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++  エピソード日本史 ~人物で繋ぐ日本の歴史~ 
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.035━2007.02.09━…‥*



 ◆◇ 藤原光明子 《フジワラ(の)コウミョウシ》…

 藤原不比等・橘三千代の間の子で、名を安宿媛という。
 本来皇族しかなれない皇后に人臣で初めてたつ。
 皇后となった後、仏教を重んじ、多くの善政を行ったとされるが…

 《*安宿媛:アスカベ・ヒメ》


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■ 人臣初の皇后、聖女・光明子
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一時代を築き、最高権力者として君臨し続けた藤原不比等。
その不比等亡き後、政治の中枢には皇族の長屋王が権力を振るっていました。
この長屋王の発言力は強く、藤原氏の思い通りにはなりませんでした。

不比等の遺児・藤原四兄弟は、次世代を担う人物たちですが、
彼らはまだ若く、政治の頂点に立っている長屋王を抑える事は出来ません。

一方で不比等の妻で、裏権力を誇っていた三千代でも、
表立って活躍している長屋王に対して、絶対的な力はありません。


藤原四氏の妹であり、三千代の娘である安宿媛は時代を
決定付けるタイミングで生まれたと言っていいかも知れません。


不比等は安宿媛の姉に当たる娘を文武天皇に嫁がせます。
そして、その間に子供が宿った年に、不比等と三千代の間にも子供が宿ります。

文武天皇の子は男子でした。名を首皇子。
そして不比等・三千代の子が女子で安宿媛。

 《*首皇子:オビト皇子》

二人は同い年で、16歳の時に結婚し、首皇子の后となります。
この時は、首皇子が幼いという理由でまだ即位はしていませんでした。


それから、724年にようやく首皇子が即位し天皇となります。
それに伴って安宿媛も皇后に…、とは行きませんでした。

この頃の皇后は緊急事態には天皇として即位できる位置づけでもあった為、
皇族からしかなれないように律令で決まっていました。
持統天皇などが良い例です。

その事を皇族の長屋王はたびたび追及していたようです。

しかし藤原四氏にとっては妹が皇后になれば、
兄弟という立場で政治を左右する事が出来るようになります。

そして、母である三千代にしても、
娘が皇后になる事は不比等の夢でもあり、実現を目指していました。


であれば、反対派の長屋王さえいなければ…。


長屋王は728年に謀反の嫌疑をかけられ、自刃しました。
そして翌年729年、安宿媛は人臣として初めて皇后になりました。
そして俗に言う光明皇后、つまり藤原光明子の誕生です。

光明子は皇后になると、民衆に目を向けた善政を行ったといいます。

例えば、孤児や病人を収容する為の施設を設けたり、
一人でも多くの人に慈悲を向ける為、社会救済事業も行いました。

しかし、自分を後押ししてくれた四兄弟は天然痘で死んでしまいました。
そして精神的支えでもあった母・三千代も他界してしまいます。

そして夫である天皇も病気がちになり、
全てが不安定な状態になってしまいます。

光明子はこれらの不安を仏教信仰に向け、救いを求めるようになります。
そしてこの信仰が奈良にある大仏建立への影響へとつながっていくのです。



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大仏建立は天皇の発願だと言われていますが、
この建立には妻である光明子の影響は少なからずあった事でしょう。

そして、この大仏建立を政治的に利用し、
権力を手に入れようと進めていった人物がおります。

彼は、突如死んでしまった藤原四氏の代わりに、藤原氏の復権に力を注ぎます。

若くして頭角を表し、叔母であり皇后でもある光明子の後ろ盾を得て、
政界に飛ぶ鳥を落とす勢いで登場します。
彼の名は藤原仲麻呂。あの不世出の政治家・藤原不比等の孫にあたります。



┏━◇  次回の予告  ◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

 唐かぶれした大臣、藤原仲麻呂

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━━[編集後記]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
光明子は輝くばかりに美しいという意味で名づけられたという話がありますが、
実際に美人だったかどうかは疑問が残るようです。
また、光明子の慈善活動も作り話である可能性が高いとも言われています。
人臣初の皇后は美しく慈悲深い人間だった為、
皇后になるのは当然なのだという藤原一族の
CM活動だったと考えられているようです。
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