食事の摂り方と健康 その2 過食の弊害 | 頭痛 あれこれ

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 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 前回は、”早喰い、ドカ喰い、過食”はどうしていけないのか? について述べました。
 このことは、健康的生活を送るためには極めて重要なことですので、改めて、分子化学療法研究所の後藤日出夫先生に解説して戴くことに致します。これは、以前にも記事にさせて戴いたものです。

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 ”早喰い、ドカ喰い、過食”このような食べ方を常日頃していますと、「インスリンの過剰分泌」を起こしてきます。
 それでは、「インスリンの過剰分泌」は、どうしてよくないのでしょうか。


インスリン過剰分泌


 血糖値というのは血液中のブドウ糖の濃度のことです。ブドウ糖というのは、ご飯や麺類などの主食に多く含まれる「糖質」が分解されたもので人間が活動するための主なエネルギーになります。食事をすると糖質が消化吸収されブドウ糖になり吸収され、血液によって体のあちこちに運ばれます。
 血液の中のブドウ糖はそのままではエネルギーとして使えません。血管からエネルギーを使う器官の細胞に取り込まれないといけないのですが、その取り込む役割をするのが「インスリン」です。
 インスリンは膵臓から分泌されるホルモンで、食事をして血糖値が上昇すると分泌量が増え、血中に増えたブドウ糖を細胞に取り込みます。
 その取り込まれたブドウ糖がエネルギーになって、人間は活動することができるのですが、余分にとってしまったエネルギー(ブドウ糖)は脂肪として蓄えられてしまいます。
 急激に血糖値が上がりすぎますと、血糖の急激な上昇を抑制するためにインスリンが過剰に分泌されることになります。過剰に分泌されたインスリンは血糖を下げすぎることになります。血糖値が下がりすぎると、血糖を適正なレベルに戻そうとするからだの仕組みが働き、体脂肪から遊離脂肪酸がエネルギー源として放出されるようになります。
 体脂肪からブドウ糖などエネルギー源としての生成とその消費がバランスしていれば問題を生じることはありませんが、急激な血糖値の変化にそのバランスが崩れてしまうと血液中の遊離脂肪酸濃度を高めることになります。
 緩やかな血糖値の上がり方なら良いのですが、急上昇と急降下を繰り返すような食事をしていると太りやすいのです。上がりすぎた血糖値を下げるためにインスリンが頑張って中性脂肪をたくさん作ってしまうということなのです・・・
 また、急上昇急降下の食べ方はすぐにお腹が空くので、食べる量が多くなってしまいますし、いつも大量のインスリンを出していると膵臓が疲れてしまい糖尿病になりやすくなってしまいます。
 インスリンの過剰分泌を起こすと、必要以上に細胞内にリンが取り込まれて血液中のリン濃度が低下し、低リン血症を起こします。低リン血症になるとマグネシウムは腎臓から尿とともに多く排泄されます。このように、インスリンの過剰分泌もマグネシウム不足を起こす原因となります。


 肥満の人が健康を願うのであれば、何よりも標準体重(BMI:一25 以下)まで減量することが第一優先です(スポーツなどで筋肉体質な人は別として)。
 肥満であればあるほど、ミトコンドリアの増殖は抑えられてエネルギー代謝が少なくなり、さらに肥満になりやすくなるという悪循環に陥ります。
 食事はカロリーのとり過ぎに気をつけるとともに、いつも満腹でいるのではなく、次の食事の前には必ず空腹を感じるようにすることです。食事からブドウ糖の供給がなくなれば空腹感を感じ、体に蓄積されているグリコーゲンや中性脂肪からのエネルギー代謝が開始されます。このとき、ミトコンドリアは栄養分が不足してきたことを認識して数を増やそうとするのです。ですから間食はダメです!
 さらに、空腹時の運動は軽いものであっても、ミトコンドリアをより刺激することになり、効率よく数を増やすことにつながります。
 小断食(三度の食事を一度程度抜く)は、ミトコンドリアを刺激するのに有効な手段ですが、2日を越える絶食は、刺激ではなくミトコンドリアの死滅を招く可能性があり逆効果です。朝食を「万能健康ジュース」に変えること”は、日常的に軽い刺激を与えることになり、ミトコンドリアの活性化に有効です。


