【メモ】お墓の話
さて、今回は宗教抜きのお墓の話をしよう。
(1)お墓の歴史
お墓は、日本でも確かに昔からあったが、明治時代までのお寺と神社の複雑な関係などいろいろ事情があったため、現在のような形の墓地というのは明治時代頃が始まりになる。
明治7年以降公営墓地(青山・谷中・雑司が谷など)ができはじめ、都心だったため需要が高く、いっぱいになると大正12年に多磨霊園を作ることになり、さらには、八柱霊園~小平霊園と郊外に広がっていくことになった。
明治以降は一般人でも墓地を欲しがったためにかなり大掛かりに土地の開発がされてきた。
昭和23年に「墓地、埋葬等に関する法律」ができ、それまではほとんどが「土葬」(死体を土中に葬ること=「埋葬」)だったのに地区によっては土葬が禁じられ、「火葬」(死体を葬るために焼くことをいい、焼骨を墳墓に納めることを「埋蔵」という)しなければならなくなった。土葬が許可されている地区ではどちらか選べるが、都会ではほとんどが「土葬」を禁じている。
墓地のおける場所については、現在は、許可を受けた公営霊園と民間霊園、そして寺院墓地の3種類があり、基本的には個人で墓地を作ることはできない。
(2)手に入れる方法は?
その家族・家系代々の墓地があればいいが、分家(というのも古いが)のために墓地がないなどの場合は買わなければならない。ここでまず注意しなくてはいけないのは、墓地の敷地そのものの所有権を得るという契約ではないということ。「墓地として永代にわたって使用する権利」を買うことになる。だから支払うのは、代金ではなくて永代使用料になる。また、霊園等の全体も含む管理料を通常は年に1回払うことになる。
ひどく大雑把に言ってしまえば、3~4平米程度で以下のような金額になる。ただし、都心だともっと高いし、田舎だと安い。考え方は、普通の住宅と同じ。
永代使用料 年間墓地管理料
公営霊園 100万円 2,000円
境内地墓地 200万円 10,000円
寺院の霊園 150万円 6,000円
《注意》
・公営霊園は、条件が厳しい(居住要件、遺骨の有無など)。
境内地の墓地は少なく、かつ檀家優先。
・公営霊園は、どんな宗派でもOK。寺院経営の墓地は、
その宗派に限る。
・公営霊園は、石材店を選べる。寺院経営の墓地は、提携
している石材店に限る。
・・・ことなど。
(3)建墓の費用
墓を建てる費用は、結論からいうと100万円から300万円というところ。
ここ20年くらい前から、中国産の石を輸入している業者が多い。50センチ四方くらいの真四角な石を組み合わせて造るのだが、中国産だと原価1個あたり1万円以下。10個使ったとしても原価10万円以下+手数料、文字のデザイン料+工事費で100万円とは、安いかな?さらに、安い石だと(中国産に多い)半年も経たないうちに表面に油が浮いてきたりすることもある。「坊主丸儲け」という言葉があるが、石材店も水商売並みの利益率がある。冠婚葬祭関連業には誰もあまり文句言わないからね。
公営霊園であれば、石材店の指定はないので、見積を3~4社から取ったほうがいい。そして金額だけでなく、アフターサービスについてもしっかり見定めよう。
寺院墓地や民間霊園だと、ちょっと事情が違ってくる。石材店は競争相手がいないから、値下げをしない(シロート相手には、さもまけたようなフリはするが・・・)。ほぼ言い値で決まってしまう。
よって、条件さえあえば、公営霊園を強く勧める。もし条件が揃っていなければ、待っている方が賢明。
待っているうちに、いろいろ調べるといい。
(4)散骨について
散骨とは、焼骨を細かく粉末状にして海や山など故人が好きだった場所などに撒くことをいう。
これに関わってくる法律といえば「墓地、埋葬等に関する法律」というのが一般的だが、この法律では埋蔵は墳墓にしなさいということを規定しているだけで、散骨についての規定がない。したがって、ここでは、違法とはいえない。このことについては、非公式ながら厚生労働省も同法の適用を受けないとしている。
さらに、刑法190条に規定する遺骨遺棄罪にあたるかどうかについても非公式ながら、法務省は「節度をもって」すれば違法ではないとしている。
しかし、当たり前といえば当たり前であるが、他人の土地、他人が管理する場所には、所有者または管理者の許可が必要となり、これをしないと刑法第130条「住居侵入罪(ほとんど実例がない)」、廃棄物の処理及び清掃に関する法律第16条「不法投棄」として罰せられる可能性がある。
また、市町村条例で禁止しているところもまれにある。
例:北海道長沼町「長沼町さわやか環境づくり条例」第8条 何人も、墓地以外の場所で焼骨を散布してはならない。
※焼骨のすべてを散骨すると、あとで後悔することになる可能性があるので、遺族・特に親しかった人の了解を得た方がいい。
《追加情報(2009.1.10追記)》
埼玉県秩父市では、「秩父市環境保全条例」の改正により平成20年12月18日から「墓地以外の場所で、原則、散骨(焼骨を一定の場所にまくこと)をしてはならない。」ことになりました。