アベノミクス 一本目の矢の行方 | 中小企業診断士グループ“YTD”のブログ

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しんしんです。

今回はマクロな話をします。

アベノミクスの三本の矢のうち、一本目の矢、いわゆる「次元の異なる金融緩和」は失敗に終わりそうだ。東洋経済4/27-5/4合併号の野口悠紀雄教授の記事によると、今年の春闘結果の第1次集計によると賃上げ率は1.91%で昨年を下回り、前年比で0.03%下回った。第1次集計は大手企業35社によるものである。中小企業を含めればさらに厳しい結果となるだろう。安倍首相や甘利経済再生・TPP担当大臣による直々のコンビニ大手への賃上げ要請により一時漂った賃上げムードは限定的な結果となってしまった。

野口教授は、価格を株価や為替レートなどのストック価格と賃金や物価などのフロー価格の2種類に分けて論じている。前者は資産価格なので期待で動く。しかし、後者は期待では動かない。自分の身に置き換えてみれば分かる話で、「株価が上がりそうだ」と期待すれば、株を買うかもしれないが、一方で「景気が回復しそうだ」という期待感だけで賃上げをする経営者はいない。右肩上がりの経済成長を前提としない社会では、賃上げや物価は実際に景気が回復しなければ起こり得ないのである。

黒田総裁が一本目の矢として掲げた金融緩和の目的は、消費者物価つまりフロー価格の2%上昇である。野口教授は、2%目標の可能性として、円安による輸入物価の上昇と原油価格の高騰の2つのルートを挙げる。実際に2月は前年度比で消費者物価指数(総合指数)は0.7%の下落だったが、ガソリン価格は8.1%上昇した(※5月に入り、ガソリン価格は漸減傾向にある)。また今後、原油価格の上昇は電気料金の上昇を引き起こすだろう。

さらに野口教授は、物価上昇についても円安や原油価格の高騰による物価上昇では意味が無いと言う。賃金が上がらずに物価だけが上がっても、生活が苦しくなるだけだからだ。賃金は「フロー価格」なので、期待では上がらない。このことは今年の春闘でも証明された。

中小企業診断士の方であれば、経済学で学んだGDP= 個人消費+民間投資+政府支出+純輸出(輸出-輸入)の式を思い出してほしい。賃金が上がらないので、個人消費も同じように上がらない。消費が上がらなければGDPの伸びもない。民間投資についても、今年3月の工作機械受注は前年比21.6%減であり、今後設備投資が増える気配はない。むしろ企業は海外で投資を進めるだろう。純輸出については、日本はすでに貿易赤字国である。GDPを刺激する最後の頼みの綱は政府支出しかない。

金融緩和については今のところ諸外国の理解を得ているが、財政政策については、これ以上の財政赤字の拡大は財政収支バランスを大きく崩すため、国内外から大きな懸念が示されている。財務省も、これ以上の財政リスクを許容出来るはずもなく、二本目の矢となる財政支出にどこまで期待できるか懐疑的にならざるをえない。また、三本目の矢となる成長戦略については、自民党案の育児休暇に関する法案が良い例だが、懸念材料も多く先の見通しが立っていないのである。

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