 標準体重以下(BMI一20 以下)の人はカロリーを制限する必要はなく、むしろ摂取カロリーを増やす必要がありますが、それでも間食は控えて、さらに空腹時には軽い運動をすることが、ミトコンドリアの数を増すためには効果的です。
 食べ物では、ブドウの果皮(赤ワインにも含まれる)やピーナッツの薄皮に含まれるポリフェノールの一種レスペラトロールに、カロリー制限と同じような効果があり、ミトコンドリアの数を増すといわれています。また、大豆や大豆製品に含まれるタンパク質成分のβコングリシニンや、黒豆の皮に含まれるアントシアニン、トマトなどに含まれるリコピンもミトコンドリアの数を増す効果があるといわれています。
 脂肪細胞から分泌されるホルモンの一種、アディポネクチンには、ミトコンドリアの数を増やす効果があるといわれています。これも肥満になれば分泌量が減り、減量すると増えます。標準体重でいること、きちんと空腹感を感じることが、ミトコンドリアを増やす最良の方法なのです。


 逆に言えば、食べ過ぎはミトコンドリアの働きを悪化させます。


 さらに活性酸素・マグネシウム不足は細胞にインスリンが効きにくい状態(インスリン抵抗性)を高めて、それにより糖尿病や動脈硬化を引き起こしやすい状態をつくるという悪循環になります。
 インスリンが効きにくい状態(インスリン抵抗性)は、それ自体で「酸化ストレス」を促進すると言われています。
 これらによって引き起こされる炎症反応は活性酸素の増加や細胞の酸化を促進する要因になります。
 血液中に溢れる遊離脂肪酸も直接的に酸化ストレスを増加させる要因になっています。
 血液中に大量の遊離脂肪酸があると、血液の酸化が亢進します。
 また、脂質が酸化されると細胞が障害されてしまいます。
 細胞を包む膜の活性酸素産生、細胞内のミトコンドリアでの活性酸素産生も促進します。
 また、肥満化した脂肪細胞からは様々な生理活性物質(アディポカイン)や炎症を引き起こす物質(炎症性サイトカイン)が分泌されます。
 これらの生理活性物質や遊離脂肪酸などが合わさって、身体の「酸化ストレス」を促進する要因となり、全身の障害を招くことになるのです。


  いわゆる「酸化ストレス・炎症体質」は食事法によっても形成を阻止することができるということです。そしてこの食事法は、片頭痛体質の形成阻止だけでなく、生理痛、糖尿病、肥満、花粉症・アレルギー性鼻炎などのアレルギー性疾患、高血圧・癌などさまざまな生活習慣病の体質改善や健康・美容を維持するための最も共通した基本となる食事のとり方だということができます。


 そこで、誰にでもできる“正しい食事のとり方”をご紹介しましょう。
 その“鍵”となるのが「インスリン」です。「インスリン」は「糖質」や「タンパク質」をとった際に分泌されます。「脂質」はインスリン分泌を促しません。
  タンパク質の刺激によるインシュリンの分泌は、糖質の時のように“一度にドッと”という分泌の仕方ではなく、消化が終わるまでダラダラと長く続きますので、無駄な分泌は少なく、食事量に見合ったインスリンが分泌されます。
  なお、インスリンは血糖値が高くなった時に血糖を下げる唯一のホルモンですので、血糖を必要以上に上げすぎないことが改善のポイントとなります。


 そこで、“一度にドッと”分泌し過ぎないためには、次のように食事を心掛けることです。

 
 ⅰ、単品に近い食事のときは血糖上昇の緩やか食品を選ぶこと、複数の食品の食事では血糖が上がりにくい組み合わせにする(インスリンを過剰に分泌させない)
 ⅱ、食品の消化・吸収の速度が早くなりすぎないように食事をとる(滞胃時間、食べる順番、咀嚼(そしゃく)時間などで調整する)
 ⅲ、血糖を上げない甘味料(難消化性糖質、オリゴ糖など)などを使用する


インスリンの過剰分泌を抑える食事法とは?


