慶応義塾大学大学院の髙木晴夫教授による、ダイヤモンド・オンラインに「古きよき日本」に戻るのは危険 日本企業の組織能力は進化できるか?という記事がアップされています。
「グローバル競争の只中で、多くの日本企業が取り残されているように見える。上場企業163社の調査をベースに、日本企業の組織能力に警鐘を鳴らす髙木晴夫慶應義塾大学大学院教授に聞いた。」ということです。
まず、
日本の特に伝統ある大企業は、これからグローバルな競争に勝ち残っていくことができるのだろうか? という危機感です。
さまざまな会社の新任取締役研修で講師を務めるたび、あるいは、経営幹部の方々とディスカッションを行うたび、また、経営者の方々とお話する機会を得るにつけ、漠とした不安を感じざるを得ません。(中略)
グローバルに事業を展開する会社の多くで、細分化された多数のビジネス別組織が部分最適に陥り、全体最適の視点が持てず、役員レベルで相互に議論する機会はまったくと言ってよいほどなく、組織間の壁が厚い。加えて、現状を打開するような抜本的な解決策や新しいビジネスモデルを、誰も提案できていない。そして、この問題の発生と解決について、経営として具体的な手が打たれていません。
として組織が全体最適の視点が持てないという課題をあげています。
そして、
日本企業の組織にフラット化・チーム化が導入されたのは米国に遅れること10年の2000年前後でした。注意すべき点は、日本企業は米国企業とアーキテクチャーが異なっていたにもかかわらず、それへの考慮が十分なされないまま、米国で先行した組織のフラット化・チーム化が日本に導入されたことです。加えて、しかも同時並行で、同じく米国から成果主義が日本に導入されました。(中略)
結果的にこの2つの組み合わせが多くの日本企業の組織の動きを悪くし、その現場でさまざまな問題を生じさせました。リストラによる人減らし、中間層への業務負荷の増大、現場の疲弊感、目標管理と業績評価の曖昧さ、昇進機会・成長機会の減少などがそれです。
と組織に起こっている問題点が提示されています。
その次のパラグラフでは、
(アーキテクチャーとは、との問に対して)組織が持つ基本構造のことで、欧米企業と日本企業とで対照的に異なっている部分があります。それを見分けるポイントは、企業の中で「仕事」がいかに定義されるか、そして、仕事をする「人」がどのように組織内に取り込まれるか、の2点です。(中略)
米国型分業の最大の特徴は、企業目標(経営方針や経営戦略など)を最上位の経営層が設定し、下位層に向けてブレイクダウンし、部分目標として現場にアサインすることにある。これがいわゆるトップダウンであり、仕事は職制を通じて上から下に定義されます。
また、基本的に米国型組織での採用は中途採用です。先に「仕事」が定義され、その仕事に必要な「人」が採用されるのです。こうして「仕事ベース」の組織構造ができていきます。
これに比べて日本の組織の特徴は、「仕事」ではなく、先に「人」に意識を向けます。組織に採用された人がその成長に伴って、仕事の範囲を広げ、仕事をつくり出していく。そして、人と人とのつながりによって、ときには組織の枠を超えながら仕事がなされていきます。これは、人ベースのアーキテクチャーの組織となります。この場合には、組織を形成する基準として、仕事ではなく人に注目することになる。仕事に人をつけるのではなく、人が仕事をつくっていくのです。
ということです。
これは、以前に取り上げた、濱口桂一郎氏によって述べられている「ジョブ型」「メンバーシップ型」のことですね。
「『仕事ベース』の組織構造」というのが「ジョブ型」、「人ベースのアーキテクチャーの組織」というのが「メンバーシップ型」のことでしょう。
で、一括採用にも触れらています。
日本の大卒一括採用では、採用した人間は始めのうち仕事ができません。入社後新人研修を受け、職場に慣れ、同僚上司の仕事を見つつ、自分の仕事のやり方をつくっていく。このことが毎年繰り返され、組織の下から上に向けて人が繰り上がり、仕事をするための人脈ツリーが形成される。
もう1つ重要な点は、人ベースの組織はトップダウンではなく、ボトムアップで動くということです。自分の部門はどのような目標でビジネスをするかについて、ボトムアップで目標が立てられていき、他部門から出てきた目標とすり合わせをする。
メンバーシップ型ではボトムアップになるかどうか、トップダウンのところもたくさんあるような気がしますが、高木氏はジョブが決まっていないので、人が仕事を作るから「ボトムアップ」と言っておられます。
そして、そのようなボトムアップで他とすりあわせしているような組織に「成果目標」などというものを持ち込んだ結果、「すりあわせしているような状態ではなくなり」、部分最適化してしまったということだそうです。
しかし成果主義が導入された以上、自分の報酬は目標管理シートに書いたことの達成度合いで決まってしまう。となると関連する人や部署、言ってみればチームのメンバーのことを熱心に考慮に入れてはいられない。どうしても自分の仕事を優先する。ここから日本企業にとっての新たな部分最適問題が起きてきたのです。
フラット化と成果主義を同時に導入した組織で「決められたことしかやらない社員が増えた」「助け合う風土、人を育てる風土がなくなってきた」といった声が聞こえるようになった背景は、組織のアーキテクチャーと人事施策の不整合によるところが大きかったのです。
ここまで来たら解決法をというところですが、
人ベースの中に上手に仕事ベースを取り込もうとする、すなわち、ハイブリッドを目指しつつある日本企業が見られるようになってきました。人ベースのよさを生かしながら、仕事ベース的な仕組みを入れようとする試みです。
一方で、拙速な成果主義導入の弊害に悩む多くの日本企業が、家族主義的な組織、年功序列的な人事処遇へと戻ろうとする動き、すなわち、古きよき時代への単純な回帰は、環境変化への対応にはならないだろうと危惧しています。
で終わってしまいました。続きは本かセミナーで、ということでなんでしょうね・・
私個人的には、昔ながらのメンバーシップ型の組織ではもはやグローバル化はできない、世界で競争できないんだよといっているように思えました。
じゃーどうすればいいねんということですが・・・
今の労働法制も日本企業の弱体化に寄与しているのですかね。そうであれば、抜本的な見直しをしないと国をあげて沈没していくのみということになるのでは。
政府は何をやっているのだということですが、その政府を構成している国会議員を選んでいるのはほかならぬ国民であり、国民にも多少の責任はあろうかと。
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