テツの雫。 | モデラー推理・SF作家米田淳一の公式サイト・なければ作ればいいじゃん

モデラー推理・SF作家米田淳一の公式サイト・なければ作ればいいじゃん

流浪のプログレSF小説家・米田淳一の公式ブログ

「一赤君、どうかね」

「この車輌限界いっぱいの丸屋根。
 後にブルートレインブームを生む青20号に3本の白線、そして静粛性を飛躍的に高めた集中電源方式の電源車、丸坊主と呼ばれる独特な編成後尾車の造作。
 連結されたルーメット、個室寝台車。
 これは、間違いなく20系「あさかぜ」初期編成。
 そしてこの図は、まちがいない。
 『鉄道黄金期』です」

「雫君は?」

「『永遠の、別れ』です。
 あの東京駅。雑踏のなか、別れを惜しむ見送り客の人々のさびしげな瞳。
 あのとき、母は私を抱くと、決意して、デッキに入り、そしてドアが閉まりました。
 そのときです。父と母が離婚したのは。

 鉄道マニアの父に母が愛想をつかして、かといって当時母が九州に帰るには列車しかなかった。

 そして、そのあとを継いだ24系のブルートレインも、次々と廃止されていく。
 皮肉な、永遠の、別れです」

「鉄崎湯他香は、この鉄道黄金期の写真を見て、こういった。
『20系が走らせたくなったな。牽引機はEF58で』」

 こんな馬鹿なことを考えた。

 お酒って、酔っ払っちゃうのが難点なんだよねえ。
 美味しいお酒があっても、たのしみに限界がある。

 奥深さは感じるけど。