 糖質は消化されると、ブドウ糖や果糖、ガラクトース(乳糖の一成分)といった最小の単位まで分解され、体内へ吸収されます。ブドウ糖はインスリンの分泌を強く促し、血糖値もすぐにあがりますが、果糖やガラクトースはインスリンの分泌を強く促すことはありません。
 また、果糖やガラクトースは吸収後に直接エネルギーとして活用されたり、一旦中性脂肪に変換されたりしたあと、必要に応じてブドウ糖として血液中に放出されるため、食後すぐに血糖値が上がるということはありません。
 食品にはさまざまな種類や量の糖質が含まれていますが、食品によって消化や吸収の速度も異なってきます。
 糖質の中でも消化されやすく、消化したあとにブドウ糖を多く生成するものは血糖の上昇は大きく、消化速度が遅いものや消化したあとに果糖やガラクトースを多く生成するものは血糖をすぐに上げることはありません。


 そこで、実際の食事においてどの食品がどの程度血糖値を上げるかを知るために「グリセミック指数(GI)」が用いられることがあります。GIはブドウ糖や食パンをとった際の血糖上昇値を基準(100)として、それぞれの食品の数値を相対的にあらわしたものです。GI値の大きいものほど消化吸収が早く、また血糖の上昇も大きくなります。
 また、調理法によってもGI値は大きく変わります。たとえば同じ白米でも、焼き飯にするとカロリーは高くなりますが、消化吸収に時間がかかるため血糖の上がり方は緩やかになり、お茶漬けにするとカロリーは低くなりますが、消化吸収が早いので血糖の上昇は急激になります。
 ですから、同じカロリーになるように計算された食事Aと食事Bを食べても血糖の上がり方はまったく異なってきます。つまり、血糖値は摂取したカロリーで決まるのではなく、さまざまな栄養素の組み合わせや調理の仕方などで決まるということです。
 片頭痛を治すためには、インスリンの過剰分泌を抑制して〝錆び体質〟から脱却する必要があります。


 そのためにGI値を活用して理想の食事を導き出せばよいのですが、それは簡単なことではありません。食事の組み合わせは無数にあり、またGI値も調理法や体調(絶食、運動、休養などにより異なる体内グリコーゲンの蓄積状況など)によって変動しますので、あくまで目安にしかならないと覚えておいてください。
 また、タンパク質や脂質も消化吸収後すぐにブドウ糖に変換されることはなく、いったんアミノ酸や中性脂肪などに変換されたあと、必要に応じてブドウ糖として血液中に放出されることになります。
 ただし、タンパク質は血糖値を食後すぐに上げる要因ではありませんが、インスリンの分泌は強く促します。タンパク質のとり過ぎも「酸化ストレス・炎症体質」を悪化させる要因にもなりますので、充分に注意してください。


 健康であるための(食後の血糖値を上げすぎないための)、正しい食事方法とは?


 「インスリンの過剰分泌を防ぐ→〝酸化ストレス・炎症体質〟からの脱却→片頭痛が治る」という図式を実現するために、正しい食事のとり方を伝授します。


 さて、インスリンを過剰に分泌させないにはどうしたらよいか? ごくシンプルに考えるなら、食べ物がゆっくりと消化吸収されればいいのです。つまり――


   ◎咀嚼に時間をかける
   ◎滞胃時間をかける(胃から十二指腸までの移動時間)
   ◎消化吸収に時間をかける


 これができれば、血糖値が急激に上がることは理論上なくなります。しかも、ちょっとした工夫でそれが可能なのです。ではご説明しましょう!


