問題となっています。
人体は、酸化反応と抗酸化反応のバランスがとれていると、正常に機能します。
酸化反応が抗酸化反応を上まわった状態を酸化ストレスといいます。細胞内のミトコンドリアの活動で日常的に活性酸素が発生しますが、生体の抗酸化反応で処理しています。
スーパーーパーオキシドディスムターゼ (Superoxide dismutase, SOD) は、細胞内に発生した活性酸素を分解する酵素です。生体内のビタミンC、ビタミンE、グルタチオンなどが抗酸化作用を有しています。
ヒトにおいて、最も一般的な酸化ストレスの発生源は喫煙と高血糖です。
『高血糖→糖化蛋白生成亢進→糖化蛋白が種々の酵素と反応して活性酸素生成。』
高血糖は、糖化蛋白(AGE)の生成を亢進させます。
糖化蛋白AGEは、様々な酵素と反応して、活性酸素を生成します。
活性酸素は生体の酸化反応の本家本元です。
酸化ストレスが、片頭痛・動脈硬化・老化・癌・アルツハイマー・パーキンソン等、様々な疾病の元凶とされています。
血糖値に関しては食後高血糖と平均血糖変動幅増大(「ブドウ糖スパイク」)が最大の酸化ストレスリスクとされています。これは世界中の医学界において、認められています。
糖質・脂質・蛋白質のうち、食後高血糖と平均血糖変動幅増大(「ブドウ糖スパイク」)を引き起こすのは、糖質だけです。
従って、日本糖尿病学会推奨のカロリー制限食(高糖質食)を、つらいのに一生懸命我慢して頑張っても食後高血糖と平均血糖変動幅増大を予防することは、理論的に不可能なのです。
糖尿病の食事療法において、食後高血糖と平均血糖変動幅増大(「ブドウ糖スパイク」)を予防できるのは糖質制限食だけです。
日本糖尿病学会は、「食事療法」と「食後高血糖と平均血糖変動幅増大の予防」について、学会として指針を示すべきだと思います。
糖化蛋白AGEについては、前回も述べました。
糖化反応とは、グルコースなどの糖が、直接タンパク質または脂質に結合する反応の事です。
糖尿病の検査指標のHbA1cは、糖化したヘモグロビンのことです。
糖化反応の初期段階のアマドリ化合物としては、HbA1cやグリコアルブミンなどが代表的な物質です。
糖化反応系はアマドリ化合物生成までの反応を初期段階と呼び、以降の後期段階反応と区別しています。
最近AGE(advanced glycation endprpducts:糖化最終産物)が注目されています。
AGEは血管内皮を障害して動脈硬化の元となり、活性酸素も発生させます。
肉や魚をお腹いっぱい食べられるのが 糖質制限食の特長
糖質制限食の原則は、血糖値を上げる糖質をできるだけ控えて、食後高血糖を防ぐというものです。簡単にいえば、主食を抜いておかずばかり食べるということです。
抜く必要がある主食とは、米飯・めん類・パンなどの米・麦製品、ジャガイモ・サツマイモ・里イモなどのイモ類など、糖質が主成分のものです。もちろん糖質制限ですから、甘いお菓子・ケーキ・ジュース、それに煎餅・おかきなどもNGです。
一方、糖質さえ制限すれば脂質やタンパク質はしっかり摂っていいので、肉や魚はお腹いっぱい食べられます。焼酎・ウイスキー・ブランデーなどの蒸留酒、辛口ワイン、糖質ゼロの発泡酒なら、お酒を飲んでもOKです。
カロリー制限食でお腹を空かして難行苦行に耐えることに比べれば、とてもラクに実践できます。
糖質制限食は人類の健康食なので、太った人は減量できて、やせすぎた人は適正体重に戻ります。8~9割の人は、普通にお腹いっぱい食べて、カロリー計算はいりません。
糖質制限食には3つのやり方があります。
1つめは「スーパー糖質制限食」で、朝・昼・夕とも主食なしです。1日を通して糖質を控えるので、血糖値は上がらず、インスリンの追加分泌はほとんど出ません。そのためダイエット効果や生活習慣病などの予防効果がもっとも高く、それまでとはまったく異なる代謝リズムになります。
2つめは「スタンダード糖質制限食」で、1日3食のうち1回の食事だけは主食を摂り、残りの2回については主食を抜きます。主食を摂るのは朝でも昼でもよいのですが、夕食はお勧めできません。なぜなら、夕食後に就寝すると脳も筋肉も活動しないので血糖値が下がりにくく、インスリン(肥満ホルモン)によって脂肪が蓄えられやすいからです。
