ツール・ド・無一文
無一文の不思議な旅が始まった。
ツール・ド・無一文 第1ステージ
綾瀬(東京)~天王寺(大阪)
朝7時に目覚め、昨夜の酔いが醒めると同時に、大きな不安に襲われた。
「本当に無一文で行くのかよ・・・」
正直、「せめて1000円くらい予備のお金があってもいいだろう」とも思ったが、不幸なことに、ぼくは有り金全てを昨日社長に預けた財布の中に入れていた。部屋中を探しても、1円も出てこなかったのだ。キャッシュカードもない。これは・・・覚悟を決めるしかない。
青春18切符と共に、旅は始まった。
嬉しかったのは、昨晩栗城さんがtwitterでぼくのことをつぶやいてくれたおかげで、栗城さんファンの方々が200人近くぼくのことをフォローしてくれたことだ。「無一文の旅、頑張ってください」「四国に来たら会いましょう」励ましのメッセージが続々と届いた。お金はなくても、これだけの人が応援してくれている。少し安心感が生まれた。
しかし、早くも最初のアクシデントに遭遇する。
静岡に向かう電車の中で、ぼくは左ポケットに入れたはずの青春18切符が無くなっていたことに気が付いた。頭が真っ白になった。どうやらさっき熱海で急いで乗り換えたときに落としたのかもしれない。このまま知らないふりをして大阪駅まで乗り、改札だけどうにか言い訳をして出てしまおうかとか、色々と悩んだ。
栗城さんにもtwitterで助けを呼んでみた。「無一文な上に、青春18切符を失くしてしまいました。死ぬほど焦っています。」とつぶやくと、それに対して栗城さんは一言返事をくれた。
「おめでとうございます」
「ありがとうございます」と返事をして、ぼくは結局熱海まで電車で引き返すことにした。奇跡的に、ぼくの切符は熱海駅の落し物センターで見つかった。大きなタイムロスを受けたものの、やはり嬉しかった。「見つからなかったら、熱海からヒッチハイクで大阪へ向かうしかない」そこまで思いつめていた。
静岡を越え、豊橋で乗り換えをしていたときのこと。
突然後ろから「ちゃいにー?」と声をかけられた。なんと友人のしんやだった。しんやは鳥取に旅行していた帰りで、twitterでぼくの動きを追っていたらしく、「もしかしたらこの辺で会うかも」となんとなく思っていたらしいのだ。
ぼくが無一文だということを知っていたしんやは、鳥取で買ったというおいしい食パンを恵んでくれた。しんやありがとう!
ひたすら電車に乗り、疲労と空腹がピークに達してきた夜9時前、ようやく大阪駅に着いた。大阪駅から歩くこと3.6km。ぼくはとあるレストランへやってきた。
実は、twitterで「ご飯や寝所を提供してくださる方」とお願いをしたところ、このレストランで働く木村さんが「ぜひ来てください」と言ってくれたのだ。木村さんは、栗城さんを応援する『チーム栗城』のメンバーでもある。
『レストラン堺筋倶楽部』 昭和初期の銀行を改装したという、重厚感のある高級レストランだった。当時の金庫はそのまま残り、ワイン庫として用いられていた。
出てきたのはなんとも素晴らしい料理の数々・・・!!
シマアジのカルパッチョ
イエロートマトと飛騨のモッツァレラチーズのタリアテッレ
サワラのソテー
イチゴのムース
本当においしかった。木村さんとレストランで一枚。
その後、タコタコキングというたこやき屋さんにも連れて行ってくださり、心もお腹もいっぱいになった。帰りにはお水とお菓子まで頂いてしまい、木村さんには本当に感謝しています。
夜はまた別の方のお宅へ。栗城さんの広報担当の方が紹介してくださった、恵子さんのお宅へ。夜遅かったのに、旦那さんと一緒に歓迎してくれました(涙)
恵子さんも旦那さんも、今まで会ったことのないようなタイプの明るく温かい方だった。旦那さんの仕事の話が面白くて、「世の中には色んな人がいるな」と改めて思わされた。
栗城さんの繋がりに助けられ、無一文なのになんともドラマチックな一日となった。
「無一文」の体験がぼくに教えてくれることは何なのか。「豊かさ」の本質を求める旅が始まった。