滞胃時間を適正にする!


 順番は逆になるのですが、先にこちらの説明をします。
 食後の血糖の上昇を左右するのは、じつは食べ物が小腸で消化吸収されやすいかどうか以上に、胃から十二指腸に送り込まれるまでの滞留時間(滞胃時間)にポイントがあります。たとえば、栄養素では糖質(炭水化物)よりもタンパク質のほうが2倍長く時間がかかります。一緒にとればその分、血糖の上昇が緩やかになります。
 また、脂質に注目すると、一般の油脂に含まれる脂肪酸は分子が大きくなるほど胃の働きを抑制して滞胃時間を延ばします。分子の大きい肉類の脂のほうが、分子の小さい魚の油よりも胃の働きを抑制する効果が大きいのです。このように、油脂には血糖を上げやすい(GI値が高い)食品と一緒にとると、血糖上昇を緩やかにする働きがあります(「お茶漬け」よりも「焼き飯」がその例)。
 それは酢酸や乳酸のような分子の小さな脂肪酸でも同じです。酢の物や乳酸飲料、乳酸食品などを食べると滞胃時間が延びることになります。
 さらに、調理法によっても変わります。たとえば卵の滞胃時間は、半熟卵では約1.5時間、生卵では約2.5時間、ゆで卵では約3時間となります。ジャガイモの場合には、焼きジャガイモにするとブドウ糖を飲んでいるのと同じくらいの速度で消化吸収されてしまいます。したがって、焼きジャガイモを食べるときにはサワークリームやバターなど、胃の働きを抑える働きのあるものを一緒に食べたり、ステーキなどのタンパク質・脂質の豊富な食品と一緒に食べたりすることで、適正な滞胃時間に調整することができます。
 さらにジャガイモに関していうと、ゆでる、フレンチフライにするといった調理法によってもGI値を下げることができます。


咀嚼(そしゃく)に時間をかける!


 咀嚼(そしゃく)には食物を細かく砕くとともに、食物を選別(魚の骨など食べられない物を除く)し、飲み込みやすくするだけでなく、次の効果が期待できます。


・消化液の分泌をよくする
・食欲の中枢神経を刺激し、食べ過ぎを抑制する
・あごの発達や歯を丈夫にする
・大脳を刺激し認知症を予防する
・集中力を高めストレスを緩和させる
・目のまわりの血行をよくし視力低下を予防する
・虫歯や肥満の予防をする


 このようなことから、食べ物は大いに噛んでいただくことをお勧めします。
 ところで、むかしから、消化吸収には「よく噛んで食べること」が推奨されていますが、じつはやたらと噛めばよいというものでもないのです。
 ほとんどの食べ物は空腸(小腸の前半)で消化吸収が終わります。ここまでの時点での消化速度を見ると、食物繊維を多く含むもの、糖質を多く含むタンパク質(豆類など)、アミロースの多い穀類(インディカ米など)、難消化性糖質など、もともと構造的に消化しにくいものほど消化吸収がゆっくりで、つまり咀嚼の程度にはほとんど関係なく、食べ物によって最初からある程度決まっています。
 咀嚼(そしゃく)の程度ではなく、食べ物自体の消化吸収のしやすさで決まってしまうということなのです。
 ただし、アレルギー皮膚炎やアトピー性疾患などのようにアレルゲンとして未消化物がとなる可能性が高い場合には、空腸と内容物との接触時間をできる限り短くするためにもよく噛む方が極(ごく)わずかかもしれませんが好ましいのかもしれません。
 いずれにしろ、咀嚼(そしゃく)に時間をかけるということは、消化吸収までの時間を長くすることになりますので、食後の血糖値の急激な上昇を抑えるためにも悪いことではありません。
 また、咀嚼(そしゃく)に時間をかけるようにするためには、調理の際に根菜類、肉類などは具材を大きめに切ることや、具材を軟らかく調理し過ぎないこと、丼ものにしないことなどの工夫をすると良いでしょう。
 利き手と逆の手で食べると早食いを避けることもできます。
 結局、食後の血糖の上昇を抑えるには、咀嚼(そしゃく)に十分に時間をかけ(早食いをせず)、糖質(炭水化物)だけの偏った食事にならないように、タンパク質、油脂(あぶら)分を考慮した調理・摂り合わせをし、滞胃時間が短くなり過ぎないようにすることが大切ということになります。
 大切なのは、食べても直ぐに空腹にならず、胃もたれもなく、次の食事の時間の30分程度前にお腹がやや空(す)くように、糖質、タンパク質、脂質、食物繊維などを適正に組み合わせることが血糖の上昇を抑える最良の食事法ということができます。
 脂質を多くすると滞胃時間を長くすることができ、食後の血糖の上昇を抑制することは出来るのですが、反面、滞胃時間が長くなりすぎると胃もたれなどを起こし、胃疾患や逆流性食道炎などの可能性を高めることになります。

