残業代請求事件などでは,労働者が事実上待機しているような時間が休憩時間なのか労働時間なのかが争点になることがしばしばあります。
ここで,残業代請求の事件ではありませんが,タクシーの運転手が,客待ち時間を労働時間に含めると賃金が最低賃金法違反となると主張して,最低賃金法に定める賃金と支給額との差額を請求した事件があります。
この事件で,福岡地裁平成25年9月19日は,
タクシーの客待ち時間は,客が来ればいつでもタクシーを運行させるのであるから,タクシー運転手に対して労働契約上の役務の提供が義務づけられており,客待ち時間を含む長時間の駐停車を一律に休憩時間と評価することはできない。
他方で,タクシー運転手の休憩時間は,場所,時間帯や気候等の諸状況により乗客獲得見込みが異なるため,一定程度,タクシー運転手の判断に委ねざるを得ず,使用者において把握することが困難な特質があることに鑑みると,経営上の必要性から,使用者により事前に,客待ち時間の制限や客待ち場所の指定等の指導がされ,使用者の指導を超えた駐停車時間を,休憩時間と評価する就業規則等を定めることも,一定の合理性があるといえる。
とした上で,
使用者の指導を超えた駐停車時間を休憩時間と評価するには,①当該指導の内容が使用者の経営方針やタクシー営業の実態に鑑みて合理的であると認められること,及び②使用者から当該指導の内容について,職場の見える場所に掲示して周知する他,点呼等の際に,タコグラフ等によって把握できる各タクシー運転手の勤務状況に応じて,当該指定が遵守されていないタクシー運転手に対し,使用者の指定を遵守するよう個別に指導をする等,従業員であるタクシー運転手に対し,一般的な注意に止まらず,指導を超えた駐停車時間が休憩時間と評価されることが,実質的に周知されていると認められることが必要であるとするのが相当である。
としました。
この点,タクシー会社側は,
車庫以外で5分を超えて駐停車しないことを指導しており,これを超える駐停車時間は休憩とみなすことを指定していた
などと主張していたのですが,裁判所は,
駐停車時間が5分を超えた場合に,直ちに休憩時間とすることは,休憩時間と評価されないために,所定労働時間のうち休憩時間以外は被告本社車庫に帰るか,常に走行しながら客を取る,いわゆる流し営業しかできず,駐停車禁止に違反することがないタクシー待機所等での客待ちによる営業を事実上禁止することになる。しかし,タクシー待機所等での客待ちによる営業を禁止することは,タクシー営業の現在の実態に鑑みれば一般的とは言い難く,このような被告の指導の内容に合理性は認めがたい。
などとして,このケースで,客待ち時間が労働時間に当たるとしました。
確かに,待機所等で客待ちによる営業を禁止するというのは,不合理ですよね。
ちなみに,このケースでは付加金の請求も認められています。
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