3つめの「プチ糖質制限食」は、1日3回の食事のうち、夕食だけ主食を抜くようにします。朝・昼は適量の糖質を摂れるので実行はかなりラクですが、スーパーなどに比べれば改善効果はどうしても低くなります。
片頭痛での「糖質制限」
それでは、糖質制限が、なぜ片頭痛に有効なのでしょうか。2つの観点から考えることが大切と思っております。
グルテンが片頭痛の原因になっている・・ある方の体験談から
小麦・ライ麦・大麦など穀物の胚乳から生成されるタンパク質の一種「グルテン」。これが、片頭痛を誘発させる成分なのです。糖質制限でパンや小麦を摂取しないダイエットを行った人が片頭痛のない生活を送るようになったという話はよく聞くことです。
医学的にはグルテンが片頭痛を引き起こす原因の一つとして確認されているとのことです。グルテンが原因となって頭痛が起こるメカニズムはまだあまり分かっていないようですが、グルテンを摂らないことで片頭痛の回数が減ったり、起こらなくなったりするのは確かなようです。
糖質制限がグルテンフリーに繋がった
私はダイエットの方法で糖質制限を用いています。糖質制限は炭水化物を制限する食事制限方法なので結果的にパンや麺類などの小麦粉食品を食べていません。グルテン自体はたんぱく質で糖質制限で制限されるべき成分ではないので、ことさらグルテンを摂らないようにしていた訳ではありませんが、パンや麺類を食べていないので結果的にグルテンも摂ってない状態になっていたのです。
グルテンが原因になる症状にはセリアック病が有名です。グルテンの一部は人の消化酵素では分解できす、小腸上皮組織に取り込まれてしまう場合があります。そうすると未消化グルテンは異物となるため、(グルテン抗原を持っている場合に)免疫反応が起こり炎症が起きる病気です。
セリアック病ではグルテンフリーと総称されるグルテンを含まない食事を摂ることでアレルギーを起こさないようにします。糖質制限が間接的にグルテンフリーになっていた訳です。
炎症が原因か
グルテンが原因となって頭痛が起こるメカニズムはまだ分かっていないと前述しましたが、研究では中枢神経系にグルテンアレルギーによる炎症が認められた症例もあるようです。中枢神経系とは脳と脊髄のことですから、グルテンは消化器系の炎症だけでなく頭痛の原因となり得る炎症も引き起こすようなのです。
片頭痛のメカニズムは現在では皮質拡延性抑制が原因となっていると言われています。 皮質拡延性抑制とは何らかの原因で大脳皮質の神経細胞(ニューロン)の過剰な興奮が起こり、それを抑制する動きが脳全体に伝わるという現象です。
その抑制の波が神経伝達に乱れを起こし、三叉神経系で痛みとして現れるのが片頭痛と言われています。炎症は神経細胞(ニューロン)の興奮を誘う原因になりえますから、グルテンが原因の中枢神経系の炎症でも片頭痛が起きるものと思われます。
片頭痛が0回に
私の場合、重度の片頭痛が起きるときは閃輝暗点という発作を伴なうことが多かったです。月2回くらい、年間では7回~10回くらい起こっていました。しかし糖質制限(グルテンを摂らなくなってから)を始めてから、0回となっています。糖質制限を初めてからほぼ一年経ちますが一回も閃輝暗点を伴う片頭痛は起きていないのです。
片頭痛が少なくなったと言う程度ではなくぴったりとなくなった事はかなり劇的な変化です。痩せたから頭痛が軽減された可能性があるかもしれませんが、それであれば片頭痛の回数が徐々に減っていく感じになるはずです。
しかし実際には糖質制限(グルテンを摂らなくなってから)開始後からすぐに、片頭痛が起こらなくなりました。この事がグルテンを摂らなくなったことと片頭痛が無くなったことに因果関係があるのではないかと思った理由です。
最後に
因果関係は完全に解明されている訳ではないですが、もし片頭痛に悩まされているならグルテンを摂らないでみるのも手かもしれません。
糖質制限は結果的にグルテンフリーにできる可能性が高いのでおすすめです。