 
食物繊維を摂る!


 食物繊維には消化吸収を遅らせる作用があります。特に玄米や全粒小麦などの食物繊維の多い穀類、タンパク質と食物繊維を多く含む豆類は消化吸収を遅らせます。
 たとえば、食物繊維を多く含む玄米(含有量約3%)は、食物繊維をわずかしか含まない精白米(含有量約0.5%)よりも消化吸収速度は遅く、食後の血糖上昇は緩やかになります。
 食物繊維にはいろいろな種類がありますが、その種類によって生理的な作用も異なっています。特に水に溶ける食物繊維と水に溶けない食物繊維ではその作用が著しく異なります。
 水に溶けない食物繊維として、セルロース(大豆、ゴボウ、小麦ふすま、穀類などに含まれる)、ヘミセルロース(小麦ふすま、大豆、穀類、野菜類など)、リグニン(小麦ふすま、穀類、完熟野菜類など)などがあります。
 水に溶ける食物繊維としては、ペクチン(リンゴやみかんなどの果物、芋類、キャベツや大根などの野菜類など)、ヘミセルロース(コンブやワカメなどの海藻類など)、ガム質(大豆やカラス麦などの麦類など)などがあります。
 水に溶ける食物繊維は一般的に膨潤性が高く吸着作用があり、水に溶けると粘りけが強くなりドロドロになるなどの特徴があります。
 一般に食物繊維の多い食品は噛み応えがあるため、咀嚼(そしゃく)に時間がかかり咀嚼(そしゃく)力が向上するとともに食事時間が長くなります。
 食物繊維は胃に入ると唾液や胃液を吸収して膨潤し容積を増し、小腸においてもさらに、水分を吸収して膨潤し、小腸内容物の容量を増やすとともに、ドロドロの状態にします。
 内容物の容積が増すと、その中に含まれている糖質は希釈されますので、消化・吸収は緩やかとなり、血糖の上昇も緩やかとなります。
 一方、水に溶けない食物繊維は有害な物質と結合したり、有害な物質を吸着する作用がありますので、カドミウムやPCB、ダイオキシン類などの環境汚染物質やタール色素、食品添加物などの有害物質の体内への吸収を防ぐことができます。
 水に溶けない食物繊維は有害な二次胆汁酸や酸化コレステロールなども吸着し排泄することができますので有害物質の排泄に適しています。
 しかし、摂りすぎは同時に有用なミネラルや油溶性のビタミン類なども排泄することは覚えておかなくてはいけません。
 食物繊維は体内の消化酵素では消化されないため、小腸を通過し大腸に到達します。
 大腸では食物繊維の一部は腸内細菌によって発酵分解を受け(水に溶けない食物繊維は発酵を受けにくく、水に溶ける食物繊維であっても海藻類はほとんど発酵されません)、酢酸やプロピオン酸、酪酸などの短鎖脂肪酸のほか、炭酸ガス、水素ガス、メタンガスなどに代謝されます。
 生成された酢酸やプロピオン酸、酪酸などの短鎖脂肪酸の一部は腸内細菌自体の増殖にも利用されます。
 一般的に、小麦ふすまなど水に溶けない食物繊維は便の量を増す効果(便秘解消効果)はありますが、血清コレステロール濃度を顕著に低下させるほどの効果は認められていません。逆に、グアーガムやペクチンなどの水に溶ける食物繊維は血清コレステロール濃度を効果的に低下させることはできますが、顕著な便秘改善効果は認められないことが多いようです。


