東山魁夷作『道』―この絵に向かいあうといつも、これからも私の前に続いてゆくであろう道(=人生)を思い浮かべます。今はまだ、それがどんな道のりなのか見当もつきませんが、いずれそれはまだ先へと続いてゆく道です。

 でも、なんとなく予感するのです。いつかもっと齢を重ねてこの絵に向かいあう時、それは「これから歩んでゆく道」ではなく、「これまで歩んできた道」になるんじゃなかろうか‥と。今までを振り返って「あんなこともあったなぁ‥」「こんなこともあったなぁ‥」と思い出しながら、懐かしい気持ちになったり、ほろ苦さを感じたりするんじゃないか‥と。

 願わくはそれらすべてが「この人生の糧となり、豊かな人生を過ごすことができた―」と思えるものでありますように。

 そして、そう思えるようになるために、「今」を積み重ねてゆくことをこの絵は意識させてくれるように思えます…感謝…。


 この絵にふさわしい一編の詩があります。高校生の頃に出逢い、いたく心を打たれた詩です。

    『道』       松下幸之助

  自分には
  自分に与えられた道がある
  広いときもある
  せまいときもある
  のぼりもあれば くだりもある
  思案にあまる時もあろう
  しかし 心を定め
  希望をもって歩むならば
  必ず道はひらけてくる
  深い喜びも
  そこから生まれてくる


 響き合う「絵」と「詩」―。

 皆さまもどうか‘自分だけに与えられた’唯一無二の道を歩まれていってくださいね。

                                    Buona Fortuna!