マダム・フローレンス! 夢見るふたり 2016年 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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日々接した情報の保管場所として・・・・基本ネタバレです(陳謝)

監督 スティーブン・フリアーズ

 

キャスト
メリル・ストリープ      フローレンス・フォスター・ジェンキンス
ヒュー・グラント       シンクレア・ベイフィールド
サイモン・ヘルバーグ   コズメ・マクムーン
レベッカ・ファーガソン   キャサリン
ニナ・アリアンダ       アグネス・スターク

 

 

親の遺産を相続し、暮らしには困らないフローレンスは、自分が設立した「フォスター・クラブ」の中で行われる出し物に出演する事が楽しみだった。その劇の進行役を務める夫のシンクレア。
リサイタルを終え、帰宅したフローレンスは、シンクレアに詩集を読んでもらう事で眠りに就く。彼女の頭からかつらを外し、ナイトキャップをかぶせるシンクレア。

 

フローレンスは、次からは自分が唄う事を思い立ち、シンクレアに頼んでピアニストを捜してもらう。
だがあまり勢いのある者には拒絶反応を起こした。ある面接で、穏やかな曲調を選んで弾く者と意気投合したフローレンスは、このコズメと契約するようシンクレアに指示。
シンクレアが、フローレンスの音痴ぶりを本人が気付かないよう取り繕っているのをおかしがるコズメだが、食って行くために契約し、適当に合わせてレッスンを始める。

 

フローレンスに懇願され、リサイタルの準備を着々と進めるシンクレア。観客はクラブメンバーで固め、報道関係にも金を掴ませて悪評が立たないよう配慮。

開かれたリサイタルでは、ひどい出来のフローレンス。資産家のスターク氏の新しい妻アグネスは、それを聞いて腹を抱える。その彼女を会場からつまみ出すシンクレア。
リサイタルで疲れ、体調が悪くなったフローレンスの許に、往診に来た医師。かかりつけ医から聞いていた話は、最初の結婚で夫から梅毒をうつされ、以後50年。夫とはすぐ離婚したが、その治療の副作用に延々と苦しんでいた。

シンクレアは自分のアパートに愛人のキャサリンを引き入れていた。リサイタル打ち上げの翌日、シンクレアを訪ねるフローレンス。あわててキャサリンを隠して事なきを得る。「愛情にはいろんな形がある」と言うシンクレアだが、そんな彼を軽蔑するコズメ。

 

キャサリンの機嫌を取るため、1週間のゴルフ旅行に出掛けるシンクレア。その間にフローレンスは自分の曲のレコードを作って、それを多数、復員兵の団体に寄付していた。
コズメのアパートを訪れたフローレンスは、問わず語りにシンクレアとのいきさつを話す。25年前に彼女の方が一目惚れして、それ以来の関係。

 

ゴルフ旅行から帰ったシンクレアは、フローレンスのレコードが悪い意味で世間の話題になっている事を知る。
その上、フローレンスはカーネギーホールを訪れ、ここでリサイタルを開きたいと彼に頼んだ。
最初は話を避けていたが、彼女の意思が固い事を知り、その実現に奔走するシンクレア。

 

リサイタル当日、復員兵の多数参加もあり、会場は満員の状態。フローレンスを笑ったスターク夫人のアグネスも来ている。
シンクレアが報道関係者を買収している事を不快に思っていたニューヨーク・ポストの記者も反対を押し切って会場へ。
リサイタルが始まってフローレンスが唄い始めると、その音痴ぶりに嘲笑と罵倒が渦巻いた。今までシンクレアの対策のおかげで、そんな場面を味わった事がなかったフローレンスは立ちすくむ。
その時アグネスが、大きな声で嘲笑している者たちを制した。そして拍手を始める。それにつられて次第に広がる拍手の輪。
フローレンスはそれで何とか落ち着いて、音痴ながらも無事にそのリサイタルは成功を収める。

 

リサイタルの後、各紙はその内容を好意的に書いたが、ニューヨーク・ポスト紙だけは辛辣な評を掲載。
シンクレアは町の売店からニューヨーク・ポストを買い占め、ゴミ箱に捨てた。
友人たちとのお茶会で新聞の評価を読むフローレンス。シンクレアにニューヨーク・ポストを持って来てと頼むが、話をはぐらかすシンクレア。
その店にニューヨーク・ポスト紙を持って来た男性。それを買い占めようとするコズメとシンクレア。そこで揉めているうちにフローレンスが居なくなった。
外へ出て売店でニューヨーク・ポストを買おうとすると、店主は男が買い占めてゴミ箱に捨てたと言った。彼女はそのゴミ箱から同紙を取り出し、読んでしまう。

ショックでその場に倒れてしまうフローレンスを見つけ、抱き抱えるシンクレア。

 

ベッドで目覚めたフローレンスは、今まで全てをシンクレアが隠して尽くしてくれた事を知る。そして「ひどい悪声だと言われても、唄った事実は誰にも否定出来ない」とほほ笑む。

 

感想
実話をもとに作られた映画。最初は観るところまで思っていなかったが、自宅の隣で家の解体工事があり、騒音避難の意味で映画館へ・・・・
だが思いのほか、いい映画だった。

 

金持ちの余興でリサイタルを開く女性と、それをサポートする夫。普通なら鼻もちならない印象になるが、嫌味にならないところがこの二人の優れた資質によるものか。
フローレンスの天真爛漫さが何といっても秀逸。眠りについたフローレンスのかつらを外すシーンにはホントびっくり。

しかしこの映画が成立した一番の要因は、コズメ役をやったサイモン・ヘルバーグ。実際にピアノを弾き、その最中の演技も全く違和感ない。10歳の頃からピアノを弾いており、メリル・ストリープも彼を絶賛。

 

大きな括りで言えば、コミカルな作品なのだが、クライマックスでは自然に涙が流れてしまった。特に涙腺が弱くなったとは思っていないが、やはりドラマの持って行きかたが優れているのだろう。