カルボシステイン(ムコダイン)の痰への効果は?
カルボシステインの主な働きは「痰自体を変化させ外に出しやすくし、気道の粘膜を正常化する」作用があります。
(気道粘液修復薬)さらに、痰の量も抑える効果を持つのが特徴です。
痰は94%が水分で残りが「ムチン」という糖成分で構成されています。
普段はムチンの中の「シアル酸」と呼ばれるムチンの割合が多くサラサラしていますが、
ウイルスや細菌感染など気管支に異物が侵入すると「フコース」と呼ばれる成分が増加して、
粘り気の強い痰に性状が変化します。
粘り気の強い痰は異物を絡めとるのには最適ですが、あまりに粘り気が強くなったり、
外へ送るために必要な気道粘膜の「線毛」の運動が低下すると、痰そのものを外へ出すことができません。
カルボシステイン(ムコダイン)は
- 痰の「シアル酸」と「フコース」の構成比を正常化して、正常な生理的気道液に近い状態にする
- 痰を外にだす「線毛運動」の機能を改善し、線毛細胞の減少を抑える
働きをもっており、痰をスムーズに外に排泄するのを助けます。
カルボシステインは特にタバコによる慢性気管支炎(COPD)に対して、
多くの有用性が報告されており、効果も非常によく確認されている薬の1つです。
ちなみにカルボシステインは中耳炎に対してもよく使用されます。
カルボシステインには耳管の粘液線毛輸送能を改善したり、粘膜を正常化し、中耳貯留液を排泄させる働きがあるからです。
この働きはカルボシステイン特有のため、例えば「耳がこもった感じがする」という方は
カルボシステインが適しているといえます。
アンブロキソール(ムコソルバン)の痰への効果は?
カルボシステインは痰そのものの性状を変化させるのが主体なのに対して、
アンブロキソール(ムコソルバン)は「気道粘膜の滑りをよくして痰の排出をうながす薬」です。(気道粘液潤滑薬)
人間には、粘り気のある痰でも外に出しやすくするためのシステムが元々備わっています。
1つは前述でも軽く触れた「気道粘膜の線毛運動」です。
気道粘膜は実際には多くの毛がびっしり生えており、外へ外へ痰を送り出すように動きます。
もう1つは「肺サーファクタント」と呼ばれる表面活性物質です。
1つひとつの肺胞の表面を覆い、表面張力を弱めることで肺胞を膨らみやすくしています。
さらに、痰や気道粘膜の潤滑油の役割も担い、線毛の運動を活性化します。
アンブロキソール(ムコソルバン)では、肺サーファクタントの分泌を促したり、
線毛運動を活性化させることで、痰を排泄させやすくします。
そのため、痰の性状を問わず痰を排出を容易にします。
アンブロキソールは40年以上使用され、多くの臨床試験で慢性の気管支炎や局所の抗炎症作用が確認されている薬です。
去痰薬(ムコダイン・ムコソルバン・ビソルボン)の違いのまとめ
以上のまとめを再揚すると次のようになります。
去痰薬であるムコソルバン・ムコダイン・ビソルボンの大まかな使い分けとしては
- 痰の量自体を抑えて、正常なサラサラの状態にさせる場合はカルボシステイン。
- また副鼻腔炎や中耳炎などを合併していると考えられるときもカルボシステイン(ムコダイン)。
- 肺や副鼻腔の環境を改善することで、粘度を保ちながら出しやすくさせたい場合は、アンブロキソール(ムコソルバン)
- 非常に硬くて出しづらい痰が引っかかっている場合は、ブロムヘキシン(ビソルボン)
上記を見るとわかる通り、
ムコダインやムコソルバンはかなり違う作用機序のため、
両者を併用すると「痰の性状や量を押さえながら痰を出しやすくする環境を整える」ということでさらに有用になります。
そのため、特に痰のからみが強い場合はしばしば併用して処方することもあります。