【書評】将棋序盤完全ガイド 振り飛車編 上野裕和 マイナビブックス | 中小企業診断士グループ“YTD”のブログ

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しんしんです。
今日は趣味の将棋のお話をします。
IT環境の変化は様々な分野に及んでいることがわかります。

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初心者が将棋を始めるとまずは一手詰の詰将棋を勧められる。それから三手詰に進み、五手詰までこなせるようになると初心者から一段上のステップへ進むことになる。

初心者にとって何よりも大切なことは終盤である。相手の王様を詰まし方を知らなければ将棋に勝てないからである。

しかし、プロ棋士にとっては序盤の比重が高くなる。もちろん終盤はプロ棋士であろうと重要であるが、終盤術が極めて高度な水準にまで発展している今、序盤でリードを広げなければ勝てなくなっている。

本書は序盤の作戦がどのようにして発展してきたのかを上級者のみならず将棋の初心者にもわかりやすく説明している。また、将棋の発展が将棋そのものからのみならず、IT環境の変化に大きく触発されたことにも触れている。

将棋の序盤と言えば、かつては居飛車なら矢倉、振り飛車なら美濃囲い四間飛車のどちらかに限られていた。もちろん横歩取りや穴熊などの戦法は昔から存在していたが、正道とは見なされていなかったし、十分な研究もされていなかった。

昭和30年代は、まだ序盤戦術の重要性が広くは認識されていなかったものの、一部の棋士では序盤の研究に対する取り組みが始まっていた。ただし、コピー機のない時代なので、自分で書き写すしか棋譜を入手する方法はなかった。大山打倒に執念を燃やす山田道美は奨励会の会員にお小遣いをあげて棋譜を書き取らせることをしていたような時代だった。

昭和50年台になると、コピー機が登場する。中原・加藤・米長の3強を中心に将棋界は回っていた時代だった。コピー機の登場により情報の入手が容易になり研究会活動が活発になったのもこの頃である。しかし、局面がある程度限定される中終盤の研究は進んだものの、研究成果が流通するようになるまでには至らなかった。

平成に入り、IT環境が大きく整備された。年間約2000局の全寄付がデータベース化されるようになった。データベース化されることで、局面検索が可能となった。局面検索とはある局面を指定すれば同一局面のある対局が一覧で表示されることである。
この局面検索により序盤の局面の比較検討が可能となり、序盤研究が飛躍的に進んだ。

序盤戦術の幅は広い。かつては紙の棋譜を並べても、比較検討できる対象は非常に限られてしまうため、研究らしい研究ができなかった。しかし、PCが普及するにつれ、全ての棋士がデータベースで局面検索をし、局面同士の比較検討が容易にできるようになった。また、莫大な情報を処理するのは一人では限界があるため、複数の棋士があつまり共同研究が行われるようになったのである。

古くからの将棋ファンから見れば今の高度化された将棋にはついていけないところもある。携帯電話からリアルタイムに棋譜を入手できる今はアマチュア同士でも研究が行われ、プロとアマの差も縮まるようになってきた。

しかし、informationはただinformationであるに過ぎないのは今も昔も同じことである。それをどのようにintelligenceに昇華されるかがプロ棋士の腕の見せ所になる。この本を通じて将棋の研究の歴史を知ることで我々「観る」ファンも将棋を楽しむ幅が広げることができるようになる。次に発刊されるであろう居飛車編が今から楽しみである。

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