すべての人に有効なのかどうかはわからない面もありますが、個人的には自分の症状の推移とやってきたことから考えればグルテンを摂らないことが片頭痛の軽減に繋がるのではないかと思います。
片頭痛における「糖質制限」の問題点
極端な「糖質制限」はエネルギー代謝に影響が及ぶことが懸念されます。ということは、ミトコンドリアの働きに対する影響です。
さらに、糖質さえ制限すれば脂質やタンパク質はしっかり摂っていいとされていますが、高脂肪、高タンパクは腸内環境の悪化を招くことになります。
ミトコンドリアを増やすには、空腹が最も重要です。お腹を空かす程度ということを念頭に置き、このあたりのバランスを考えながら行う必要があります。
このように考えれば、「プチ糖質制限食」のやり方で、1日3回の食事のうち、朝食だけ主食を抜くのが最も適切と思われます。こういった意味で、分子化学療法研究所の後藤日出夫先生が提唱される朝食に「万能健康ジュース」を取り入れることで「プチ糖質制限食」を行うことが最も適切と思われます。
そして、昼食・夕食は、インシュリンの過剰分泌を来さないような食事方法を行うべきと思われます。
糖質制限ダイエットの弊害
「即効性がある」とブームが続く糖質制限ダイエットですが、現在、その安全性に警鐘が鳴らされ始めたことも忘れてはなりません。
もともとは糖尿病や重度の肥満患者に対する食事療法として考案されたものですが、いまや「手軽に痩せられるダイエット法」として、老若男女を問わず人気を集めています。 人気の秘密は、糖質さえ制限していれば、あとは肉でもアルコールでも摂取OKという取り組みやすさと、目に見えて現れる効果にあります。
炭水化物の糖分は体内で中性脂肪に変わり、人間のエネルギー源となる。炭水化物を絶つことで中性脂肪を減らして痩せる、いたって単純なメカニズムのダイエット法なのです。
お年寄りの場合は、筋力が落ち、骨粗鬆症になり、骨折を引き起こすこともあります。
糖質を制限してしまうと、代わりにタンパク質を構成しているアミノ酸を、肝臓が糖に作り変えるというシステムが働き始めます。タンパク質を糖に変えられるなら、肉を食べれば問題ないのではないかと思う方もいるでしょう。しかし、人体の維持に必要なエネルギーをタンパク質や脂質でまかなおうと思ったら、毎日大量の肉を食べなければなりません。数kgもの肉を毎日食べ続けることは現実的に不可能です。糖エネルギーが不足すると、それを補うために、体は自分の筋肉を分解してアミノ酸に変えていきます。結果、筋肉量がどんどん減っていってしまうのです。
糖質制限ダイエットは、評判ばかりが独り歩きして、過剰なやり方が横行する。若い人や糖尿病患者が、医師の指導のもとで一定期間やるのはいいでしょう。しかし、65歳以上の高齢者は安易に手を出すべきではありません。寝たきりになる危険性が非常に高いからです。実際、糖質制限で筋力が低下したと来院する高齢患者が増えています。
要注意なのは女性。骨粗鬆症は圧倒的に女性に多く、60歳代で2人に1人、70歳以上で10人に7人が悩んでいます。ダイエットは女性のほうが熱心だからでしょうか。糖質制限を始めて骨粗鬆症を加速させてしまったという中高年女性の患者も多くみられます。
筋力が低下したり、骨粗鬆症になってしまった高齢者は、ほんのちょっとの病気や怪我で入院すると、あっという間に寝たきりになってしまいます。
筋力低下、骨粗鬆症、動脈硬化が引き起こす脳卒中—さまざまな病気との関係が指摘される糖質制限です。
高齢者は消化吸収能力が落ちているため、男子高校生より体重1kgにつき必要な1日のタンパク質の量が多い。そうでないと、体が維持できないからです。そんな高齢者が糖質制限をすれば、内臓組織の原料となるタンパク質が不足し、体はどんどん老化します。だから原則的に、糖質を減らしてはいけない。やるとしても、おやつなどの間食を抜くだけにする。高齢になったら、糖質とタンパク質、両方のバランスをよく考えて食事をすることが望ましいのです。
このように、高齢者の「糖質制限」には、問題があることを忘れてはなりません。
あくまでも、「糖質制限」は青壮年の方々が行うべきもののようです。
こうした「糖質制限」に関連して「ケトン体・ダイエット」があります。
.「ケトン体ダイエット」とは???
