そして父になる 2013年 2/7 TV放送 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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日々接した情報の保管場所として・・・・基本ネタバレです(陳謝)

監督:是枝裕和

キャスト
野々宮良多      :福山雅治
野々宮みどり(良多の妻)  :尾野真千子
斎木ゆかり         :真木よう子
斎木雄大(ゆかりの夫)   :リリー・フランキー
野々宮慶多(良多の息子)  :二宮慶多
斎木琉晴(雄大の長男)   :黄升炫
宮崎祥子(元看護士)    :中村ゆり
野々宮大輔(良多の兄)   :高橋和也
鈴本悟(弁護士、良多の友人):田中哲司
山辺真一          :井浦新
宮崎祥子の夫        :ピエール瀧
病院の職員         :小倉一郎
良多が勤務する会社の社員  :吉田羊
織間忠治          :大河内浩
野々宮のぶ子(良多の義母) :風吹ジュン
上山一至(良多の上司)   :國村隼
石関里子(みどりの母)   :樹木希林
野々宮良輔(良多の父)   :夏八木勲
斎木美結(雄大の長女)   :滝沢美結
斎木大和(雄大の二男)   :押場大和

 

予告編

https://www.youtube.com/watch?v=sRGhEzALb4w


 

あらすじ
野々宮良多・みどり夫妻の長男慶多、6歳。幼稚園の受験での受け答え。慶多は夏休みの思い出に、行ってもいないキャンプの話をする。後で良多が聞くと、予備校で教えられたという。
大手建設会社で物件開発のチーフ的存在の良多は多忙で、休みに子供と遊んでやる暇もない。そんな暮らしにいつの間にか慣れてしまったみどり。

ある日みどりが、慶多を産んだ病院から大切な相談があるとの話を良多に伝える。

病院職員から子供の取り違えを伝えられて茫然とする良多とみどり。
どうして気が付かなかったのかとみどりに言う良多。みどりは出産後の体調不良で数日間苦しんだ経緯があった。

 

もう一方の取り違えを受けた斎木雄大・ゆかり夫婦との対面。くだけた雰囲気、また慰謝料の額を気にする雄大に馴染めない良多。
良多は斎木夫妻の了解を得て、友人の鈴元に弁護士を依頼した。
その後の遺伝子検査からも取り違えが確認され、過去の例から子供は元の家族に戻す方向で考えることに。だが短期間で進めるには無理がある。

 

家族同士でまず、ファーストフード店での面会。斎木家は琉晴の下に弟、妹がおり、慶多とすぐに友達になった。家長としては頼りないものの、子供との触れ合いがバツグンにうまい雄大。
良多はそこで唐突に、二人一緒に引き取りたいと斎木夫妻に申し出る。反発を深める相手。
みどりはこの話が持ち上がった当初良多が「やっぱりそうだったんだ」という「やっぱり」の言葉にこだわっていた。

 

その後週末1泊での子供交換。理由が判らない慶多に良多は「これは慶多が強くなるためのミッションだ」と説明した。

 

斎木の家は小さな電器店を経営。貧しいが父親と子供のコミュニケーションは豊かであり、雄大は壊れたラジコンカーも修理してしまう。風呂も一緒に入る。
野々宮家。良多は仕事の都合で日曜も居ない。みどりと二人だけで所在ない琉晴。
次の泊りの時、慶多は家の壊れたロボットを、雄大に修理してもらうために持って行く。

 

何度目かの泊りの後、例のファーストフード店での集まり。子供たちと屈託なく遊ぶ雄大。雄大は琉晴の事を心配して良多に「もう私は、君が今まで接した以上に慶多と接している」と言った。反発する良多。

裁判の過程で、この取り違え事件の真相が事故ではなく、担当看護士の故意だった事が判明、当時彼女の境遇が厳しく、野々村夫妻の何不自由ない暮らしを壊してやろうと思ってやった事だった。時効が成立して罪に問うことは出来ない。

 

半年ほど週末宿泊を行った後、子供はそれぞれの家庭に引き取られた。斎木家ではうまく回っていたが、野々宮家では、良多の作った約束事のリストを読み上げる琉晴。風呂には1人で入るとかのこまごました内容。
良多たちをパパ、ママと呼ぶ、というところで「何で?」と聞く琉晴。「何ででも、だ」と答える良多。だが「何で?」を繰り返す琉晴を前に途方に暮れる良多。
電子ピアノをメチャクチャに弾いている琉晴に向かって「うるさい!」とどなる良多。ふてくされてその場を逃げる琉晴。

 

ある日流晴が、みどりの寝ているスキに家を出て斎木の家に行ってしまった。暖かく迎え入れる雄大。
良多が引き取りに行って怒りを露わにするが、それにはゆかりが反発し「こっちで二人引き取ってもいいんですよ」と逆襲。
その事があってから次第に意識を変え始める良多。

 

琉晴がみどりに向かってオモチャの銃を向ける。掃除機の吸い込みホースを構えて応戦するみどり。琉晴がそっと良多の部屋を開けた時、そこにギターを銃の様に構えた良多が居た。撃ち合いゴッコをして笑いあう3人。

テントを買って家の中で組み立て、その中でプラネタリウムを点けて星座あてをする3人。
「何がしたい?」と良多が聞くと琉晴は「パパとママに会いたい、ごめんなさい」と言ってふとんをかぶった。
最近の琉晴を撮ったカメラの画像を見返していた良多。それ以前の画像を順に見て行くと、そこには慶多が撮ったものが。更に遡ると良多が寝ているところも慶多は撮っていた。慶多の心を思い涙を流す良多。

 

野々宮夫妻が琉晴を連れて斎木家を訪れた。久しぶりの再会に喜ぶ琉晴と雄大。だが慶多は良多の姿を見ると家を飛び出した。
付かず離れずで慶多を追う良多。
写真を撮ってくれて有難う、パパは出来損ないだったけど6年間は君のパパだったんだ、と言い、街路樹を挟んでなおも追う。
街路樹の切れたところで「ミッションは終わりだ」と言って慶多を抱きしめる良多。

夕方になり、二人を探しているみんなの所へ戻る良多と慶多。

 

感想
カンヌ映画祭で賞もらったし、劇場で観ようかな、とも思ったが見送り、今回のTV放映でチェック。
取り違えが判って話が進んで行く様子があまりにも淡々としていて、意識して構成しているのだなーと実感。
子供にとって親が変わるというのは、まるっきり世界が変わる話であり、子供の側に立って見ると本当につらい。

琉晴を前にして途方に暮れる良多。自分が父親からされて来なかったから、子育てに関するリファレンスがない。生まれた時から付き合って来た慶多だから問題に気付かなかったが、突然現れた琉晴には何も通用しない。これは、今までの自分の人生を振り返ると胸に刺さる部分がある。

 

慶多が撮った写真の画像を見ながら目を潤ませ、溜まりきった涙が一気に流れるシーンには正直やられた。血が繋がっていなかったという親の落胆とは無関係に親を慕ってカメラに収めた慶多の心。ここで初めて親の心になった良多。

 

結局親は何を選択したのか?
良多が慶多に「ミッションは終わりだ」と言ったのは、慶太との暮らしに戻るという宣言だったのか。
最後に良多と慶多が斎木の家へ戻る所では、慶多が弟、妹と絡むシーンもあり、斎木家から離れるイメージはない。
良多の側だけから見たら元サヤはアリだが、斎木家にとっては慶多との家族関係が出来てしまっているので、それは難しい。
ベターな策というのは、本来の親との暮らしの中で両家が交流を続けて行くという事。

 

「そして父になる」というタイトル。本当によく付けたものだと思う。