食べる順番を考える!


 全く同じ食事をとっても、食品の食べる順番によって食後の血糖が上昇程度は異なることをご存知でしょうか?
 食べたものは胃などの消化器官内で一部は混合されますが、胃から先では原則的に「先に入ったものは先に出て行く」ため、先に食べた順に、十二指腸、小腸へと進みます。
 そのため、糖質(炭水化物)だけを先に食べると、食後の血糖は上がりやすくなりますし、逆に食物繊維の多い食品や脂質の多い食品などを先に食べると、食後の血糖上昇は緩やかになります。
ご飯の前に酢の物を食べる、パン食には牛乳やヨーグルトを一緒にとる、でレッシングのかかった野菜サラダなどを先に食べるといったことも、食後の急激な血糖上昇を抑えるのにはよい方法です。
「カロリーが同じであれば、食べてしまえば同じこと」にはなりませんので、日頃より消化吸収速度を考えた食べ方(順序)に気を配ることも血糖の上昇を緩やかにするためには大切です。
 食べる順番の違いが、中性脂肪の溜まりやすさや基礎代謝にも影響を与えることにもなります(ダイエット効果に影響する)。
 勿論、食事中は些細(ささい)なことは気にせず、楽しく、美味しくいただくことが第一優先であり、大原則ではあるのですが。

 

難消化性糖質、オリゴ糖などの甘味料を使用する!


