【小早川秀秋幻記】其の4
この若武者がこの時十六歳の小早川秀秋。
その名を知らなくても関ヶ原の合戦で西軍
を裏切り東軍を勝利させたといえば分かるだ
ろう。
決断力がなく弱々しい若武者として伝わっ
ている秀秋の初陣は華々しく、今までの秀秋
像とは違和感がある。
ではなぜ今の秀秋像ができ、真実のように
伝わっているのだろうか?
そこには秀秋を心底恐れた権力者の謎が隠
されている。
秀秋は織田信長が本能寺で自害した年、秀
吉の正室、北政所の兄、木下家定の五男とし
て産まれた。
子供のいなかった秀吉の養子となり溺愛さ
れていたが、秀吉の側室、淀殿が秀頼を産む
と世継の役割がなくなった。そこで子供がい
なかった毛利輝元へ養子にするように薦めた。
秀吉が秀秋を輝元へ押しつけようとしてい
ることを知った輝元の家臣、小早川隆景はそ
れを阻止しようと、小早川家の養子として迎
えることを申し出た。
こんな事情があり、秀秋を小早川家の家臣
は受け入れ難かった。
秀秋の初陣となった朝鮮出兵でもしばらく
は統率がとれていなかったのはそのためだ。
しかし、蔚山城救援の活躍でいっきに信頼を
勝ち得た。
つづく