再生医療(5)突発性難聴の聴力回復 | 横山歯科医院

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[再生医療(5)突発性難聴の聴力回復]

(読売新聞  2011年3月8日)


京都府の女性Cさん(24)は2008年3月、通勤電車の中で異変に気づいた。
右耳が詰まった感じがして、音が聞こえないのだ。
仕事を終えて夜、近所の耳鼻科を受診。
聴力検査を受けると右耳はほぼ聞こえておらず、医師に「重度の突発性難聴」
と言われた。

この病気は国内で年3万5,000人に発症するとされ、原因は分かっていない。

翌朝1番で総合病院に行くと、即入院となり、7日間、突発性難聴の一般的な
治療であるステロイドの点滴治療を受けた。
完治する人は3割程度、5割で改善が見られるが、2割には効果がないと
言われる。

Cさんの場合、全く効果がなかった。
医師には「もう治療法はない。もし試すとすれば、高圧酸素療法か、京大
病院で臨床試験中の再生医療か」と言われた。


高圧酸素療法は高圧室の中で酸素を吸い血流改善を図るが、劇的な改善は
見込めない。

再生医療は研究段階で、実際の患者への効果も副作用も不明、との説明
だった。
迷ったが、良くなりたい一心で「再生医療を試そう」と思った。


京大耳鼻咽喉科講師の中川隆之さんによると、耳の奥の内耳には、カタツムリ
のような形の器官「蝸牛」があり、聴覚細胞が集まっている。

臨床試験中の治療は、この蝸牛に接する膜に、細胞の成長を促す薬剤
「インスリン様細胞増殖因子」をゼリー状の物質(ゲル)に含ませて張り
付ける。

突発性難聴は聴覚細胞が弱って起こると考えられるが、ゲルで張り付くことで
約1週間にわたって薬剤を蝸牛に作用させ、死にかけの聴覚細胞を元気にする
ことを狙う。


Cさんは発症から16日目、鼓膜に穴を開け、この治療を受けた。
内耳には平衡感覚に関わる器官もあるため、治療直後の数日間、めまいを
感じたが、1週間後には音が少し聞こえるようになった。
その後も聴力は徐々に回復、半年後には、ごく一部を除き、大半の音域の
聴力がほぼ回復した。

「多少の違和感は残るけど、日常生活に支障がなくなったのはうれしい」


京大病院では2007年から、発症1か月以内でステロイドが効かなかった患者
25人にこの治療を行ったところ、半年後に過半数の14人で聴力が改善した。
治療直後、めまい、外耳炎などが出た人もいたが、1週間程度で症状は
消えたという。


今年は9施設と共同で、突発性難聴の患者120人に対象を広げた臨床試験を
行う予定。
中川さんは「老人性難聴や、内耳に異常が起きてめまいなどの症状が表れる
メニエール病などにも有効かもしれない」と期待している。



<情報プラス>
【突発性難聴の患者を対象にした多施設共同臨床試験について】
  ・対象は、突発性難聴で、発症から25日以内の患者。
  ・京大病院耳鼻咽喉科では4月から、患者の受付を開始する予定。


臨床試験への参加を予定している施設は、ほかに8施設あるが、開始時期は
未定(3月8日現在)。
参加予定8施設は、弘前大病院、筑波大病院、虎の門病院、信州大病院、
名古屋市立大病院、神戸市立医療センター中央市民病院、愛媛大病院、
九州大病院。


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