【小早川秀秋幻記】其の13 | 関ヶ原の合戦を演出した小早川秀秋

【小早川秀秋幻記】其の13

秀秋は朝鮮出兵の時にこの桃源郷の物語を

知り、桃源郷を理想の国づくりの基礎として、

末端の兵卒とも分け隔てなく付き合い、実現

させようとしていた。

秀秋は桃源郷の物語を話して聞かせた後、

続けて言った。

「桃源郷では戦がなく、食うものにも困らな

い。誰が上、誰が下と争うこともない。俺は

養子だから、もとはみんなと同じ。身分に縛

られるのはごめんだ」

秀秋は常日頃から身分の違いを気にせず行

動していた。

例えば、秀秋は暇さえあれば遊んでいるが、

それには数人のお供を従えただけの釣りなど

から大人数の大規模な獣狩りなどがある。

遊ぶ時は身分に関係なく連れて行き、みん

なで楽しんだ。

遊ぶといっても普通に楽しむためだけの遊

びではなく、遊びの中で兵卒との意思疎通を

はかり、部隊の動かし方や戦術を練り、精神

力を鍛えて身体能力を上げるのが本当の目的

だ。

また、鷹狩などは鷹の獲物に音もなく近づき

的確にしとめる姿を観察することで、無駄の

ない戦い方を学ぶことが出来る。

秀秋が戦では兵卒に混じり先頭に立って闘

うのも身分は関係ないことを行動で示すため

だ。

将兵達はそんな秀秋の気持ちを少しずつ理

解し始めていた。
                 つづく