ケトン体とは何?
「ケトン体」は、アセトン、アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸という、3つの物質の総称です。
体内のブドウ糖が足りなくなると、体の脂肪が燃焼されエネルギー源として使われるようになります。この時、肝臓で作られるのがケトン体です。
通常、脳はブドウ糖しかエネルギー源として使うことができないとされています。しかしケトン体は、ブドウ糖の代わりに脳のエネルギー源となると言われています。脳のほか、様々な臓器においても、エネルギー源として使われるとされています。
またケトン体は、糖尿病などの疾患の検査にも活用されているようです。糖尿病のためにインスリンが生成されない場合などには、体内のブドウ糖をエネルギーとして使うことができなくなってしまうと言われています。この時にもケトン体が作られるため、ケトン体の濃度は糖尿病などの指標となるとされています。
ケトーシスとは?
血液中のケトン体が増加し標準的な値を超えている状態を「ケトーシス」と呼びます。ケトーシスは、十分な食料を得ることができずに飢餓状態になっても、ある程度生きていられるようにするための、人体に備わった非常手段のようなものだと言えるでしょう。
食料に困るということがほとんどなくなった現代の日本においても、宗教上の理由で断食をする人や、つわりで食事がとれない妊婦さんなどには、ケトーシスになる人がいるようです。
ケトーシスの状態では、脂肪が分解され、ケトン体が主なエネルギー源として使われるようになるとされています。そのため、ダイエット効果が期待できると言われています。
危険!? ケトアシドーシスとは?
なおケトン体は酸性なので、ケトン体が血中に増えると、血液や体液が酸性になることがあると言われています。このような状態は、「ケトアシドーシス」と呼ばれています。
インスリンが体内で正常に機能している健康な人であれば、ケトアシドーシスになる心配はないようですが、特定の病気を持っている場合などには発症することがあると言われています。
特に、主に1型糖尿病患者(何らかの原因でインスリンがまったく分泌できなくなったり、分泌量が極端に減ってしまうために起こる糖尿病で、生活習慣病とされる糖尿病は2型糖尿病だと言われています)に起こるとされる「糖尿病性ケトアシドーシス」は、嘔吐などの症状を引き起こすとされ、進行すると意識障害が起こり、死に至る危険もあると言われています。
ご自身の健康状態をよく考えて、過度なダイエットは行なわないことをおすすめします。
ケトン体ダイエットとは?
近年、「ケトン体ダイエット」という方法が注目されているようです。このダイエット法は、考案者であるアメリカ人医師、ロバート・アトキンス氏の名前をとって、アトキンス式ダイエットなどと呼ばれることもあります。
このケトン体ダイエットとは、どのような方法なのでしょうか?ここでは大まかに、その内容をご紹介しましょう。
まず、ダイエット開始からおよそ二週間、炭水化物の摂取量を極端に減らします。ちなみに、炭水化物の摂取量は、摂取カロリーの5%に抑える必要があると言われています。
この状態を続けることで、身体が「ケトーシス」の状態になるとされています。それから、体重の増減や体調などを見ながら、少しずつ炭水化物の摂取量を増やしていくと言われています。ただし増やすと言っても、最終的に摂取カロリーの20%を超えないようにします。
あえて身体をケトーシスの状態にすることで、脂肪を分解し、エネルギー源として使うことができるとされるケトン体ダイエットは、非常に効果の高いダイエット法と言われます。
また、ケトーシスになると食欲が抑制され、空腹を感じにくくなると言われています。 ダイエットの大敵である食への欲求に、あまり悩まされずに済むかもしれません。加えて、脂肪をエネルギー源として分解させるため、動脈硬化などの予防にも効果があるのではないかと期待されているようです。
ケトン体ダイエットと糖質制限の違い
炭水化物の摂取量をセーブするという点が大きな特徴であるケトン体ダイエット。この方法と糖質制限ダイエットとは、同じものなのではないか?と思う人もいるかもしれません。
確かに似ている点もあると言えますが、この2つは、厳密には違う方法だと言われています。
