トントン・ヴィラージ | 流れ星ネコのまた旅日記

トントン・ヴィラージ

Y氏「今度トントンへ行きましょう。おやじの園ですよ」
ワシ「いいねえ、おやじの園」
Y氏「ええ、いいですよお。店のおやじの腹を叩くのが挨拶なんですよ。腹が出てるんですよ」
K嬢「お腹を叩き合うんですか?」
Y氏「いえ、ボクが一方的に叩くんです」
 お互い叩き合うのじゃないの?Y氏のお腹を見て思うが、黙っている。ハンドルを握っているK嬢も黙って運転している。
 チュニスの郊外、高級住宅地ラ・マルサにお住まいのご夫婦の帰国お祝い大パーティ、しこたまご馳走になった帰りである。

K嬢「えーと、おやじって群れるんですか?」
 前後の脈略のないことを突然言い出すのがこの人の得意技である。
Y氏「何ですか?人をなんかの動物の群れみたいに。失礼な」
K嬢「いえ、違うんです。私も群れるのが好きなんです。最初は男の人は飲むのが好きなのかなと思ったんですが、本当は群れるのが好きなんですよね。実は私もそうなんです。私もおやじ化しているのではないかと・・・・」
 チュニスの夜の町を、K嬢の黒のプジョー206は疾走する。巧みにハンドルを切りながら、K嬢は実はおやじだったとカミングアウト・・・。
ワシ「ふーむ。そうだったのか」後部座席で頷く。
Y氏「K嬢はおやじだった・・・そうかもしれませんね」と直ちに納得。
K嬢「おやじは酒場で群れてくだを巻くんです」

 以上の経緯で『おやじの会』が結成された。

 会長はもちろんK嬢。
 会則は唯一つ。
「酒場に集まって酒を飲んでくだを巻く」
 おやじが群れてぐだぐだと愚痴を言って酒を飲む。
「もうやってられないっスよ」が合言葉だ。

その集会所が「トントン・ヴィラージュ」である。