あなたへ  2012年 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

日々接した情報の保管場所として・・・・基本ネタバレです(陳謝)

監督 - 降旗康男

キャスト
倉島英二 - 高倉健
倉島洋子 - 田中裕子
南原慎一 - 佐藤浩市
田宮裕司 - 草彅剛(SMAP)
濱崎多恵子 - 余貴美子
濱崎奈緒子 - 綾瀬はるか
大浦吾郎 - 大滝秀治
大浦拓也 - 三浦貴大
塚本和夫 - 長塚京三
塚本久美子 - 原田美枝子
杉野輝夫 - ビートたけし
警官 - 浅野忠信
お好み焼き屋の客 - 岡村隆史

 

予告編
http://www.youtube.com/watch?v=E01zk1S3EhY


 

あらすじ
富山刑務所で指導教官を務める倉島英二。最近妻、洋子を亡くした。そこへNGO法人の女性が封筒を2通持って英二を訪れる。1通は手渡されたが、もう1通は長崎 薄香郵便局まで行って受取る様依頼されているという。受け取り期限は10日後まで。初めの手紙には「私の骨は、故郷の海へ撒いてください」とあった。

 

洋子は悪性リンパ腫だった。洋子の闘病中に、英二はバンを改造してキャンピングカーに仕立てる準備をしていたが、それで一緒に旅行する夢は断たれた。英二はその車に乗って長崎までの旅を進める。
途中で語られる洋子との関係。洋子は刑務所の慰問で歌を歌いに来ていたが、それは服役している男のためのものだった。その男が獄中死してからしばらく慰問がなかったが、その後洋子が訪れた際、英二が声を掛ける。

 

道の駅、ガソリンスタンドで顔を合わせた男。元国語教師と言い、妻をなくしてから、全国を旅しているという。旅と放浪との違いについて語る。その後オートキャンプ場で隣同士一泊したが、翌日男の車はなく、英二の車に山頭火の詩集がぶら下げてあった。

 

大阪に向かう途中の駐車場で、エンジン始動のコードを貸してくれと頼んで来た男、田宮。北海道のイカ飯を全国の物産展で販売しているという。車は動かず、倉島は荷物と共に田宮を大阪の会場まで送る。
相方が来ないのをいいことに、田宮は仕事の手伝いも頼むが、気持ち良く受ける英二。遅れてやって来た南原。田宮より歳は上だが、会社での経験は浅い。販売の打上げを3人で行った。

 

翌日、門司の手前で再びキャンピングカーの男、杉野が声を掛けて来た。だが、その直後パトカーが来て彼を連行して行った。英二も参考人として警察へ。杉野は車上荒らしとして手配されていた。
疑いが晴れた後、田宮たちの物産展に顔を出した英二。田宮が、会社の関係のビジネスホテルを紹介し、その夜も3人で打上げ。田宮が悪酔いして、自分の妻が浮気をしていると漏らした。
英二も二人に、妻をなくし、遺言だった散骨をしに行く途中だと話す。
酔った田宮を部屋まで運んだ後、南原が英二の部屋を訪れる。もし船の手配で困ることがあったら、ここに頼めば力になってくれる、とメモを渡す。

 

長崎、平戸に着いて、薄香郵便局で封筒を受け取る。中の葉書には「ありがとう」とだけ書かれていた。その足で漁協に相談するが、組合としては散骨には同意出来ないと断られる。台風も近づいており、英二はとりあえず食堂に入る。

 

濱崎食堂の娘、奈緒子は漁協で英二の話を聞いていた。南原からもらったメモを出す英二。それを見て驚く母親の多恵子。奈緒子に場所を教えてもらって、漁師の大浦に頼みに行くが、一蹴される。孫の拓也は奈緒子と結婚の約束をしていた。

 

食堂に戻り、車の中で寝ようとするが、嵐がひどくなり、奈緒子が母親に言われ、家で寝る様にと英二に告げた。
二階へというのを固辞して店の一角で寝ようとする英二に、多恵子が酒を持ってつきあってくれと言う。多恵子の夫は漁師以外に多額の借金を作ったあげく、海で遭難し、行方不明になった。海難事故の場合、3ケ月で戻らない場合は死亡が認定されるため。夫も生命保険金で借金を返し、この店も持つことが出来た。

 

翌日、英二は町を散策するうちに、廃屋となった写真館の前に来る。そこのショウウインドウの中に、子供の頃の洋子の姿を見つける。
振り返ると、洋子の葉書に描かれた灯台の風景が広がっていた。その海へ2枚の葉書を飛ばす英二。
散骨への強い意志を持って大浦老人を再び訪れる英二。大浦はそれを承諾した。

波の収まった翌日、大浦老人と拓也の操る漁船に乗り込む英二。多恵子が、奈緒子と拓也のウエディング姿を撮った写真を「海に流して欲しい」と英二に託した。
沖に出ての散骨。そして献花。だが多恵子に頼まれた写真は流さなかった。

 

門司に戻った時、物産展はまだ行われていた。英二は働いていた南原をケータイでそっと呼び出す。南原に散骨を済ませた事を話した後、多恵子から預かった写真を渡す。
真相を話し始める南原。彼は多恵子の夫だった。海で遭難した時、もしこのまま帰らなかったら、と思い詰めて過去を消したのだった。
刑務所では、外部の者へ情報を流す事を「鳩を飛ばす」と言う。英二は「自分は”鳩”になりました」と言って、そのまま南原の元を去った。

 

 

感想
高倉健の遺作、と構えて観たわけではない。というより淡々と過ぎ行くドラマの中で、とても「これが最後」と思えなかったのが一番の印象。
先に逝ってしまった妻が残した遺言。墓を作ろうと思っていたところへ「散骨して欲しい」という言葉に戸惑う。

 

旅の途中で出会う人たちとの関わり。山頭火を語る男が実は車上荒らしの常習者。ビートたけしがいい味を出している。盗みをやろうとして近づいたのか、純粋に同じ境遇の者としての共感だったのか。語りすぎず、あっけらかんと去って行くのが、たけしならではのあと味。

 

草彅とのエピソードも良かった。困っていたのは確かだが、最初から英二に運んでもらう事まで計算して声をかけた。快く対応を繰り返す英二の姿を見て、本来の素直な面を出し始める。

しかし、話を仕込むにしても、南原が実は多恵子の夫だった、ってのはさすがに無理がある。「私は鳩になりました」の感動を引き出すためには必要だし、微妙なところだが。このエピソードは本当に必要だったのか?
もっと夫婦の話に特化しても良かったと思う。


洋子役の田中裕子の声のすばらしさ。彼女の歌は今まで特に印象なかったが、実にイイ。「星めぐりの歌」宮沢賢治の作詞作曲。
http://www.youtube.com/watch?v=fX2_SF5gLJA

それにしても、劇中で洋子の死因だった悪性リンパ腫で健さんも亡くなってしまうとは。

気をつけて回避出来るものでもないが、初期症状を把握して早めに対応する事はできる。
http://www.keio-hematology.jp/patient/explanation/ml.html