 砂糖や麦芽糖(水あめの成分)、ブドウ糖などの甘味料は血糖値を上げやすく、インスリン分泌を強く促します。
 果糖はインスリン分泌の刺激は小さいものの、中性脂肪になりやすく、内臓脂肪として蓄積されやすいという特徴があります。
 私のお勧めは、オリゴ糖や糖アルコールなどの難消化性糖質です。甘味充分にあり、胃や腸の消化酵素によってブドウ糖などへ消化されることがなく、インスリン分泌を促進しないからです。
 また、これらの難消化性糖質が大腸に到達し腸内細菌により発酵されるときに生成する酢酸などの短鎖脂肪酸がインスリン分泌を刺激することもありません。
 そのため、オリゴ糖や糖アルコールなどの難消化性糖質を摂取しても血糖が上がることや血中インスリン濃度が上がることはありません。
 ところで、血糖を上げない甘味料といえばサッカリンやパルスイートなどの合成甘味料もあります。これらの甘味料は安全性などに疑問が残されていることや、天然に存在しない化学物質であることから、私はお勧めしていません。
 難消化性糖質であるフラクトオリゴ糖は、健常者がとっても血糖値ならびに血中インスリン濃度に全く影響を与えることはありません。
 難吸収性のキシリトールやソルビトールも同様な傾向を示します。また、吸収はされても体内で代謝されずにそのまま尿中に排泄されるエリスリトールも同様です。
 難消化性糖質は小腸で消化・吸収されることなく大腸に達し、腸内細菌(善玉菌)のエサとなります。
 善玉菌であるビフィズス菌などの勢力が優勢になると、病原菌の増殖が抑制され、さまざまな感染症の発症が抑えられる可能性が高まります。また、難消化性糖質が醗酵・分解されるときには、酢酸やプロピオン酸、酪酸などの短鎖脂肪酸が生成されますから、酸に弱い腐敗菌や病原菌などの悪玉菌が抑制されることになります。
 また、これらの短鎖脂肪酸は、全身のエネルギーとしての利用や、腸壁細胞の新陳代謝を促進し、大腸の蠕動(ぜんどう)運動(ミミズが這うように腸の収縮が連続する運動)を促進し、便秘の改善にも寄与します。
 また、悪玉菌が減少すれば、インドールやスカトール、フェノール、アンモニア、硫化物など腐敗物質の生成が少なくなり、肝臓での毒性物質代謝負荷が軽減されることや発癌・老化促進物質などの内因性有害物質の生成が抑制されることになります。
 同時に、糞便や腸ガスの悪臭も改善されます。
 また、フラクトオリゴ糖をとることより血液中の中性脂肪が低下し、血清コレステロール濃度が低下するという報告もあります(プロピオン酸の作用)。
 難消化性糖質を摂取すると、腸管内pHが低下しカルシウムや鉄などの金属イオン吸収が促進されるという報告もあります。
 オリゴ糖や糖アルコールなどの難消化性糖質は砂糖のような甘味料としての強い刺激はありませんが、甘味料としての役割は十分に備えていますので、砂糖との併用を含め日常的に用いることが好ましいでしょう。ただし、急に摂取量を増やしたり、摂りすぎるとお腹が緩(ゆる)くなったり、ガスが多くなることがあります(健康上に悪いことではありませんが)。


 以上のように、常日頃の食事の摂取の仕方によっても片頭痛体質である酸化ストレス・炎症体質が形成されてきますので注意が必要になってきます。
  いずれにしても、早食い・ドカ喰い・過食は、空腹時血糖と食後血糖の差が大きい「ブドウ糖スパイク」は、インスリン過剰分泌を来たし、肥満につながり、活性酸素を過剰に発生させ、ミトコンドリアの働きを悪化させることになります。


食べ過ぎ・過食の弊害


鶴は千年、亀は万年!?

 
 実はこれは理に適っているのをご存知でしょうか?
 亀は動きが遅く、エネルギーの消費が少ない徹底した省エネライフスタイルのため活性酸素の発生を大幅に抑えることができるのです。そのため、細胞へのダメージが少なく長寿でいられるのです。ちなみに鶴は、ミトコンドリアの数が多く、非常に多くのエネルギーを作るのに対して活性酸素の発生が少ないためだと言われています。なるほど!だから亀は長生きなんです!!


■お腹をすかせて若くなる「週末断食」のすすめ  


 自由に食べ物を食べさせた猿とカロリーを70%に抑えた猿との二つの群に分け、20年間比較した研究があります。カロリー制限した猿は、そうでない群に比べ、生活習慣病や老年病で亡くなる数が1/3程度で、しわや白髪が少なく、目の輝きも違っていたといいます。猿は人間と最も近い動物ですので、カロリーを抑えると若々しく長寿になると考えられます。
 しかし、実際に20年もの間、3割もカロリーを減らし続けるのは至難の業です。その後、研究は進み、総カロリーを減らすよりもミトコンドリアを増やし長寿遺伝子のスイッチをオンにすることが大切なこと、そしてミトコンドリアを増やすには、空腹感が最も重要であることも分かってきました。
 更なる実験の結果、20年間カロリーを7割に抑え続けるのと、週2日、30%のカロリーにすることでは同じ効果があることが分かりました。カロリー制限に捉われるとストレスに繋がりますが、毎日食事制限をしなくても、時々空腹感を味わう「プチ週末断食」をお勧めします。空腹になると体はもっとエネルギーを作らなければと認識してミトコンドリアを増やし、エネルギーを作ろうとするのです。
 難しく考える必要はありません。 平日は普段通りの食事を摂り、週末の1~2日だけ3割程度のカロリーにすれば良いのです。例えば朝は野菜ジュース、昼はざるそばなどの軽食、軽めの夕食にする程度で十分です。経験者の方はいずれも体調が良くなったと言います。但し、回復期が肝心ですから、回復期にはいきなり普通の食事をせずに徐々に普通の食事レベルに戻していくようにして下さい。

