野口悠紀雄 『「超」リタイア術』 (新潮文庫) | 還暦過ぎの文庫三昧

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 還暦を過ぎ、嘱託勤務となって時間的余裕も生まれたので、好きな読書に耽溺したいと考えています。文庫本を中心に心の赴くままに読んで、その感想を記録してゆきます。歴史・時代小説が好みですが、ジャンルにとらわれず、目に付いた本を手当たり次第に読んでゆく所存です。


 新潮文庫1月の新刊。基本的にハウツー物は読まないのだが、リタイア後の余生の過ごし方は喫緊の命題であるため、つまりはテーマに惹かれて読んでしまった。しかし、当然のことながら、これは個人ごとに対処すべきことで、一冊の本を読んで何かが変わるということでもないのだ。結論的に言うなら、お正月からつまらない本を読んでしまった。

 確かに、子育てを終え、住宅ローンも完済していて、所得は現役時代のピークから半減したと言え、夫婦二人の生活ならば多少の余裕は生まれている。貯蓄に励む必要も感じないので、自分の好きなことに費やすことのできるお金は増えているのかも知れない。問題は、自分の本当にやりたいことをどう発見するかだと思う。還暦を過ぎて、ビジネスの世界に新たに踏み出せる人はごく僅かであろう。会社人間として過ごしてきた身には、地域に溶け込むことさえ容易ではない。この本に期待したのはそういう悩みに対するハウツーであったけれど、大半が年金制度の不備の指摘に費やされていて、給与天引きで真面目に保険料を払ってきた者としては腹立たしい現実があるばかりで、今後の指針とはなりようがないのだ。

 それに、著者が指摘する在職老齢年金の矛盾にしても、自分はすでに嘱託となり、一般社員の4分の3以下の勤務日数となっていて、至急停止を免れている。会社の理解があってこそのことだが、この点は、著者が推奨する方法を既に実践していたわけで、その裏付けを得たに過ぎない。自分に直接関わることだから、素人だって研究はしているのである。

 自分の勤務先は完全週休2日制ではないので、週3~4日の勤務である。ということは、平日に必ず1~2日の休みがあるということだ。自分はその日をゴルフに充当することにしている。昨年は月に6~8回のラウンドをこなした。ホームコースならば5千円程度で遊べて、経済的な負担は軽いし、とても楽しい。そして、その他の時間の多くは、好きな本を読んで、こうして感想文を書いている。誰に頼まれたわけでもなく、また誰かに期待されているわけでもないし、時として書くという行為が苦痛を伴うのも事実なのだが、これはこれで、自分としては楽しみの一つなのだ。

 半分働いて半分遊ぶというこんな生活は、さて、この本の著者の推奨するリタイア術に適合しているのだろうか? 

  2007年1月2日 読了