夫婦の収入の差が大きくても,財産分与は折半か? | 弁護士吉成安友のブログ

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荒川区西日暮里に事務所を構える弁護士。
大分県豊後高田市の若宮八幡神社の宮司を900年務める家に生まれ,神職資格を持つ。
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 この土日は2週間ぶりの休みで,今日は一日家でのんびり・・・というわけにはいかないのが,神職修行中のつらいところ。

 ジムに行った以外は家にいたんですが,レポートを・・・

 それはさておき,久しぶりに行列のできる法律相談所を見てたら,相変わらず劇的に縮小されている法律ネタが,離婚時の財産分与。

 事案をまとめると,だいたい次の感じ。

①結婚時に,生活費は折半にする,夫も家事を手伝うと約束した。

②しかし,夫は10年間,家事を一切手伝わなかった。

③離婚時の夫婦の貯金(結婚生活中に貯まったものという趣旨だと思われます)は1000万円。

④夫が年収200万円,妻が年収1000万円。

 で,離婚する場合に,③の貯金は折半になるかということ。 
 
 行列の弁護士軍団の見解は,2対2で割れました。 

 では,ロックな弁護士の見解は?

 ずばり,折半になると思われます。

 これは多くの裁判例などからもいえますし,私自身が多数の離婚事件を扱った経験からも実感されますが,共有財産を2分の1で分けるというルールの変更は相当に困難です。

 夫が家事を行わず,収入に800万円の差があった程度では,まず変更されないと思われます。

 今回,結婚するとき,家事を手伝うという約束と生活費を折半にするという約束をしていたという話が出て,一方で,10年間家事を一切手伝わなかったという話だけ出てくるということは,生活費はちゃんと折半にしていたという前提でしょうし。

 2分の1ルールが変更された事案としては,福岡高裁昭和44年12月24日のケースが有名です。
 
 これは夫が開業医のケースで,夫名義の財産がプラマイで9千数百万円くらい,夫の経営する医療法人の財産も考慮されてこれがプラマイで600万円くらいで,合計1億円くらいあったケースで,2000万円の財産分与となりました。

 判決文を一部引用すると

一審被告(*夫)が前示の如き多額の資産を有するに至ったのは、一審原告(*妻)の協力もさることながら、一審被告の医師ないし病院経営者としての手腕、能力に負うところが大きいものと認められるうえ、一審原告の別居後に取得された財産もかなりの額にのぼっているのであるから、これらの点を考慮すると財産分与の額の決定につき一審被告の財産の二分の一を基準とすることは妥当性を欠くものといわざるを得ず

としました。

 このケースは,実質的に夫の個人経営の医療法人の売上(診療収入)が1億を超えていたケースなんですが,昭和40年代前半って,大卒の初任給が,2~3万円の時代です。

 これで,さすがに折半は・・・ということになったといえます。

 なお,財産分与は,別居時を基準とするのが通常ですが,このケースでは認定された財産が別居後のも含んでいるようで,必ずしも共有財産が1億円と認定しているわけではないともいえます。

 いずれにしても,このケースほどではないにしても,相当極端なケースじゃないと大きな変更はされない(大抵は変更もされない)のではないかと思います。

 ところで,今回の行列の事案で,夫が生活費を負担していなかったらどうなるか?

 この場合,貢献度とは違った観点ですが,婚姻費用(生活費)の清算の可能性がなくはないかもしれません。

 実際,最高裁昭和53年11月14日判決は,

離婚訴訟において裁判所が財産分与の額及び方法を定めるについては当事者双方の一切の事情を考慮すべきものであることは民法七七一条、七六八条三項の規定上明らかであるところ、婚姻継続中における過去の婚姻費用の分担の態様は右事情のひとつにほかならないから、裁判所は、当事者の一方が過当に負担した婚姻費用の清算のための給付をも含めて財産分与の額及び方法を定めることができるものと解するのが、相当である
 


としています。

 一方が過当に生活費を負担していた場合,財産分与において清算される可能性があるわけです。

 とはいえ,実際問題としては,どういった状況で,どの程度で過当といえるかなどの点でなかなか難しい部分もあります。

 また,過去の生活費の支出状況を証明していくのは簡単ではないのが通常かもしれません。



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