日本、買います 平野秀樹 | 読書は心の栄養

読書は心の栄養

主に自分の最近読んだ本の忘備録

日本、買います: 消えていく日本の国土/新潮社
¥1,470
Amazon.co.jp


日本の国土が他国と比べていかに無防備に買われているかを警告する本

日本では、国土を誰が所有しているかが実はよくわかっていない。
北海道庁が2010年、外資か否かを把握するため、
山林所有者へのアンケート用紙を一般企業2141社へ郵送した。
だが、ほどなく大量のアンケートが「宛先不明」の朱印とともに返送されてきた。
43%。実に、913社分である。
もともと北海道には不在地主が多い。
その不在村地主の占める面積は全道(市有林)の55%。
全国平均が24%だから2倍以上だ。
ーー中略ーー
おそらく、幽霊地主からは、税金も徴収できていないだろう。
ーー中略ーー
ここで強調しておきたいが、
土地売買をしたとしても登記簿の記載変更は義務ではない。
登記は地目変更したなら義務付けられているが、
所有者変更の登記は義務ではない。
登記しなくともよいのだ。
ついでに行っておくと、住所変更をしても登記簿上はそのままでよい。
ーー中略ーー
外資は「公図買い」をするからだ。
投機目的で山林などの土地を買収する場合、現地を訪れず、
登記簿に記載された公図を確認するだけで済ます。
次章で詳述するが、我が国で土地面積(実面積)が正確な地割図面は、
国土の一部しかない。
残りは不正確な図面、つまり公図しかない。

この公図がクセモノなのだが、そこに記載された面積が「小さめ」だ。
所有者は少しでも固定資産税を安くしたいから小さめに測量され、登録されている。
過去40年間の宅地や農林地の総データを見ると、公図面積は実面積に対して
79%と小ぶりになる。
山林だけを見ると、実面積の60%に縮んで登記簿に記載されている。

==============

そもそも、日本の土地法制はアメリカとは全く違う。
簡単にまとめれば、
①地籍(土地の境界、所有者の情報)が未だ5割しか確定しておらず、
②売買届出や不動産登記が不備であり、
③国境離島、防衛施設周辺など、安全保障上重要なエリアの
 土地取引や開発に関する規制が不十分である
一方で
④民法では土地の「取得時効」等が保障され、
⑤個人の土地所有権が現象的には行政に対抗しうるほど強い


===============

地籍は、読んで字のごとく「土地の戸籍」で、一筆ごとの土地の位置と面積、
所有者等を記したものだ。
ところが、大阪府の92%、東京都の79%にはきちんとした地籍がない。
正確に言えば、地籍調査が未了である。
ーー中略ーー
なぜ地籍調査が行われない、厭われるのか
①「縄のび」が補正され、実面積が増えて固定資産税が高くなる
②平時には表面化しない隣人との無用な争いを起こしかねない、
 寝た子を起こしてしまう
③自治体にとっては徴税漏れが明らかになってしまうし、
 利害調整に関わるリスクを背負い、トラブルに巻き込まれてしまう
④旧字界など触れたくない地歴を掘り起こし、差別問題につながりかねない

最後のは、部落差別のことを言っているのだろうか?よくわかりません

===============

今日起きている登記上のトラブルの原因

①昭和40から50年代前半にかけてのミニ乱開発に起因するもので、
 ブルドーザーで元あった地形を大きく改変し、そのまま分筆してしまったケース
②戦中に起こったもので、誘導路などの旧軍用地を強制買収された民有地が戦後、
 境界不明のまま返還された場合
 買収前の地権がそのまま残ったりして二重登記になるケースが有る。
 東京六本木には同類の地図混乱地域があり、森ビルは往生した。
③その他、自然災害や公共事業の後に起こるもので、登記手続きのし忘れ、放棄

=================

第一回沖縄投資セミナーは盛況で、だれもが上気していた。
ーー中略ーー
沖縄県の担当課員はそう胸を張った。
セミナーは上海市内の西郊公萬酒店において、2011年11月、県主催で行われた。
「沖縄国際航空物流ハブ事業二周年周知イベント」の一行事で、
電通がアテンドし、琉球銀行や沖縄銀行の頭取も同行した大々的なものだ。

==================

沖縄独特の投資物件として、軍用地がある。
「軍用地を買って資産作り!」
「低リスクで利回り3% 沖縄基地が生んだ優良投資物件」
ネット広告の例だが、軍用地は手堅い利殖として人気である。
ーー中略ーー
総額約918億円(2011年度)の軍用地料が国から軍用地主に支払われている。
それが小口化され、金融商品になっている。
もちろん合法であって、それ自体が禁止されているわけではない。
2005年頃から県外・国外への売却が見られるようになった。
外資が軍用地まで買収しているのではないか?
ーー中略ーー
国外在住の地権者は241名いるが、国籍は公表されていない。
これ以外にも①ダミーを使った外国籍の地主②日本法人を子会社とする外国法人
なども埋もれている事が考えられる。

ここまで
この広告は私が昨年末に沖縄を訪れた際によく見かけました。

=================

規制を強めようという国々も出てきている。
南米勢だ。
外資の買収に対し危機感を持ち、一歩踏み出した。
中国勢を中心としたランドグラブ(土地ダッシュ)に対抗しようとしている。

ブラジルでは、2010年に外国人の土地所有を規制強化した。
農地を外国政府に買われ、農産物を外国へ大量に流されるという恐れがあるためだ。
特に、海外投資を行う中国企業の7割が「国営企業」であることが、
ブラジルの懸念に拍車をかけた。
規制は、「土地はブラジル国内の企業を通じて購入する」ことを義務付けると共に、
「購入限界は一件につき、5000ヘクタールまで」
「同一国籍の投資家・企業が持つことができる土地は自治体面積の40%まで」
とした。
急増する外資に対抗する措置であったが、その後の海外からの投資は
すぐに冷えきったとウォール・ストリート・ジャーナルは伝えた。

アルゼンチンでは、善のうちの3.4から9.9%が外国人所有と推計されているが、
中国、中東からの買収圧力に対応するため、2011年夏、外国人の農地所有を
「一件につき、1000ヘクタールまで」とし、
「国内の農地全体の20%までに抑える」
という規制案が大統領から提案された。
「登記制度の改正」も提案された。
土地所有者を明確にするため、これまで各州や各地方でバラバラだった
登記の方法を改め、統一することにしたのだ。
2011年末、これらの法案は圧倒的多数で可決されている。

オーストラリアでは、中国石炭最大手の国有企業が豪州子会社を通じ、
1万5000ヘクタールの農地を購入した。
場所は肥沃な東南部のリバプール平原周辺。
目的は石炭資源採掘のためとされたが、2011年には食料安保上の議論も
国会上院で浮上し、外資の農地買収について、国は実態調査に乗り出した。

ニュージーランドでも国内牧場を保護するため、
2010年より外国人の農地取得計画に閣僚のチェックを加えている。
また事案によっては、さらに厳しい規制策も講じている。
2012年、政府が一旦承認した案件に、裁判所が待ったをかけたのだ。
予想外の展開に困惑したのは不動産業等を幅広く手がける中国の複合企業
(上海鵬欣)で、ニュージーランドの乳業用牧場を16箇所、合計8000ヘクタール
を買収しようと計画していた。
同社はボリビアの国営農場も買収しており、その承認に必要な要件は満たしていたとされる。