A.コンチャロフスキー「Maria's Lovers」 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
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A.コンチャロフスキー:Maria's Lovers(1984)
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Maria's Loversのナスターシャ・キンスキー

その美貌、肢体と媚惑美によって“脱ぐ女優”としてキワもの映画にばかり出演したせいで女優としての評価は極めて低かった。そのキンスキーが“脱がない”ことで実力をみせた作品。ペンシルヴァニア州ブラウンズヴィル。東欧系移民が大半を占める静かなこの町に、第二次世界大戦で日本軍俘虜を経験したイヴァンが帰国する。彼は幼なじみのマリア(キンスキー)の清楚で可憐な姿を思い描くことで、その過酷な収容所生活を耐えてきた。

しかし故国でイヴァンが出会ったマリアは、恋人と一緒の“キンスキーに成長した”媚惑的な姿だった。それでも、なんとかマリアを射止め結婚にこぎつけたイヴァンだったが、マリアを美化することで生命をつないだためか、現実のマリアを受入れることができない。戦後PTSDに悩まされるイヴァンはマリアへの愛を深めるほどに、彼女にのみインポテンツの症状があらわれ「あなたの子どもが欲しい」というマリアを抱くことができないのだ。

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Maria's Loversのポスター

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イヴァンとマリアの家族

イヴァンの父親役、ロバート・ミッチャムが老残の味をだしている。かつて、(今は亡き)マリアの母を愛していたようだ。結婚前のマリアに最初で最後のキスをねだっている。倅が許婚者を連れてきたら、じっとその娘の瞳をみつめて試してみるか。一発で破談か? さて、登場人物が交わす会話応対がなかなか予測できないのは、その表現の省略法によるものだろうが、小津的書割りな省略手法に慣れているせいか、(特に男女間において)日米文化の違いを感じないではいられない。お薦め作品。

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1980年来日時のものか?