ケトン体ダイエットをする場合は、一日に摂取する炭水化物の量が、かなり厳密に定められています。漠然とした量の炭水化物を、長期間に渡って減らす糖質制限とは、この点が大きく違うと言われています。
この2つのダイエット方法を比べた場合は、ケトン体ダイエットの方がより制限が厳しく、実行する際のハードルは高いと感じられるでしょう。
単に主食を抜いたり、イモなどの高糖質の食品を避けたりするだけではなく、調味料にまで注意を払わないと、求められる制限をクリアするのは難しいと言われています。特に外食が多い人などにとっては、ケトン体ダイエットは実行が難しい方法かもしれません。
ケトン体ダイエットを効率よく行うためには
ケトン体ダイエットをするときに、積極的に摂取するといいと言われている食品が「ココナッツオイル」です。ココナッツオイルに含まれている中鎖脂肪酸は、ラードなどに含まれる長鎖脂肪酸よりも分解されやすいと言われています。
それ自体が脂肪として蓄積されにくいだけではなく、長鎖脂肪酸にも影響を及ぼし、燃焼されやすくする働きがあるとも言われています。そのため、ココナッツオイルはダイエットに適した食品と言われています。
加えて、中鎖脂肪酸を摂取することで、ケトン体が作られやすくなると言われています。 ケトン体ダイエットの際にココナッツオイルを摂取することで、よりよい結果を出すことができると期待されています。
ココナッツオイルは、コーヒーなどの暖かい飲み物に入れたり、トーストに塗ったり、揚げ物をするときに使ったりと、幅広く活用することができます。比較的、食生活に取り入れやすい食材と言えるかもしれません。
また、適度な運動も、ケトン体ダイエットの効率を高めてくれると言われています。
炭水化物の摂取量を制限すると、自然とタンパク質の摂取量が増えるため、筋肉が落ちにくいと言われることもあるケトン体ダイエットですが、基礎代謝を高く保つためにも、適度に身体を動かして、筋肉量を維持するように心がけなくてはなりません。
ちなみに筋肉が落ちると、基礎代謝(呼吸や体温調節などのために使われるエネルギーで、運動をしなくても消費されます)も落ちてしまい、消費カロリーの少ない、太りやすい身体になってしまうと言われています。せっかく厳しい食事制限をやり通しても、ダイエットをやめた途端にリバウンドしてしまっては、元も子もありません。
なお、ケトン体ダイエットの効果を高めるために行う場合には、あまり激しい運動をする必要はなく、ウォーキングなどが適していると言われることが多いようです。
ケトン体ダイエットを行う際の注意点
前述の通り、ケトン体ダイエットは効果の高いダイエット法だと言われることがよくあります。
しかしその一方で、思わぬ副作用が出てしまうケースもあると言われているようです。
まず、ケトーシスになるまでの間は、低炭水化物による副作用が出ることがあると言われています。
炭水化物の摂取量をかなり減らすため、頭がぼーっとしたり、頭痛や下痢などを起こしたり、イライラしてしまうなどといった症状が出ることがあるようです。
また、ケトン体の濃度が高くなると、ケトン体を体外へ排出しようとする働きが活発になるため、脱水症状を引き起こす可能性があると言われています。
水や甘くないお茶などを飲むようにし、多めの水分補給を心掛ける必要があります。
ケトン体が原因で、口臭や体臭がきつくなることもあると言われています。
この臭いは「ケトン臭」や「ダイエット臭」などと呼ばれることもあり、甘酸っぱいような臭いがするようです。ケトン体のアセトンが、この臭いの原因だと言われています。
ケトン臭には個人差もあるようですが、人によっては他人とのコミュニケーションに支障をきたしてしまうほど、臭いが気になってしまうというケースもあるようです。
なお、適度な運動を行うことで、ケトン臭を抑える効果が期待できるとも言われています。身体を動かすことで、効率的にケトン体ダイエットを進めるだけではなく、このようなメリットも得られるかもしれません。
なお、低炭水化物による症状やケトン臭などは、ケトン体ダイエットだけではなく、ハードな糖質制限をした際にも見られることがあるようです。
糖質制限ダイエットをしている人がこのような症状を避けるためには、緩い糖質制限から始めるのがいいと言われています。ハードなダイエットをすれば、その分短期間で大きな効果を得られるかもしれませんが、そのために体調を崩してしまうようなら、無理をして続けるのはおすすめできません。