 

カロリー制限でミトコンドリアを増やす  


 このように、カロリー制限には細胞内のミトコンドリアを増やして活性化する効果があるといいます。
 健康で若々しく長生きするためには、この「ミトコンドリア」が元気であることが重要ともいわれますから、この面から見ても、カロリー制限は健康効果が高いと考えられます。


 ミトコンドリアは細胞内で、エネルギー源を作る仕事を担っています。
 私たちが食物から取り入れた糖分や脂肪などの栄養素と、呼吸で取り入れた酸素を利用して、効率的にエネルギー源である「ATP」を作りだします。筋肉に特に多く存在しています。
 お年寄りと若者のミトコンドリアを比べてみると、お年寄りの方がその量も少なく、機能も低下してます。
 私たちのすべての活動は「ATP」から放出されるエネルギーが元になってます。ミトコンドリアが活発に働いていて、しかも量が多いことが元気の秘訣ともいえるわけです。
 そして、その鍵を握るのが「AMPキナーゼ」という酵素です。AMPキナーゼはATPをコントロールしているといわれます。
 いつでも、体内のATP量をチェックしていて、少なくなればATP生産量を増やすように働きかけます。
 ATPが不足しているということはエネルギー不足ということです。ですから、脂肪の蓄積よりも、ブドウ糖を細胞内のミトコンドリアに運んで、より多くのATPを作るようにしていきます。
 それと同時に、ATP生産工場であるミトコンドリア自体の量を増やすようにも働きかけます。


●カロリー制限でミトコンドリアも増える


 カロリー制限でもミトコンドリアが増えます。


 カロリー制限をして摂取カロリーが減ると、当然、その材料であるブドウ糖(グルコース)の外部からの供給が一時的に減ってATP生産量も減ってきます。
 すると、それを感知したAMPキナーゼが活性化。この働きにより、先ほどのようにミトコンドリアを活性化させたり、量を増やしたりしていきます。
 また、カロリー制限をしていると無駄にたまった脂肪も分解されていきます。 脂肪細胞にたまっていた中性脂肪が少なくなっていくわけです。
 脂肪細胞は、ただ単に脂肪をため込むだけのものではなく、それ自身が生理活性物質を分泌しています。脂肪細胞に脂肪がたまりすぎてぶくぶくになっているときは悪玉物質、脂肪がたまっていないときは善玉物質が分泌されるようになっているのです。
 そして、善玉物質の1つに「アディポネクチン」というのがありますが、これがAMPキナーゼを活性化する働きも持っています。
 こうしてみると、”適度なカロリー制限”をすることは、二重にも三重にもいい効果が得られると考えられます。
 そういえば、女優の黒木瞳さんも、以前、笑っていいともに出演されていたときに、美しさの秘訣をタモリさんに聞かれて、「腹八分目とミトコンドリアを増やすこと」というのを言われていました。
 適度なカロリー制限「腹八分」にして、結果ミトコンドリアが活性化し増えてもいます。その結果が、今の黒木さんの若々しさ、美しさにつながっているのかもしれません。あの美しさをみれば、非常に説得力のある考え方です。


 これを逆に考えれば、食べ過ぎはミトコンドリアの数を減らしてしまうことになります。


 感染症以外のほとんどの現代病である生活習慣病(片頭痛、動脈硬化、ガン、認知症を含めて)は、「後天性ミトコンドリア病」と考えられていることを忘れてはなりません。