日本漢方と柴胡剤 | 漢方1日1歩のブログ

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1日生きるとは1歩進む人生でありたい(by湯川秀樹)の言葉のように、傷寒論や類聚方広義、勿誤薬室方函を参考に1日1歩づつ漢方医として成長していきたいと思っています。(実際に患者に処方するにあたっては添付文書を参照され、自らの診断と責任でご処方ください。)

日本漢方は柴胡剤を使いすぎるとよく言われる。私もその通りだと思う。和久田叔虎の『腹証奇覧翼』の柴胡桂枝乾姜湯の所にも


柴胡桂枝乾姜湯、近世諸家に流行するところ、病人胸脇満、腹中動あるものを見れば、復た表裏虚実審かにせざる者多し。宣なるかな。その治効の著名ならざること、学者これを思え。

(漢方1日1歩意訳 近年患者が胸脇苦満と腹部動悸があればたいして診察しないで柴胡桂枝乾姜湯を投与する医者が多い。嘆かわしいばかりでなく効果もなく、副作用もあるはずだ。)


とあり江戸時代にすでに柴胡剤の乱用があったことを伺わせる。私はある時期、柴胡剤が使えない環境にいた。小柴胡湯の間質性肺炎問題で、そこの院長の方針で、柴胡剤を出せない状況下にあった。しかし今考えてみると私にとってこれは大変良かったと思っている。柴胡剤を使わないで他の製剤で工夫する経験をいろいろさせてもらったからである。この期間に学んだ半夏厚朴湯や苓桂朮甘湯などの使用方法が今も私の診療を大きく支えている。しかしそれと同時に柴胡剤を使用できれば救えたかもしれない患者に申し訳ないことをしたと思っている。全ての人が無限の資材を使用して漢方治療できるわけではない。私は現在たまたま理解がある調剤薬局があり煎じ薬を処方できるが、エキス製剤しか使えない人もいる。しかしその限られた中でもがき苦しむからこそ成長できると思う。よくエキス製剤は弱いという人がいる。それは事実かも知れないが、エキス製剤で結果を出せない人は、残念だが煎じ薬でも結果を出せないと思う。少なくとも私が尊敬する漢方医は治療に効果がないことをエキス製剤のせいにしたことを聞いたことがない。


参考文献 腹証奇覧 全  稲葉文礼 和久田叔虎著 医道の日本社


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