景気は改善続くが先行き懸念 | 経済データ分析

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(2)短期傾向

~景気は回復傾向だが、足元では停滞し、先行きも懸念が残る~

【10/8】景気動向指数

     ・先行指数:99.1  前月比0.9ポイント低下(悪化)

     ・一致指数:103.5  前月比0.5ポイント上昇(改善)

     ・遅行指数:87.8  前月比0.4ポイント上昇(改善)

【現状の傾向・水準】一致指数は上昇傾向にあり、ピーク時・景気悪化前までほぼ回復。ただし10/4以降上昇ペース鈍化

【今後の見通し】欧米景気減速懸念・デフレ・反動減から、一致指数は上昇ペースが鈍化or低下の懸念あり。


<2010年8月について>

先行指数:99.1、前月比0.9ポイント低下(悪化)(2カ月連続低下)

一致指数:103.5、前月比0.5ポイント上昇(改善)(17カ月連続上昇)

遅行指数:87.8、前月比0.4ポイント上昇(改善)(4カ月連続上昇)


猛暑・エコカー補助金終了前駆込み需要により主に消費関連の指標が改善し、足元では景気は回復傾向にある(一致指数・遅行指数は上昇)。

しかし10/4以降は停滞している(一致指数は上昇ペース鈍化)。

さらに以下の要因から、企業業績悪化し、先行きは景気減速懸念が残る(先行指数は低下)。

 ・欧米景気減速懸念・デフレ継続・エコカー補助金終了の反動減→生産縮小・在庫積上がり

 ・円高進行株安→個人の資産価値下落→消費マインド低迷

具体的には、以下の通り(数値単位はポイント)。


(1)一致指数

一致指数:103.5、前月比0.5ポイント上昇(改善)(17カ月連続上昇)

猛暑冷房需要が高まり(以下①)、エコカー補助金終了前駆込み需要も重なって、企業業績は回復し(同②③)、雇用環境は若干改善した(同④)。

 【改善した指標】

  ①大口電力使用量             前月比1.6 寄与度0.32

  ②中小企業売上高(製造業)        前月比0.3 寄与度0.03

  ③商業販売額(小売業)(前年同月比)  前月比0.5 寄与度0.05

  ④有効求人倍率(除学卒)          前月比0.01 寄与度0.17


(2)遅行指数

遅行指数:87.8、前月比0.4ポイント上昇(改善)(4カ月連続上昇)

上記背景から、雇用環境の改善(以下①②)のみならず、個人消費も増加した(以下③)。

 【改善した指標】

  ①常用雇用指数(製造業)(前年同月比)           前月比0.2 寄与度0.52

  ②完全失業率                          前月比-0.1 寄与度0.46

  ③家計消費支出(全国勤労者世帯、名目)(前年同月比) 前月比1.7 寄与度0.23


(3)先行指数

先行指数:99.1、前月比0.9ポイント低下(悪化)(2カ月連続低下) 

欧米景気減速懸念、デフレ継続(以下①)、エコカー補助金終了による反動減から、企業の在庫が積上がる(同②)。また円高進行・株安(同③)により、消費者マインドが低迷する(同④)。その結果企業業績は悪化する懸念がある(同⑤)。

 【悪化した指標】

  ①日経商品指数(42種総合)(前年同月比)  前月比-3.1 寄与度-0.62

  ②鉱工業生産財在庫率指数           前月比1.3 寄与度-0.20

  ③東証株価指数(前年同月比)          前月比-6.9 寄与度-0.32

  ④消費者態度指数                 前月比-0.9 寄与度-0.31

  ⑤中小企業売上見通しDI             前月比-8.9 寄与度-0.69

<今後の見通し>(私見)

景気は回復傾向にあるため(※1)、各指数とも大幅に落ち込む可能性は低い

 ※1 実質GDP増減率(年率換算) 2010年4~6月期:1.5% 一応プラス成長は維持

ただし、上記の通り欧米中景気減速懸念(※2)、デフレ継続(※3)、猛暑・エコカー補助金終了前駆込み需要の反動減等から、先行きの景気は減速懸念が出てきている。

そのため、一致指数は停滞し、先行指数は低下が続く懸念がある。

 ※2 実質GDP増減率(同) 2010年1~3月期→4~6月期

     アメリカ:3.7%→1.7% 中国:11.9%→10.3% ユーロ圏:0.8%→3.9%

     米中は増加ペースが鈍化、ユーロ圏も南欧諸国は1%未満の低成長orマイナス成長が続く

 ※3 消費者物価指数(生鮮食品除く総合) 10/8:前年同月比1.0%下落(18か月連続下落)


<内閣府の基調判断>

11カ月連続で「景気動向指数(CI一致指数)は、改善を示している。」基調判断を据え置いた

ただし、「生産面が少し弱含んでおり(※4)、来月以降の動向を注視する必要がある」との見方も示した。

 ※4 生産指数(鉱工業)、鉱工業生産財出荷指数 ともに3カ月連続低下

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※参考:日米欧中の現状の景気動向の比較

  前提:日米中は景気動向指数の中の一致指数、ユーロ圏は16ヶ国の景況感指数

アメリカ:09年以降大きな落込みがない分、大きな回復もなく、100前後で停滞が続く

中国:09/10以降低下し、100を若干上回る程度

日本・ユーロ圏09/3以降回復が続いたが、10/4以降回復ペース鈍化し、100前後で停滞が続く。

つまり、各国・地域とも、景気は一定水準まで回復しているが、足元では景気回復ペースが鈍化している。
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