B級映画「マヌト」 | 関ヶ原の合戦を演出した小早川秀秋

B級映画「マヌト」

 日本海沿岸で定置網漁をしている光洋丸。
しかし、網を上げても大量のエチゼンクラゲ
がかかるだけで、漁にならなかった。
 このところ、エチゼンクラゲの大量発生で、
漁場はどこも、水揚げが落ち込み、深刻な事
態になっていた。
 この日は、最悪なことに、重油のような黒
くドロドロしたモノまで海を漂っていた。

 船長が、諦めて港に帰ろうとした時、突然、
重油のようなモノが固体に変化し、巨大な葉
巻のような姿になり、光洋丸に体当たりして、
粉々に砕き、破片を空に舞い上げた。

 光洋丸の乗組員は、全員海に引きずり込ま
れ、謎の物体はまた重油のようになって、沈
んでいった。
 
 光洋丸が港に戻らないので、仲間の漁船と
海上保安庁の巡視艇が捜索したが、船の残骸
らしき物を見つけただけで、乗組員は誰ひと
り発見できなかった。

 事件はさらに続いた。
 今度は、2隻の漁船が一度に行方不明にな
り、全身打撲でかろうじて生き残ったひとり
の乗組員が、とてつもなく大きな鯨のような
生き物に襲われたと証言した。

 すぐに、現場海域への船舶の航行が禁止さ
れ、巡視艇が警戒にあたったが、その巡視艇
が無線の緊急連絡を最後に、行方不明になっ
た。
 現場へ急行したヘリコプターが、海上に、
あの重油のようなモノが海に沈んでいく様子
を撮影して戻って来た。
 ことの重大さに海上自衛隊にも協力要請が
あり、空と海から警戒にあたった。
 
 京都の奥丹後半島の沖に、大島と小島があ
る。
 今度は、その2島が一夜にして消えた。

 さらに警戒態勢が強化され、日本に駐留す
るアメリカ軍も共同で防衛線をはった。
 日本海での船舶の航行が全面禁止になる異
常事態だった。

 日本政府は、謎の物体をマヌトと名づけ、
中国や韓国も参加する対策本部が設置された。

 マヌトの出現海域を自衛隊の潜水艦が探査
している時、固体化したマヌトを発見した。
 潜水艦は、岩のように動かないマヌトに魚
雷を発射した。
 魚雷は、マヌトに命中して爆発。しかし、
マヌトは、一部が飛散した後、元の姿に戻り、
ダメージがないようだった。
 マヌトは、移動を始め、固体から液体へ、
液体から固体へと変化し、あっという間に泳
ぎ去った。

 数日たち、マヌトが今度は、島根半島沖に
現れ、以前よりも大きくなって、液体化し、
海に漂った。

 自衛隊とアメリカ軍の艦隊が、マヌトを取
り巻くように接近し、機銃掃射や爆雷、ミサ
イル攻撃も試みたが効果がない。
 やがてマヌトは、ゆっくりと移動し始め、
隠岐に向かった。

 マヌトは、スピードを増し、隠岐諸島に接
近した。
 隠岐諸島の島民は、すぐに避難し、その直
後に、マヌトが津波のように島全体を飲み込
んだ。
 島は、マヌトに砕かれ、徐々に海に沈んで
いった。

 隠岐諸島をすべて海に沈めたマヌトは、さ
らに巨大化し、北上し始めた。
 液体化し、漂うように移動するマヌト。
 何の打つ手も見つからないまま、艦隊が追
尾する。

 マヌトに近づき過ぎた戦艦が、固体になっ
たマヌトに飴のように曲げられ、海に沈んだ。
 マヌトは、また液体化し、何事もなかった
かのように北上を続ける。
 向かう先には、能登半島、佐渡島があった。
 佐渡島では、島にある船をすべて使い、す
ぐに島民を避難させた。

 アメリカ軍は、細菌兵器やイラク戦争でも
使用された、核兵器以外では最強の威力があ
るデイジーカッターをマヌトに投下。しかし、
マヌトは飛散するもののすぐに合体した。
 アメリカ軍は、通常兵器では効果がないと
判断し、核兵器の使用を日本政府に通達した。

 核兵器使用の情報は、すぐに中国や韓国に
も知られ、両国が強く反対したため中止され
たが、核兵器以外に効果的な手段がなければ、
使用も認めざる終えない状況になっていた。

 巨大化しながら北上を続けるマヌト。

 あらゆる化学薬品の投下、音波やレーザー
光線を照射しても効果がなく、ドライアイス
やセメントで固めることも試されたが失敗に
終わった。
 すべての方法をやりつくしたと思われたそ
の時、まだ細菌で試されていない物があるこ
とに気づいた。
 細菌兵器はすでに使われて効果がなかった
が、食品に含まれる細菌は試されていない。
 核兵器の準備が進む中、1パーセントの可
能性に賭け、急いで、納豆、くさや、塩辛、
漬物、キムチ、ヨーグルトが大量に集められ
た。

 マヌトは佐渡島の目前まで迫っている。

 食品がヘリコプターに搭載され、次々に飛
び立ち、マヌトに投下された。
 するとマヌトから白い粘膜のようなものが
流れ始めた。そして、徐々に固体化して葉巻
のような姿でのた打ち回ったが、体を繭に包
まれたようになり、海から飛び跳ねたあげく、
動かなくなり、海に漂った。

 浮遊するマヌトの体を分析すると、ナマコ
の集合体だということが分かった。

 マヌトのいなくなった海に、巨大化したエ
チゼンクラゲの群れが不気味に漂っていた。
 
終わり