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++  エピソード日本史 ~日本史の女性(土曜ダイジェスト版)~
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.036━2007.02.10━…‥*



 ◆◇ 藤原宮子 《フジワラ(の)ミヤコ》…

 文武天皇の后。父は贈太政大臣の藤原不比等。
 697年に夫人となり、のちに首皇子を生む。
 息子の即位にあたって、大夫人と称されたというが…。



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■ 天皇を生んだ名家の凡女、藤原宮子
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奈良時代初期、一時代を築いたのは間違いなく藤原不比等でしょう。
持統天皇と橘三千代という二人の偉大な力を持った女性を味方につけ、
権力の頂点に君臨し続けました。

彼の蒔いた種が、後の時代を大きく動かして行きます。

藤原宮子もその一人です。
宮子は不比等と賀茂比売の子にであり、
三千代の子・安宿媛とは異母姉妹になります。

 《*賀茂比売:カモ・ヒメ》

その宮子が、持統天皇の孫で珂瑠皇子(文武天皇)に
嫁いだのは697年のことでした。

朝廷内で持統天皇などの信任を得ていたとはいえ、
父・不比等の位が実際には低かった時の話です。

この頃、三千代という生涯のパートナーを手に入れた不比等は、
精神的基盤だけでなく、政治的基盤も手に入れ、
後は、天皇の権力を手中に収めるだけとなっていました。

そこで、丁度皇太子となっていた珂瑠皇子の后探しが始まっていて、
年齢的に都合の良かった宮子が后として選ばれます。
そして、珂瑠皇子の后となり、後に天皇となる首皇子を産むのです。

後に超一流貴族となる藤原一族にとって、
宮子の出産は一大イベントだったのです。

この宮子が生んだ天皇の権力を利用して、
藤原氏が政治を握るという政治体制。
後に藤原氏の常套手段となります。

ですが、この政治家集団の藤原氏にあって、
宮子はあまりにも普通の女の子だったように思えます。

なんとしても男子を産めと、
まるで呪いのような怨念に耐え切れなかったようです。


なんとか無事首皇子を出産しますが、
その後現在で言ううつ病のような状態になってしまったそうです。

それから何十年とうつの状態を続け、後に回復するようですが、
宮子にとって政治的政略結婚や政治責任を背負った出産に
適応できる能力は備わっていなかったようです。

もし仮に、不比等のような偉大な政治家の娘でなければ、
案外幸せな人生を送ったのかも知れません。

しかし、彼女が歩いた天皇の母という位置づけは、
この後藤原一族の女性のモデルとなり続けるのは事実です。



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さて今週は、この藤原宮子の生きた時代を描きました。
戦乱がなくなり、次の時代を担うのは誰かという政略が交錯し始めました。


先週の戦乱を勝者とも言える天武天皇の后でもあり、
自分の子孫を天皇にする為、命を張った女帝・持統。
その持統の助け、その後千年続く基盤を実現させた藤原不比等。
不比等の才能に惚れ込み、絶大な力を発揮した女傑・橘三千代。
その三千代や藤原氏に迫ったけれど、届かなかった長屋王。
そして長屋王の死と共に実現した人臣初の皇后・光明子。
今週は時代は徐々に藤原氏へと移っていく時代を繋ぎました。


【~新時代を生んだ母帝、持統~ vol.031】
http://ameblo.jp/yatarou/entry-10025466226.html

【~千年の夢を叶えた男、藤原不比等~ vol.032】
http://ameblo.jp/yatarou/entry-10025526348.html

【~時代の母となった裏宰相、橘三千代~ vol.033】
http://ameblo.jp/yatarou/entry-10025540487.html

【~意外にオシャレ?怨霊・長屋王~ vol.034】
http://ameblo.jp/yatarou/entry-10025656337.html

【~人臣初の皇后、聖女・光明子~ vol.35】
http://ameblo.jp/yatarou/entry-10025739806.html


さて来週は、日本が世界に誇る奈良の大仏が作られます。
時代は奈良時代中期。不比等が描いた夢の一歩が実現します。
その過程で生まれる大仏。多くの人々の思惑が交錯する時代へと移ります。



┏━◇ 来週の予告 ◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

 大仏建立物語

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━━[編集後記]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
本来は先週の土曜版として書く予定だったものですが、
予定がうまくいかず、ずれ込んでしまいました。
また週末に調整して、少し本来の日程に戻すようにしていきますので、
それまで、ご了承ください。
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