また、ケトアシドーシスを発症する恐れがあるとされる糖尿病の患者さんに限らず、健康状態に不安がある人や通院中の人などが、ケトン体ダイエットをしたいという場合は、かかりつけの医師など、専門家に相談する必要があるでしょう。
さまざまな神経疾患に応用されるケトン食、ケトン体の効能
これから述べますことは、神経内科医の先生方の考え方で、決して頭痛の専門家が考えていることではないことを、まずお断りしておきます。
一般の方々には難解ですので、興味のある方だけご覧下さい。
『βヒドロキシ酪酸(ケトン体の一つ)は内在性のヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤として酸化ストレスの抑制に寄与する』ことから、ケトン体は酸化ストレスの抑制に寄与します。
酸化ストレスを抑制するということは、動脈硬化や老化やがん、パーキンソン病やアルツハイマー病や認知症にも好影響が期待できるということです。
この「神経保護作用」をベースに
てんかんとケトン食
加齢とケトン食
アルツハイマー病とケトン食
パーキンソン病とケトン食
ALSとケトン食
癌とケトン食
脳卒中とケトン食
ミトコンドリア疾患とケトン食
脳外傷とケトン食
神経疾患(うつ病)とケトン食
自閉症とケトン食
片頭痛とケトン食
このような神経疾患でのケトン食の可能性が示されています。
ケトン食による神経保護作用
ケトン食治療の二つの顕著な特徴は肝臓におけるケトン体産生の上昇と血糖値の減少です。
ケトンの上昇は主として脂肪酸酸化の結果です。アラキドン酸やドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸などの特定の多価飽和脂肪酸(PUFAs)はそれ自身が電位依存性ナトリウムおよびカルシウムチャネルをブロックすることによって神経細胞膜の興奮性を制御し(Voskuyl and Vreugdenhil, 2001)、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPARs;Cullingford, 2008; Jeong et al., 2011)の活性化を通して炎症反応を抑制し、また活性酸素の産生を減少させるミトコンドリア脱共役タンパク質を誘導します(Bough et al., 2006; Kim do and Rho, 2008)。
ケトン体そのものは高められたNADH酸化とミトコンドリア膜透過性遷移現象(mPT;Kim do et al., 2007)を通じてATP値を上昇させ活性酸素産生を減らすことによって神経保護作用を持つことが示されてきています。
生体エネルギー機構を改善する同様のラインを通して、ケトン食はミトコンドリア発生を刺激し、結果としてシナプス機能を安定化させることが示されてきています(Bough et al., 2006)。
第二のケトン食の主要な生化学的な特徴は解糖系の流量の減少です。解糖の減少は痙攣を抑制する(Greene at al., 2001)だけでなく霊長類を含む多数の種において生存期間を延長させる(Kemnitz, 2011; Redman and Ravussin, 2011)ことが示されてきています。
他の重要なメカニズムとしてはミトコンドリア機能を改善させ酸化ストレス減少させること(ケトン体やPUFAsでみられる現象も同様)、アポトーシス促進因子の活性化を減少させること、インターロイキンや腫瘍壊死因子α(TNFα; Maalouf et al., 2009)のような炎症メディエーターを抑制することが挙げられています。
さらに細胞内ホメオスターシスや神経傷害や機能不全を防ぐことにも寄与しているかもしれずKDの神経保護に関するメカニズムは他にもたくさんありそうです。
このケトン食については、最近、以下で記事にしたばかりです。以下をご覧下さい。
物忘れが多い人にはケトン食
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12277700825.html
片頭痛にもケトン食が有効であるとする論文は、これまでにも症例報告があります。
ここでは、最後に、触れました。参考までに・・
結局、片頭痛がミトコンドリアの機能障害、酸化ストレスが関与しているということが基本的な考え方になるということです。