舘野泉さんのこと その2

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ピアノの音色は不思議なもので、たとえ同じピアノを奏でたとしても、奏者によってその音色は驚くほど変わります。

ピアノは生命のない「もの」ですから、誰が叩いても(ピアノは打楽器!)強弱はあっても、音の質が異なるなんてことはありえない‥と、私なぞは素人考えで思ったりしてしまうのですが、実際にはそうではありません。

何かしらそのピアニストの持つ感性といおうか魂のようなものが反映されているように思います。

でも、その音質を言葉で表現するのは至難の業です‥。「温かな」「やさしい」「輝くような」「硬質の」etcetc‥どんなに言葉を尽くしても、それはあまりにも平凡で、その音色の質感を表しきれません。ある種言葉は有形で、音楽は無形なんですよね‥。あ‥魂も無形か!(笑)


舘野さんのピアノを聴いて感じるのは、その音‥音楽表現という方が正確なのかな‥に流れる繊細な詩情です。しっとりとした「大人の」情感‥。喜怒哀楽とかいうような大雑把な感情ではなく、微細なグラデーション(感情の襞‥とも言えるのでしょうか)で構成される「感情群」とでもいうべきもの‥。この辺りは日本人的な感性とも言えるのかもしれませんねぇ。

病を経て、その音色には更に何かが加わったことでしょうが(だってこれほどの復活劇があったのですから)、もともと舘野さんの音楽には豊かな詩情があるのではないかと思います。

それを感じさせるのが、この曲です。おそらく病に倒れる前に録音されたものでしょうが、きらめくような透明感の中に詩を感じます。

舘野さんは長年フィンランドに拠点を置いて活動してこられましたが、フィンランドの作曲家シベリウスの曲を聴くたびに感じる‘大地の息遣い’(それは詩のような物語のような感覚なのです)にどこかしら似ている気がして、舘野さんがフィンランドを選んだのは偶然ではないんだろうな‥などと思ったりします。

…でも私、フィンランドのことはほとんど知らないに等しくて、‘イメージ‘でしか捉えていないのですけれど…(失礼!)。

何はともあれ、この素敵な音の詩をお聴き下さいませ!

Buona Fortuna!

シベリウス作曲 『作品75《樹の組曲》より 第5曲 樅の木』 ピアノ 舘野泉
https://www.youtube.com/watch?v=eqaK-Iwbmuk
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