伊達政宗公の美学 | 学芸員・大沢の研究ノート Second Season

学芸員・大沢の研究ノート Second Season

歴史博物館 青葉城資料展示館の学芸員・大沢慶尋の学芸活動のノート。日ごろの調査研究活動や教育活動、また個人的な日常の関心事や出来事などについて思うままに綴る。

 戦国武将。進退の危機に陥った時、やれることをすべてやり尽くし、クライマックスシーン(最後の場面)を迎える武将は多い。

 しかし、政宗はクライマックスシーンの前に「歌舞く(かぶく)シーン」を作り自らを演出する。最後の最後に美感ただよう一輪の花を咲かせて、それを見せるのだ。それはオーディエンス(聴衆)がいることを意識してオーディエンスに対して歌舞くのであり、そのことで、最後の最後に聴衆を味方につける。

 
小田原参陣。石垣山の陣所での秀吉との初謁見時には、髪を水引で一束にし死装束姿で登場、控える徳川家康・前田利家をはじめとする諸大名、秀吉の重臣・側近らのオーディエンスの度肝を抜き、心を掴んだ。いや、天下人秀吉の心をも掴んだに違いない。
 
 
葛西大崎一揆の弁明のための入京では、金の磔柱を先頭に死装束姿の行列であらわれ、京童を味方につけた。

 
朝鮮出兵の京からの出陣では、きらびやかな軍装行列(写真)で京童を驚かせ心を掴み、「伊達者」と言わしめ味方につけた。伊達者軍装 

 
どんな最悪の状況下でも、どんなに劣悪な環境下でも、実は人は美しい花を咲かせることができるのだ。状況のせいにしてはならない。環境のせいにしてはならない。他人のせいにしてはならない。


美しき花は咲く場所を選ばない。ただ凛としてそこに咲くだけ。


伊達政宗の一生を通覧する時、私はそんな政宗独自の美学をそこにみる。


 
そして、わたしもまた、そうありたい! あなたにもまたそうあってほしい!

遅すぎることはない。それは今からでもいい。いや、最後の最後でもいいのだ。