【小説】本陣殺人事件 | 本を片手に街に出よう

【小説】本陣殺人事件



横溝 正史
本陣殺人事件

 角川文庫から「金田一耕助ファイル」というシリーズで再販されてたので、若かりしころ何度も読んだにもかかわらず、買ってしまった。

 帯には、綾辻行人の言葉「読んでいない、では済まされない。全人類必読の名作」といささか仰々しいコピーが。他のものを見ると、宮部みゆきやら、北村薫やら、著名作家のコピーがずらり。こっちのほうが興味深いぞ。

 この本陣殺人事件は、横溝作品に初めて金田一が出現した中編だ。
 その後の、獄門島、犬神家の一族悪魔の手毬唄などは言わずもがな映画化されているだけあって原作は映画以上に傑作だと思うが、この本陣殺人事件は初期の作品らしく、トリックは割とトンデモ発想、他の探偵モノの引用多数、といったステレオタイプな探偵小説っていう印象が強い。
 だが、事件の動機といったら、その後の金田一モノに通ずる、日本の因習、口伝、血縁の妙がどろどろに積層された、何とも言えない怨念の渦巻き具合。



 思うに、この昭和の時代、というか、太平洋戦争の時代は、戦国から江戸に連なる封建社会の矛盾と、明治維新後急速に発展した日本の社会の歪み、そして軍国主義で沸点を迎え米国に完膚なきまでに叩きのめされた喪失感、そういった時代の流れというか、背景が根底に横たわっていて、人の心を狂わせやすい土壌があったのだろうと推察する。

 そんな昭和史の暗黒面が、横溝作品をひきたてるのだ。

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出版社/著者からの内容紹介
 一柳家の当主賢蔵の婚礼を終えた深夜、人々は悲鳴と琴の音を聞いた。新床に血まみれの新郎新婦。枕元には、家宝の名琴「おしどり」が…。密室トリックに挑み第一回探偵作家クラブ賞受賞。(中島河太郎)
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